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海外トピックス

2018年7月号

金融イノベーション研究部契約研究員 荒木充衛

・米国投信動向-金利引き上げ局面の中で債券投資が回復
・好ましい分散投資が支える米投信の拡大

米国投信動向-金利引き上げ局面の中で債券投資が回復

 米国金融危機以降、過去10年間の債券ファンドへの投資動向を振り返ると、再投資分を含め2.2兆ドルの資金が流入している。この期間の中で、とくに大きな資金が流入したのは金利の低下やクレジットスプレッドの縮小が続いた2009-12年であった。その後テーパー・タントラムで金利が上昇した2013年から低金利が続いた15年までは売り越しとなっている。米国投資信託協会(ICI)は債券ミューチュアルファンドへの投資家の資金フローがトータルリターンとの連動性が高いことを長年指摘している(株式ファンドも同様の動きがみられる)が、2009~15年の動向もこの指摘に沿ったものと言える。

 ところが、その後2016年から久々の金利引き上げ局面入りとなり、金利が徐々に上昇して高いリターンが望めない状況下で、債券ファンド、債券ETFへの資金インフローが回復し始め、2017年には大きめの資金が流入したことは注目される。この先も金利引き上げが見込まれる中でのこうした動きは、短期的なキャピタルゲイン狙いとは異なるものである。

 この背景として、過去証券投資を牽引してきたベビーブーマー層がリタイア期に入り、株式から債券への資産の再配分を継続しているという人口動態上の要因が指摘されている。ターゲットデートファンド(次ページ参照)において、ターゲットデート(退職時期)の接近に対応し、同ファンドが自動的に債券にシフトするのと同様の動きである。加えてこれまで低金利が長く続いてきたため満たされなかった他の投資家のインカム需要も金利の上昇により出始めているのだろう。

 米国の金融危機以降、銀行等の金融機関に対する規制の見直しが行われてきたが、大きな資産を抱える資産運用会社のリスクについても懸念する声が上がっている。金融市場の危機時にミューチュアルファンドからも売りが殺到し危機を増幅するのではないか、などの懸念である。運用会社は、過去にミューチュアルファンドによるそうした株式市場での動きは見られなかったことを主張している。今回、超低金利環境からの出口にあっても、債券市場では落ち着いた動きがみられること、むしろ金利上昇を好感する長期的な視点でのインカム投資が回復していることは、業界の主張を裏付けるものになるだろう。

好ましい分散投資が支える米投信の拡大

 世界のオープンエンドファンド(以下ファンドをFと表記)資産(ETF含む)は、2008-2017年の10年間にどの地域でも2倍以上に拡大し49.3兆ドルに達した。その中でも米投信の堅調ぶりが目立つ。2017年末のミューチュアルF資産は18.7兆ドル、ETFも3.4兆ドルと日本の家計資産を凌ぐ規模に成長しており、日米の金融力の格差が目立つ。この成長の大きな要因として、株式市場の暴落を契機として運用資産や投資手法の分散化が進み、リスクの軽減に努めてきたことが挙げられる。

 まずITバブルの破裂時である。従来米国のミューチュアルFでは投資対象の多くが国内物で、アクティブ運用による投資が中心であった。たとえば株式投信・ETFは米国株で占められ、海外株は14%程度と少なかった。しかし米IT株を中心とする株価下落の打撃への反省やドル安への期待から、2004年頃から海外株への分散投資が始まり、2006年以降海外株式比率は24%-29%と倍増した。現在この辺りの水準が好ましい海外株比率と意識されているようだ。海外株投資はグローバルに投資するファンドが多く、単一国のカントリーリスクは抑えられている。

 次のより大きな転換点が金融危機である。危機以降、リスク管理の観点からさまざまな投資商品や運用手法が増加したが、大きいのがインデックスF、ETF、ハイブリッドF、オルタナティブF等への投資の広がりである。インデックスFとETF合計のシェアは金融危機前には15%だったが、資産配分を重視するフィーベースのフィナンシャルアドバイザーによる活用などが牽引し2017年には35%になった。インデックス運用はさらに、時価総額加重以外の商品に拡大している。

 分散投資をめざすバランス型(ハイブリッド)Fとしては、ターゲットデートFの増加が注目される(FoFsで組成されるためICIではバランス型のカテゴリにはカウントされていない)。確定拠出年金のデフォルトFとなっていることから人気が高く資金流入が続いており、今や1.1兆ドルと日本の公募投信資産を凌ぐ規模である(ライフスタイルFも4000億ドルある)。ターゲットデートFは、資産形成期にはリスク資産に積極的に分散投資をする。そして定期的に資産の自動リバランスをするため、米国株が堅調なときに米国株を売り外国株を購入するなどの逆張り投資が目立っており、上記の分散投資の拡大に貢献している。

 (参考:ICI Fact book)

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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導入事例

荒木充衛Jyuuei Araki

金融イノベーション研究部契約研究員

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