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変革期を迎える中国の資産運用業界

2018年7月号

NRI北京 金融システム研究部長 神宮健

中国人民銀行等により正式に発表・実施された「金融機関の資産管理業務の規範化に関する指導意見」は、シャドーバンキングのリスクを低減すると同時に、中国の資産運用業務の正常化を促すものである。中国の資産運用業界は大きな変革期を迎えた。

元本収益保証禁止の影響

 4月27日、中国人民銀行、銀行保険監督管理委員会(銀保監会)、証券監督管理委員会、外為管理局は連名で「金融機関の資産管理業務の規範化に関する指導意見」(以下、指導意見)を発表した(即日実施)。

 中国の資産管理業務は、2010年前後からシャドーバンキングによって、換言すれば規制回避のための「金融革新」によって、リスクを内包しながら急拡大してきた。規制アービトラージのための複雑な資産運用商品やその組み合わせによる迂回融資がなされる中で、レバレッジ率の引上げやドンブリ勘定等によるリスクが生じる一方、本来リスクが高いはずの高リターンの商品が暗黙の元本収益保証を前提に、リスク許容度の低い個人投資家にまで販売されてきた。

 31条からなる指導意見は、規制アービトラージを防ぐために従来の業態別規制から商品・サービスの機能に基づく規制にシフトし、また、様々な措置を通じて各種の金融リスクやモラルハザードの問題の抜本的な解決を図るものである(図表1)。なお、指導意見の基本的な考え方や大枠は草稿(昨年11月発表)とほぼ同じである(※1)。ここでは資産運用業への影響を中心に見ることにする。

 指導意見を受けて、中国の資産運用業は、正常化に向けて変革を迫られている。第一は、資産管理商品(理財商品)の元本収益保証禁止と投資家責任の徹底である。特に20兆元余りに上る銀行の資産管理商品(理財商品)への影響は避けられない(図表2)。今後、各資産管理商品の純資産価値は、公募証券投資ファンド等と同様に原則市場価格に基づいて評価されることになり(※2)、これが元本・収益保証の有無の基準にもなる。これまでは、銀行の資産管理商品の運用益のうち、顧客に提示した予想収益を上回る部分が銀行の利益となったが、今後、収益は投資家に帰属し、銀行は手数料等を得るモデルになる。資産運用商品の資金をプールし、商品間で利益操作を行うことも、商品の分別管理と合わせ、難しくなろう。足元では純資産管理がなされている銀行の資産管理商品は全体の1割程度しかないと見られている。

 なお、デフォルトについては、中国でも徐々に身近なものになってきている。2014年まで例のなかった社債のデフォルトは、今年は既に19件(報道ベース)生じており(※3)、常態化しつつある。また、一部の信託商品でも支払いが遅れるケースが出ている。

 今後、個人の投資家にとっては、銀行の資産運用商品が元本割れになる可能性があるため、銀行理財商品がゼロリスク・ハイリターンの時代が終わることになる。一方、一般庶民の銀行に対する信頼は厚く、銀行の販売する商品ならば大丈夫との認識は根強い。このため、銀行としては、投資家教育も徹底しなければならない。

チャネル業務からの脱却

 第二に、迂回融資業務を支えていたいわゆる「チャネル提供業務」と「非標準化債権類資産」の行方である。

 まず、資産管理商品の資金の他の資産管理商品への投資は原則、一層のみとなることから、証券・基金(投資信託運用会社)・信託会社の資産管理業務のうち、銀行の迂回融資にチャネルを提供して手数料を得ていた部分はほぼなくなると見られる。実際、昨年の指導意見草稿の発表等を受けて、証券会社等の資産管理業務は既に数兆元減少している。証券・基金・信託会社とも本来の資産管理業務への回帰を迫られている。

 次に、非標準化債権類資産である。非標準化債権類資産とは、例えば不動産プロジェクトに対する収益受益権などであり、資産運用商品に組み込まれる形でシャドーバンキングにおいて重要な役割を果たしてきた。指導意見では標準化債権類資産を、「等分化・取引可能、十分な情報開示、集中登記・独立委託管理」されていることに加えて「公正価値を定めることができて、流動性があること、銀行間市場・証券取引所など国務院の同意を経て設立された取引市場で取引されること」と定義している。これら標準化債権類資産以外は非標準化債権類資産(「非標」)となる。

 資産運用商品の非標への投資は、今回の指導意見以前に発表されている諸規定によって既にかなり制限されているが、指導意見によれば、金融機関は激変緩和措置の過渡期が終了する2020年末までに違反行為を解消しなければならない(※4)。

 解消の方法としては、オンバランスの銀行融資への切り替え(銀行融資で非標を返済する)があるが、そもそもシャドーバンキングは銀行が自己資本比率規制等を避けるために始めたものであることを考えると、これは簡単ではないと見られる。

 非標を銀行間市場あるいは証券取引所で取引可能な資産証券化商品に組み替えることも考えられる。指導意見は銀行間市場や証券取引市場における正規の資産証券化商品には適用されないことから、今後これらの商品の利用が増加すると思われる(※5)。また、指導意見では、私募投資基金については別途法律で定めるとしているため(※6)、私募投資基金が使われる可能性もある。

 このように、中国の資産運用業務は、本来あるべき姿に回帰する中で、大きく変化していくことになる。

1) 詳しくは金融ITフォーカス2018年1月号「中国における金融リスク防止策の強化」を参照。
2) クローズドで満期まで保有される商品や、金融資産に活発な取引市場がなく市場価格が得難い場合等では、償却原価法が使われる。
3) 経済観察報2018年5月14日。
4) 但し、非標を利用して資金調達しているインフラ建設等のプロジェクトは期間が長いため、最終的な資金源である個人投資家向けに販売された短期物の資産運用商品(銀行の理財商品等)との間に期間ミスマッチがある。このため、指導意見では、デフォルトリスク等を避けるように、過渡期においては既存資産運用商品での借り換えを認めている。
5) 指導意見第3条。非標を、例えば、銀保監会管轄下の「銀行業信貸資産登記流転中心」で取引される資産証券化商品に作り変え、標準化を目指す動きがあったが、同市場は国務院の同意を得た取引所ではない。但し、別途規定が出る可能性もあるため、標準化扱いとなるかは不明である。
6) 指導意見第2条。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

神宮健

神宮健Takeshi Jingu

NRI北京
金融システム研究部長
専門:中国経済・金融資本市場

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