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営業活動の効率化と最適採餌行動

2018年7月号

小粥泰樹

グローバルな大手金融機関にとってウェルスマネジメント事業は今後強化していきたいビジネス分野の一つである。営業マンが限られた時間を如何に有効活用するかというのは金融機関にとって当該ビジネスの成否を決める重要なポイントであり、各社とも営業マンのサポートを目的として分析機能を強化しようとしている。

 この営業マンが限られた時間を有効活用するという問題は鳥や魚が採餌行動をとる際の最適化問題と類似した部分がある。これら生物の採餌行動の最適化問題の中から最もシンプルな事例として最適パッチ問題と呼ばれるものについて紹介しよう。

 問題の主人公は鳥でも魚でも良いがここでは鳥であると仮定しよう。この鳥は幾つかの木を採餌場所(パッチ)としており、それぞれの木には鳥のえさとなる虫が生息しているものとする。鳥は毎日の餌の収穫高を最大化したいと考えているが、どのくらいの虫が各採餌場(木)に生息しているのか事前に知ることはできず、採餌場へ行って実際に虫を採ることで初めて分かるものとする。また、鳥が虫を食べ始めると虫の数が減っていくので徐々に虫を探すのにかかる時間も長くなっていくとする。このような設定の下でこの鳥は限られた時間を効率よく使うためにどのような考え方をしたらいいだろうか。

 この問題に対する数理的な解答は得られていて、鳥は各餌場へ行ったら単位時間当たりの餌収穫のスピードを計測して(あるいは感じとって)、一定スピードよりも遅くなった時点で次の餌場へ移動する、そしてまたその餌場での収穫スピードが一定レベルより低くなってきたら次の餌場へ移動する、とこれを繰り返すことで収穫高が最大化されるのである。この鳥の簡単な採餌モデルは実際の観察結果からも裏付けられている。

 もちろん、このモデルが金融サービスの営業マンに直接適用できるとは思えない。鳥にとっての餌場と営業マンにとっての顧客とはいろいろな面で質的な違いがあるだろう。しかし、ここで指摘しておきたいのは、もし営業マンに有効なアドバイスをしようと考えるなら、鳥のモデルと同様の検討を営業マン向けの分析でも真剣に考える必要があるのではないか、ということである。最近、欧米の金融機関では単なる分析強化を超えて、営業マンの活動を機械学習で支援するような動きも出始めている。まさに営業マンをサイボーグ化して営業効率を高めようということである。試みとしては面白いと思う一方で、この機械学習はどこまで賢く営業マンをサポートすることができるようになるのだろうか、生物学者が鳥の行動をモデル化したのと同じレベルでインサイトを提供できるのであろうか、少し懐疑的な気持ちで見てしまう。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

小粥泰樹Yasuki Okai

金融ITイノベーション事業本部 副本部長
研究理事

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