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イメチェン進む投資信託

2018年5月号

金融イノベーション研究部 上級研究員 金子久

投資信託は「タイミングが重要」、「高額の分配が得られる」といったイメージが強く、一部の人の利殖の手段としての利用が多かった。しかし、ここ数年は、以前に比べ安定的な資産運用の手段としての活用が広まっている。投信に対するイメージが徐々に変わりつつあり、個人の投信保有余地は高まっている。

 2017年度末の追加型株式投信(除くETF)の残高は63.6兆円となった。この残高は14年度以降60~65兆円の範囲で変動を繰り返しており、ETFを除く投信の市場は表面的には大きな変化がみられない。しかし、今までの投信のイメージを覆す変化が着実に進んでいる。

高分配から安定分配へ変わる分配型投信の選択基準

 かつて我が国の投資信託を代表する存在と言われた分配型投信の残高の減少が止まらない。分配型投信とは運用収益の還元を、主として分配により行うことを重視し、決算が高い頻度で行われるファンド(※1)で、2000年代前半に退職者の年金を補完するキャッシュフローを提供する金融商品として注目され、銀行窓販を中心に勢いがついた。分配型投信はリーマンショックにより一時的に残高は減少したが、その後、為替取引によるプレミアムも収益源として組み入れた分配型投信も登場すると、再び残高が拡大した。分配型投信においては、分配金利回り(基準価額に対する年間分配額)が高いファンドほど資金が集まる傾向があったため、年を追うごとに分配金利回りは高まり、人気ファンドの中には20%を超えるものも登場した。しかし、世界的に低金利環境が継続する中では、長期にわたって高い分配金利回りを維持することは難しく、16年度以降分配金を切り下げる動きが顕著になると、資金流出が急速に加速した。その結果、分配型投信の残高は、わずか3年で16.5兆円以上減少し、18年3月現在28.5兆円となっている。ピーク時には8割に迫った追加型株式投信(除くETF)に占める割合も減少の一途をたどり、直近では5割を下回っている。

 一方で、分配型投信には新たな動きも見られ始めている。アセットミックス型の投信へ資金が流入し始めているのだ(※2)。詳細に見るとアセットミックス型の中でも株式組入比率が中低位のファンドを中心に資金が集まっている。これら株式組入比率が中低位の投信の分配金利回りは概ね3%代後半と、それまで人気を集めてきた分配型と比べると大幅に低く、基準価額の水準を維持できる範囲の分配となっている場合が多い。分配型投信の選択基準が高い分配金利回りから安定的で持続可能な分配水準へと徐々に変わってきていると考えられよう。

資産分散による運用が拡大

 分配型以外の追加型株式投信(除くETF)の中では、流行の「テーマ」や「特定の新興国」ファンドに残高が集中することが依然として見られるが、近年では資産分散の手段になり得る投信にも確実に資金が流入し始めている。この動きは、いくつかのタイプの投信で具体的に見ることができる。

 まず一つ目が、分配型以外のアセットミックス型投信(※3)である。このタイプはその名が示す通り、様々な資産への投資を内包している投信で、一つのファンドを保有するだけで資産分散が可能となる。それらの残高は14年3月以降の4年間で2.3兆円増加し、直近では3.3兆円に達している(図表2)。以前は株式組入比率による人気の偏りは余り見られなかったが、最近では株式組入比率の高いファンドほど資金流入額が多い傾向が見られる。解約率は分配型以外の投信の一般的なもの(投資一任向けや確定拠出年金向けを除く)が大凡40%なのに対して、アセットミックス型の場合は25%程度と低く、長期投資が意識されている傾向も伺える。分配型でないことやリスク選好、投資ホライズン等から考えて、このタイプの投信の保有の中心は現役世代と考えてよかろう。

 同じように、現役世代が資産分散の手段として活用していると思われるのが、インデックスファンドだ。特に国内株式以外の海外株式・債券、及び国内債券のインデックスファンド保有者は約半数が5本以上の投信を保有しており、自分で資産分散ポートフォリオを構築している人が多いことが、野村総合研究所の調査で分かっている。国内株式以外の主要3資産のインデックスファンド残高は直近で約8千億円とまだ小規模だが、最近4年間で2.3倍に拡大している。

 退職世代による資産分散の手段として挙げられるのがファンドラップと呼ばれる投資一任サービスだ。このサービスは、長期的な運用目標を設定し、その実現のために国内外の様々なアセットクラスに投信を通じて分散投資するサービスだ。以前は主として大手証券と一部の信託銀行が行っていたが、1、2年前から大手銀行でも本格的にサービスが始まり、更にはネット証券や一部の地銀などでも取り組み始めるなど、販路の拡大が残高の拡大につながっている。ファンドラップサービスを経由して投信に流れ込んでいる資金は国内籍投信だけで現在6.5兆円で、4年前に比べ5.7倍になっている。

 筆者は、かつて個人の投資に対する意識調査(※4)を行ったが、その調査では「投信は、特定の地域やテーマの投資対象に、時期を見計らって投資するための道具だ」と考えている人が多いことが浮き彫りになった。この意識は投資家だけでなく、投資経験のない人々にも浸透していて、このことが投資の裾野拡大にとって大きな障害になっていた。ところが最近では、投信を資産分散の手段と捉え、従来に比べ安定的な運用を目指して保有する人も増えている。分配型投信にしても同様で、従来の印象は変わりつつあり、投信の普及余地が高まっていると言える。

1) 本稿では4半期に1度以上の頻度で決算を行う投信を分配型としている。なお、ファンドラップなどの投資一任サービスで提供されるファンドの中にも四半期に一度以上の頻度で決算を行うファンドがあるが、それらは本稿では投資一任向け投信に含め、分配型投信には含めていない。
2) 17年度の分配型投信の資金流出入(分配も資金流出とみる)を分類別に見ると、海外債券型や不動産投信型が1兆円を超える資金流出となる一方で、唯一アセットミックス型のみが資金流入(+2千億円)となっている。
3) ここでは、確定拠出年金向け専用投信は含んでいない。
4)「 個人の投資に対する取り組み状況に関する調査」(野村総合研究所、2015年1月)。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

金子久Hisashi Kaneko

金融イノベーション研究部
上級研究員
専門:個人金融マーケット調査

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