1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. 金融インフラ
  6. 預金口座の紐付けが開始されたマイナンバー

預金口座の紐付けが開始されたマイナンバー

2018年4月号

未来創発センター 制度戦略研究室長 梅屋真一郎

マイナンバーの金融分野での利用はいよいよ本格化しており、2018年1月からは預金口座のマイナンバー付番もスタートした。利用者や金融機関の負担を考慮すれば、金融機関と行政機関の間でのデータ連携も行うべきではないだろうか。

 2015年10月から日本に住むすべての住民を対象に交付が始まったマイナンバーは、2017年から利用が本格化した。例えば、従業員の年末調整や社会保険手続き、また2016年分の個人の確定申告でもマイナンバーを届け出ることとなった。同様にNISA(少額投資非課税制度)口座でも2017年9月末までに届け出が求められるなど、金融分野での利用も本格化した。こうしたことから、2017年は「マイナンバー利用元年」と言えるだろう。

 そして、いよいよ2018年1月からは預金口座へのマイナンバー付番も開始された。これからは、金融分野がマイナンバー利用の主たるテーマとなっていくものと思われる。

有価証券口座や預金口座全般での課題

 金融分野においてマイナンバーを活用していくためには、金融商品の口座や契約に関して利用者からマイナンバーを届け出てもらう必要がある。株式や投資信託、預金などについては、資産を把握されるのではないかという懸念からマイナンバーの届け出が進まないのでは、といった意見も根強い。

 そこで、NISA口座の例を見てみたい。投資で得た利益を非課税にするNISA口座は、2018年も継続して非課税枠を得るためには、昨年9月末までにマイナンバーの届け出が必要だった。日本経済新聞の報道によれば、75%の口座が期限までに届け出を行ったようだ。これには金融機関による顧客への丁寧な説明が奏功したと思われる。

 このように、金融分野においても丁寧、かつしっかりとした説明があれば、他の分野と同様に(※1)マイナンバーの届け出が着実に進むとも考えられる。だが、金融分野は今後もマイナンバー関連の様々なイベントが控えており、スムーズに届け出が行われるか予断を許さない。

 例えば、NISA口座以外の株式や投資信託の有価証券口座は今年末までにマイナンバーの届け出を行う必要がある。期日までに届け出を行わなかった場合の対応はまだ明らかになっていないが、法律上では、税手続きの負担が軽減される「特定口座」などの利用に支障が出る恐れがある。

 また預金口座も、今のところ届け出はあくまで利用者の任意であるが、2021年を目途に制度の見直しが行われる予定であり、その際には義務化も視野に入っている。

 これらすべての金融商品の口座についてマイナンバーの届け出を個別に行う現行の仕組みでは、金融機関の事務負担が膨大になるだけではなく、期日までに届け出を行えなかった利用者に、税手続きの手間が増えるなどの不利益が発生する可能性がある。特に預金口座の数は10億を超えるとされ、大きな影響がある。マイナンバーの本来の目的は税などの行政手続きの効率化であり、国民の負担がかえって増えるというのは望ましくないだろう。

行政情報との連携も視野に入れるべきでは

 マイナンバー届け出に関して、金融機関と利用者、双方の負担を軽減する策として、例えば金融機関が本人確認と住所確認を行っている口座を対象にマイナンバーを行政機関から金融機関に渡すことを考えてみてはどうだろうか。実は、同様の仕組みは健康保険や企業年金などで実現している。

 企業の健康保険組合には退職者も加入している場合がある。それらの退職者についてもマイナンバーを行政機関に届け出る必要があるが、既に職場から離れていることもあり、すべての人のマイナンバーを収集することには困難が生じる。そこで、マイナンバーを取得できなかった加入者に関して健康保険組合連合会を介してマイナンバー情報を照会できるシステムが提供されているのだ。これにより、加入者から直接届け出がなかった場合でも、マイナンバーを取得できる仕組みになっている。これは、健康保険が公益性の高い分野であることから認められている仕組みだ。

 金融商品の口座や契約についても、契約者情報の正確な把握は、税手続きのみでなく、例えば相続のような分野など様々な面で利用者ひいては国民にとってメリットが高い。その点で、金融機関がマイナンバーを含めた各種情報を正確に把握することは健康保険や企業年金と同様に公益性が高い分野と言えるのではないだろうか。技術的には既に提供されている仕組みでもあり、必要な開発投資も最小限で済むと思われる。

 むろん、税手続き等の公益性が高い分野以外で利用されるのではと言った懸念もあるだろう。そこで、証券保管振替機構や預金保険機構などの中立機関の活用や、税務署を経由して税目的に限定させるといった対応が考えられる。これにより、金融機関が公益目的以外で利用することなく、正確な契約者情報を把握できるようになるのではないだろうか。

すべての口座・契約がマイナンバーと紐づく意義

 仮にこのような仕組みですべての金融商品の口座・契約とマイナンバーが紐づくと、金融機関の事務効率化につながるだけではなく、契約者の利便性向上、ひいては社会全体への大きなインパクトが期待できる。

 例えば、行政の持っている最新の住所や生死情報を金融機関に還元することができれば、金融機関の事務や相続時などの手間が劇的に減少する。一例として、金融商品の契約者が死亡した場合には相続手続きが必要となるが、金融機関は契約者の親族などからの連絡がない限り把握することは難しい。一方、市役所などの行政機関は死亡届の提出を通じてほぼ確実に死亡情報を把握できる。行政機関が保有する情報を金融機関に還元することができれば、相続手続きの簡略化や保険商品の不払いなどの防止につながるだろう。この事は、金融機関だけではなく、契約者並びにその親族にも利便性をもたらすことになる。また、金融商品に関する税などの優遇措置を新たに作る際も、完全電子化が行われていれば迅速かつ低コストでの実現が可能となる。

 生活の中で、事務手続きが比較的頻繁にあり、かつその手間が大きいのは金融分野である。その金融分野での完全電子化とともに手続きの自動化・省略化が進むことは社会全体の効率化にも大きく貢献すると期待できる。マイナンバーは効率化などで国民の税負担をできる限り抑えるとともに、限られた財源を本当に困った人の支援に向ける大切な社会基盤である。そのためにも金融分野での対応に関する議論を深めるべきだ。

1) 従業員の年末調整や社会保険手続きなどでは、7割超の企業がほぼ全ての従業員からマイナンバーの届け出を受けている(野村総合研究所調べ)。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

梅屋真一郎

梅屋真一郎Shinichiro Umeya

未来創発センター
制度戦略研究室長
専門:制度調査・提言

このページを見た人はこんなページも見ています