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ロボアドバイザー導入時に考慮すべき選択と課題

2018年4月号

Polly Portfolio社 CEO NRI アメリカ 客員フェロー ジェイセン・ヤング

米国でロボアドバイザーが急速な広がりをみせたのはほんの5年まえからの動きにすぎないが、いまや広範な投資商品販売会社や運用会社が必須のサービスとして既に導入したり導入に向けた準備を行っている。ロボアドの導入には、最善の実装アプローチの検討を行うとともに、既存システムとの連携等、いくつかの点に留意する必要がある。

既存の投資サービス業者にとっても提供は必須

 B2Bロボアドバイザーの経営に携わってきた筆者自身の見立てでは、「ロボアドバイザー革命」はほんの5年前に始まった動きにすぎない。米国の専業ロボアド最大手であるベターメントらの運用資産の急拡大が始まったのは2013年以降のことである。しかし、今日では、あらゆる種類の投資サービス業者が、販売会社か運用会社かを問わず、ロボアドに代表されるデジタル投資サービスの導入や検討を行っているといっても過言ではない。

 投資サービス業者はデジタル投資アドバイスに対する顧客側の高まるニーズに応えようとし、規制対応上の必要性もそれを側面から後押しする(※1)。証券会社など販社では、顧客が伝統的な対面店舗やコールセンターにおける顧客対応の補完や代替として、デジタルによるアドバイス提供を求めている。運用会社においても、デジタル投資サービスの提供は、自社の専門性やブランド力をマネタイズする新たな機会としても捉えることができる。

 ただし、デジタル投資アドバイスを提供するという戦略決定を行う際に、それをどのようなアプローチによって実現するかということは重要だ。基本的には自前構築、買収、およびサードパーティ(他社)利用の3つの選択肢があるが、各社にとってどれがベストな選択となるのかは、それぞれの目指すもの(ゴール)、既存能力、弱みについての正しい自己認識に大きく負っている。

自前構築・買収・他社利用それぞれのメリット

 既存投資サービス業者の自前構築の先駆けの1つが、チャールズ・シュワブの無人型ロボと、その後に導入したハイブリッド(デジタルにコールセンターを通じた人的アドバイスも付加)型ロボである。伝統的に個人向けデジタル証券サービスの自前構築に長けた同社では、ロボアド企画からソリューション開発までを社内人材で賄える態勢がある。また、ロボアド用ソリューションが連携する先の証券バックオフィス、資産管理、CRM等も自社開発のシステムを有している。さらに、ロボアドに組み込む投信、ETF、マネジドアカウントの運用商品もグループで内製しており、運用面での付加価値を垂直的に取り込んだ事業戦略となる。これらの点により、シュワブがロボアド用ソリューションを自社開発することには十分な妥当性がある。同社の他にも、バンガード、モルガンスタンレー、メリルリンチらの大手金融グループが、既存リソースを活用しながら自前構築によるロボアドを提供している。

 一方、ロボアド提供に際して、比較的小規模なロボアド会社を買収することで自社に欠けるテクノロジーやノウハウを早期に獲得する動きは運用会社を中心にみられている。投資戦略やマーケティング、テクノロジー全般に大規模かつ広範な自社リソースを持つブラックロックが2015年にフューチャーアドバイザーを買収したのもその1つである。ブラックロックのソリューション事業は機関投資家向けが中心であったが、買収により個人投資家向け(販社経由で個人が利用するB2B2C)のロボアドプラットフォームを短期間で確保した。世界最大の運用会社である同社では、販社向けのツールを広範に拡充することに個人投資家事業推進の重点を置いており、ロボアドの提供もその一環として位置づけている。同様の構図が当てはまる例としては、インベスコによるジェムステップ買収、ウイズダムツリーによるアドバイザーエンジンへの出資などがある。

 他方、ロボアドが既存勢力への「破壊者」として世の中に登場した当初の状況から一変し、現在では多くの販社が投資家へのサービス拡充の有用な手段の1つとして、サードパーティの提供するロボアド用ソリューションを求めるようになっている。彼らにとっての重要なゴールは、顧客との間で伝統的な方法に加えてデジタル的な方法でもコミュニケーションや様々なやり取りを行うことのできる能力を、既存業務への支障なく獲得することにある。すでに米国ではこうしたニーズに対応するパッケージソリューションでも、ウェブとモバイルの双方を通じた顧客とのデジタルコミュニケーションが可能となっているほか、自動リバランス機能の付いた運用機能が備わっているものが多い。むろん、販社向けのロボアド用ソリューションのすべては画一的なものでなく、対面や独立営業員チャネルで使用されることに重点を置いたものや、無人型サービスとしての提供を念頭においた機能があるもの、銀行グループ向けに銀行商品のクロスセル推進を意図したものなどさまざまである。

実装に際し考慮すべき既存インフラとの連携等

 利用可能なソリューションの存在を所与として、その実装に際し直面する課題について、最後に3点述べたい。

 第一に、多くの販社でロボアドの導入に際しまず考慮すべきこととして、既存のバックオフィス、資産管理、CRMシステムとの連携がある。これら既存システムの運用にかなりの手作業が残っていたり、一定以上古いレガシーシステムを使っていたりということも多々あるなかで、対応作業は必ずしも単純なものではない。場合により、既存システム自体の移行がロボアド用ソリューションの統合的実装に際して必要になることもある。

 第二に、対面営業員の日常業務のワークフローが各社各人に一律でないことへの対応がある。たとえば、顧客世帯レベルで単一ポートフォリオ運用をしている場合はロボアドの運用も比較的単純だが、世帯構成員毎にポートフォリオを別々に設定している場合ではそれだけロボアドに係る実装の負荷や複雑度が増す。

 第三に、人材確保に関する課題がある。たとえば、従来は口座開設や資産運用に係るタスクの多くを手作業により処理していたケースで、その相当部分をロボアドの導入を機にデジタル化し作業人員の削減が実現できたとする。こうした場合には、並行して顧客に対するテクニカルサポートを提供する必要が新たに生じるが、従来の事務作業要員がサービスモデルの変更に伴う新たな作業を効率よくできる人材であるとは限らない。場合により、再教育や新たな人材確保が必要となる。

 上記の課題の存在にもかかわらず、デジタルによる顧客サービス導入はもはや多くの投資サービス業者にとって選択肢ではなく必須のものとなっている。各種調査でも、富裕な人ほどデジタルサービスがないことに対して不寛容であることが示されており、今やロボアドは若年や小口投資家のためだけのものでは全くなくなった。

1) 2017年に部分発効した米国労働省のフィデュシャリーデューティ新規則では、証券会社や銀行グループらの投資商品販売会社に対し、代表的な制度貯蓄口座であるIRA(個人退職口座)等を利用するすべての顧客に対して包括的なプロファイリングと定期レビューの遂行、および顧客の個別性を考慮したアドバイスの提供を求めている。これに伴い、一定規模以下の投資家顧客についてはロボアドバイザー技術を用いた対応準備を進めているところが多い。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

ジェイセン・ヤング

ジェイセン・ヤングJasen Yang

Polly Portfolio社
CEO
NRI アメリカ 客員フェロー

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