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金融機関のファンド投資に係るバーゼル規制対応の課題と解決策

2018年4月号

資産運用サービス事業部 上級システムコンサルタント 藤本充男

近年、銀行のファンド投資が拡大・多様化する一方で、ファンド投資に係るバーゼル規制の高度化が進んでいる。その中で、運用会社から銀行へ提出されるレポートのフォーマットの標準化が進んでおらず、今後のバーゼル規制への対応が困難になることが予想される。

金融機関で増加するファンド投資

 長引く金融緩和の影響により、国内金融機関の収益面における有価証券投資の重要性は一段と高まっている。特に外国証券や投資信託等への投資が進んでおり、中でも投資信託等については、投資残高が2012年から2017年にかけて3兆円から12兆円へと約4倍に拡大している。従来、金融機関の有価証券ポートフォリオは国内債が8割以上を占めていたが、近年その割合は7割を下回るレベルとなっており、金融機関のポートフォリオは海外金利、為替、株価、不動産価格など、多様なリスクに晒されるようになってきている。

ファンド関連のバーゼル規制は今後目白押し

 こうした中、今年以降、ファンド投資に関するバーゼル規制が相次いで実施される。バーゼル規制は1992年度末に国内に本格導入されて以降、デリバティブ取引の一般化やリーマンショック等を経て、バーゼルⅠからバーゼルⅡへと進化、さらに現在バーゼルⅢの導入が進められている。図表は、2017年12月に公表されたバーゼルⅢの最終規則への対応を含め、今後の国内金融機関のファンド投資に係るバーゼル規制対応のテーマを時系列で並べたものである。

 2018年度初より適用される「カウンターパーティ信用リスクエクスポージャーの計測に係る標準的手法(SACCR対応)」、「銀行勘定の金利リスク(IRRBB)」のテーマは、デリバティブ取引のリスクや金利関連取引のリスクの計測手法を標準化する一方で高度化したものであり、今まさに国内の金融機関が対応を進めているものである。

 また2019年度初には、リーマンショック発生の一つの要因となった「証券化商品の資本賦課の見直し」や、「ファンド向けエクイティ出資の資本賦課見直し(ルックスルー対応)」の国内適用が予定されている。特に、「ファンド向けエクイティ出資の資本賦課見直し(ルックスルー対応)」は、ファンドの中に含まれる株や債券、デリバティブ取引などの個々の銘柄や取引についても、その内容を確認した上でリスク資産額の算出を要求するものであり、現在のファンド単位でリスク資産額を算出する業務と比較した場合、格段に業務の負荷が増加することになる。

規制対応で銀行及び運用会社が抱える課題

 国内では、ファンドに関するリスク資産額の計算はファンドの設定・運用に係る運用会社が行い、ファンドへ投資する銀行に対し、ファンドに含まれる銘柄の明細等と共にレポートとして提出するスキームとなっている。

 そのため銀行では、複数の運用会社から別々のフォーマットでレポートを受け取っており、銀行の担当者は手作業で、フォーマット変換や口数の比率に応じた按分計算などを行うことが必要となっている。また、運用会社のファンドレポートは、銀行の自己資本比率計算に使用されるだけでなく、複数の部署でファンドのポジション管理業務やモニタリング業務などでも使用されており、銀行内ではファンドレポートを中心とした煩雑な業務フローが構築されているのが一般的である。

 一方、運用会社では、こうした銀行内部における独自のレポート利用があることもあって、一部の銀行からは個別フォーマットのレポートを要求されており、それらの作成・提出のため、毎月、月末から月初に掛けて、既に業務の負荷が相当高い状況となっている。その中で、来年にはルックスルー対応が必要となり、さらに導入時期は未定だが「トレーディング勘定の抜本的見直し(FRTB)」に伴い、一部の銀行ではファンドのリスク評価が月次から日次へ変更されることになる。運用会社でのファンドレポート作成の頻度、作成負荷はさらに高まることが容易に想像される。

バーゼル関連レポート業務の効率化に向けて

 現在のバーゼル関連レポート業務の最大の課題は、銀行や運用会社が個々に独自の様式のレポートを要求、または作成していることである。既に予定されている金融機関での制度変更対応を考慮すると、効率化を図るためには、レポートのフォーマットを標準化することが待ったなしの状況になっていると言える。

 標準化を行う主体は、投資信託協会など、銀行向けのレポートを作成する運用会社の関連団体が適当と考えるが、銀行の関連団体の要求を踏まえた標準化とすることや、制度の変更による見直しが継続的に可能な仕組みを構築することがポイントである(※1)。また、レポート作成に係る費用の取扱いも標準化の際の検討対象になり得ると考える。

 現在、一部の銀行では個々に運用会社に対して独自フォーマットでの提供を要請しているが、標準化されたフォーマットを利用できれば、煩雑な運用会社との調整は不要となる。オプション仕様を設けることで、ある程度のカスタマイズも可能だろう。また、運用会社から標準化されたデータ形式でレポートを入手できるようになれば、銀行は、自己資本比率計算、ポジション管理業務やモニタリング業務などを一気にシステム化することが可能となり、大きなメリットを享受できると考えられる(※2)。

 バーゼル関連レポートの標準化は、運用会社だけでなく、銀行にとっても負荷の軽減、効率化につながるものである。1日も早い実現を望みたい。

1) NRIが提供する「BISレポート作成システム(GX-BIS)」は、今後、国内主要運用会社(30社)での利用が予定されている。GX-BISでは30社共通フォーマットのBISレポートが作成でき、既に、2018年度に適用されるSACCR、2019年度適用予定のファンドルックスルーなどの対応も可能となっている。また、証券化商品の資本賦課の見直しの対応にも着手しており、バーゼル規制の対応に、国内での適用に先んじて取り組んでいる。
2) NRIが提供する「SYNTAX Look-through Highway(SYNTAX-LH)」は、運用会社のファンドに関するデータをネットワーク経由で銀行へ提供するものである。具体的には、NAV、残高、BISレポート、IRRBB対応で求められる金利感応度などのデータの提供が可能となっている。2018年4月より提供が開始されるサービスであるが、2018年3月現在、10行程度の銀行が、サービス開始当初より利用する予定となっている。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

藤本 充男

藤本充男Mitsuo Fujimoto

資産運用サービス事業部
上級システムコンサルタント
専門:金融制度動向調査

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