1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. 金融市場
  6. ICO(Initial Coin Offering)をどう規…

ICO(Initial Coin Offering)をどう規制すべきか

2018年4月号

未来創発センター 主席研究員 大崎貞和

ビットコインやイーサなどの仮想通貨の取引が拡大する中で、既存の仮想通貨の払い込みを受けて独自のトークンを発行するICOも拡がっている。米国SECはICOを有価証券発行であるとして規制に乗り出しているが、日本においても適正な規制枠組みの構築が求められている。

仮想通貨取引とICO

 ビットコインやイーサ(イーサリアム)を初めとする仮想通貨の取引が活発になっている。短期間での極端な価格変動から「投機的」といった批判を受けつつも、とりわけ2017年後半は主要な仮想通貨の相場が高騰し、取引高も著増した。米国の先物取引所がビットコイン先物の上場取引を始めるなど、仮想通貨を原資産とするデリバティブ取引の市場も整いつつある。日本の個人投資家の関心も高く、2017年12月時点では、世界のビットコイン売買高の4割が円建て取引だとの報道もあった。

 2018年1月に起きた仮想通貨交換業者コインチェックにおける仮想通貨NEMの不正流出事件は、こうした過熱ぶりに水を差すものとなった。しかし、コインチェックをめぐっては、同社の顧客預かり資産の管理手法に情報セキュリティ対策という面から深刻な問題があったという見方もなされており、仮想通貨交換業者全体に対する信頼の低下や投資家の仮想通貨離れにまではつながっていないようである。

 仮想通貨の取引が拡大し、投資家の関心も高まっていることを背景に、投資家からビットコインやイーサなど既存の有力な仮想通貨の払い込みを受けて、トークンと呼ばれる独自の電子的な証票(あるいは仮想通貨)を発行して資金調達を行うICO(Initial Coin Offering)の事例も増加している。

 ICOという呼び名は、株式会社が自社の株式を証券取引所に上場して幅広い投資家から資金を調達するIPO(Initial Public Offering)になぞらえて生まれたものである。

 ICOの実施主体は、IPO時に作成・交付される目論見書などの開示書類にならってホワイトペーパーと呼ばれる説明文書を作成し、自主的に投資家に提供している。しかし、ホワイトペーパーにどのような事項を記載すべきかについての統一的なルールは設けられていないし、記載内容が虚偽や誤解を生じさせるものでないかどうかについて外部の第三者がチェックするといった仕組みも存在しない。

ICO規制の課題

 こうした中でICOを行うとして投資家からビットコインやイーサの払込を受けていながら、まともなトークンと言えるようなデジタル・データを投資家に付与しないとか、集めた資金をICOの実施者が個人的に流用してしまうといった詐欺的なICOも目立つようになってきた。

 そこで米国の証券市場監督当局である証券取引委員会(SEC)は、2017年9月、サイバー犯罪等の不正行為摘発を主な任務とする専門部署としてサイバー・ユニットを新たに設置し、同年12月以降、本格的な不正の摘発に乗り出している。

 SECの対応手法は、ICOで発行されるトークンが連邦証券法上の規制を受ける有価証券の一種である「投資契約」に該当するとした上で、詐欺的なICOを法令で義務づけられたSECへの登録を行わないまま行われた有価証券の募集だとして、差止命令や課徴金賦課の対象とするというものである。

 その際に用いられる論理は、トークンが判例によって確立したHowey基準に照らせば「投資契約」に該当するというものである。同基準は、①資金の拠出、②共同事業、③事業から得られる収益の期待、④収益の獲得がもっぱら他者の努力によること、の4つの要件が満たされる場合には「投資契約」が成立すると判断する。

 実は日本の金融商品取引法にも米国のHowey基準とよく似た概念が設けられている。集団投資スキームと呼ばれ、組合や匿名組合などの権利のうち、権利者(出資者)が出資した金銭等を充てて行う事業から生じる配当等を受けるもので、出資者が共同事業に携わっているとは言えないものを同法の規制対象となる「有価証券」だとするものである(図表参照)。

 この集団投資スキーム概念に照らせば、ICOで発行されるトークンの中には有価証券として規制されるべきものが含まれるものと考えられ、事実金融庁も、そうした趣旨の投資家向け注意喚起を行っている。

 もっとも、日本の規制を様々なトークンに対して積極的に及ぼすことが望ましいかどうかには疑問も残る。第一に、集団投資スキームであり有価証券に該当するとしても、「主として有価証券に投資する」ものでなければ情報開示規制の適用を受けない。つまりトークンを発行して株式など他の有価証券に投資するというICOでなければ情報開示に不備があるとして規制することは難しい。

 第二に、米国ではSEC登録が不要となる「私募」の概念が緩やかで、一定以上の収入や財産を有する個人を含む幅広い投資家層に対して勧誘を行うことが許容されている。SECは詐欺的でないICOが「私募」の枠組みで適正に行われることを期待しているようである。一方、日本では個人を含む幅広い投資家向けの投資勧誘には米国以上に厳しい規制が設けられている。

 詐欺まがいのICOは排除されるべきだが、技術革新を妨げるような過剰規制も避けなければならない。ICOに対する適正な規制枠組みの構築が求められている。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

大崎貞和

大崎貞和Sadakazu Osaki

未来創発センター
主席研究員
専門:証券市場論

この執筆者の他の記事

大崎貞和の他の記事一覧

注目ワード : 仮想通貨

このページを見た人はこんなページも見ています