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中国におけるインターネット金融とFinTechのリスク防止

2018年3月号

NRI北京 金融システム研究部長 神宮健

2018年も、中国政府は金融リスク防止を重視している。インターネット金融・FinTech分野の取締りや改善策でも、今年は一定の成果が出ると期待される。また、個人情報保護にも注目が集まり始めた。

インターネット金融取締りの経緯

 2018年も、中国政府の金融リスク防止の姿勢は続いており、インターネット金融やFinTechもその対象である。

 まず、これまでの金融当局の動きを振り返る。インターネット金融が注目を集め始めた2013年頃から、例えばP2Pプラットフォームを通じたインターネット上の金融が急拡大し、P2Pプラットフォームによる資金の持ち逃げ等が生じ社会問題にもなった。しかし、当局は、これらインターネット金融の金融包摂分野での可能性に早くから着目し、良い部分と悪い部分を見極めるために2015年まで事態を観察した。

 2015年7月、人民銀行等10部門が「インターネット金融の健全な発展の促進に関する指導意見」(指導意見)を発表、インターネット金融を発展させる方針が示されると同時に、様々なインターネット金融を機能面から分類した上で、それぞれの監督管理当局を定めた(※1)。

 この指導意見を受けて2016年から現在までインターネット金融の取締りが続いている。取締りの基本的な方向は2016年の「インターネット金融リスク専門取締実施案」(国務院、2016年4月、発表は10月)(実施案)で示されている。ここではインターネット金融の分類毎に問題点を挙げた上で、違法行為を2017年3月までに取締まるとされ、並行して各規制当局も詳しい取締実施案を発表した。ただ、実際には各地方における取締りに時間がかかったため、2017年央にさらなる通知が出され(※2)、業務改善と検査は2018年6月までに完了することになっている。

 取締りの具体例を見ると、アリペイによる支払いに代表されるインターネット上の第三者支払業務については、第三者支払機関(アリペイ等)による顧客資金の流用・占用の禁止が確認された他、銀行を跨ぐ支払いは人民銀行の清算システム(あるいは、合法的な清算機関)を通して行わなければならないとされた(※3)。

 後者の意図は、清算の透明化と当局による資金フローのリアルタイムでのモニタリングである。従来のデビットカード型の支払い(デビットカードとしての銀聯カードの利用等)等の場合、人民銀行の清算システムを通して清算される。一方、第三者支払による支払いでは、第三者支払機関が、複数の商業銀行に自らが開いている銀行口座(とその中にぶら下がる顧客口座(※4))を利用して、人民銀行を通さずに清算・決済してしまうことが可能である(図表1)。清算組織ではない第三者支払機関が事実上の清算組織になっていることや、第三者支払機関内で清算が済んでしまうと商業銀行や人民銀行から取引やその内容がわからないことが従来から問題視されていた。

 このため清算システム「網聯」が設立された(2016年10月、人民銀行により設立認可)(※5)。最終的には、2018年6月末以降、第三者支払機関を利用したインターネット上の支払い(銀行口座がかかわるもの)は、すべて網聯を通して処理されなければならない(※6)。既に2017年6月末から一部の第三者支払機関が、網聯システムを利用し始め、9月末時点で、銀行15行が接続、支払機関9社が接続している(※7)。これにより第三者支払機関を利用した支払いも、従来のデビットカードの場合と同様の形で清算されることになる。

 もう一つの例としてP2P金融の取締りを見る。取締りは、上述の実施案と、並行して発表された「P2Pインターネット貸借リスクの取締実施案」(銀行業監督管理委員会、2016年4月、発表10月)、「インターネット貸借情報仲介機関の業務活動の管理暫定弁法」(銀監会他、2016年8月)に基づいて行われている。

 P2Pプラットフォームは、専らインターネット貸借の情報仲介に従事する金融情報仲介企業とされ、事実上の銀行業務等は禁止された。また、P2Pプラットフォームは登録制となり、登録には、顧客資金の銀行での分別管理の実行や電信業務経営許可の取得等が必要である(※8)。

 P2Pプラットフォームの登録についても予定通り進んでいないため(※9)、足元では2018年4月末までに主要P2Pプラットフォームの登録を完了し、6月末までにすべて完了することになっている。既に、P2P業界は勃興期のプラットフォーム乱立の時代を経て淘汰が進んでおり、今後は強いところがさらに強くなる形で優良なプラットフォームへの集中が進むと見られる(図表2)。

個人情報保護にも注目

 これらの取締りと並行して、個人情報保護も重視されつつある。これは、ビッグデータ利用等のFinTechの方面で重要である。

 個人情報保護については2017年6月に二つの重要な展開があった。第一は「インターネット安全法」の施行である。個人情報保護法が未制定の現時点では、最も全面的な規定とされる(※10)。収集する情報は必要最低限にとどめること(※11)、情報を収集する場合、ユーザーに情報使用の目的・方式・範囲等を明示し、同意を得なければならないこと、などが定められている。また、2017年6月に、最高人民法院(最高裁判所に相当)と最高人民検察院(最高検察庁)が刑法の解釈を発表し、個人情報保護の侵犯行為の量刑を厳格化した。

 これまで、中国では個人情報保護の意識は高くないと言われることもあったが、2018年初にアリペイの個人情報の収集使用の問題(※12)が比較的大きく報道されたことを見ると、人々の関心も徐々に高くなっていると思われる。

1) 例えば、インターネット上の支払いは人民銀行、P2P金融は銀行業監督管理委員会(銀監会)等。
2) 人民銀行等17部門が、インターネット金融リスクのさらなる取締整理に関する通知を発表した。
3) 人民銀行等「非銀行支払機関リスクの取締実施案」による。(2016年4月、公表は10月)
4) 本誌2016年3月号「2016年はインターネット金融規制元年に」参照。支払機関の銀行口座上に記録される顧客の資金残高は預金保険の対象外。顧客が支払機関に資金の保管を委託する形となり銀行口座名は支払機関。
5) 2017年7月28日、45機関(人民銀行傘下機関、第三者支払機関等)が網聯清算有限公司設立協議書に署名。資本金は20億元。
6) 2017年8月の人民銀行の通知による。
7) 「人民銀行2017年第3四半期支払体系運行情況」
8) 本誌2016年11月号「P2P金融に対する規制を本格化する中国」参照。他に、資金プーリングと貸出(事実上の銀行業務)や資産証券化類似業務の禁止、P2Pプラットフォームでの借入残高上限の規定等がある。
9) 当初、登録期限は2017年8月とされていた。
10) 同法の第四章が個人情報保護関連である。
11) ユーザーに半ば強制的に情報収集・使用に合意させて(合意しないとアプリが使えない等)、関係のない様々なデータまで集めることを制限する意図もあろう。他に、個人情報の違法な取得・販売・提供の禁止、データを匿名化すれば対外提供可能、等がある。
12) アリペイの特定のサービスを利用する際に、「個人情報の収集・使用に同意する」ことが、小さな字で示されていた問題。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

神宮健

神宮健Takeshi Jingu

NRI北京
金融システム研究部長
専門:中国経済・金融資本市場

注目ワード : FinTech(フィンテック)

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