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金融サービス化するポイントプログラム

2018年3月号

ICT・メディア産業コンサルティング部 上級コンサルタント 冨田勝己

近年のポイントプログラムでは、ポイントの利息や運用などの擬似的な金融サービスに加えて、証券口座への振込までもが提供されるようになってきている。顧客満足と自社経済圏強化を両立させる施策として、導入が今後広まっていく可能性が高い。

多様性を増してきたポイントプログラム

 ポイントプログラムと言えば、そのサービスを提供している店舗での取引に際してポイントが付与され、次回以降の取引においてその支払い代金の一部として還元されるという形態が一般的であるが、近年ではその内容、特に付与された後の取り扱いに幅が広がってきている。これまでも抽選や宝くじ、お試し引換券(通常よりも大幅に少ない額のポイントで交換できる)、特典航空券など、ポイントの価値が変動するような還元対象が存在していたのだが、金融に近い性質を持つサービスが増えてきている。

 具体的には2016年以降、貯めているポイントに利息がついたり(リアルワールドの「ポイント利息」サービス)、また投資に見立ててその額が増減したりするもの(クレディセゾンの「永久不滅ポイント運用サービス」)や、約定代金の一部にポイントを充当できるもの(楽天の「投資信託買い付けサービス」やインヴァスト証券の「クレカポイント積立て投資」)などが出てきているのだ。

 具体的には、「ポイント利息」は所有しているポイント残高に応じた利息分のポイントを毎月受け取れるサービスで、「永久不滅ポイント運用サービス」は申込額を疑似運用(実際には購入していない)し、その結果がポイント残高に反映されるサービスである。また「投資信託買い付けサービス」や「クレカポイント積立て投資」は、獲得したポイントを実際の投資信託等の約定代金に充当できるサービスである(「クレカポイント積立投資」は、クレジットカードの利用によって貯まるポイントが自動的に現金化され、投資用口座に振り込まれる)。

金融系サービスの類型

 これらは金融サービスに類似しているために利息型と運用型に大別できるが、ポイントプログラムという観点から、もう少し細分化がなされる。

 企業にとってポイントに関する活動は、顧客への付与、顧客による保有、顧客からの還元、という3つの段階に大別できる。「ポイント利息」や「ポイント運用サービス」は保有の段階におけるサービスであり、その原資たるポイントそのものはまだ消費されていない。また顧客は当然、依然としてそのポイントを保有していると認識している。一方、「約定代金への充当」は、ポイントを現金へと換金し、それを代金に充てているため、還元の段階におけるサービスである。従って、保有している残高のすべてをこのサービスに充てた場合などは、顧客はそれ以降にポイントをまた新たに獲得しない限りは、ポイントを保有しているとは認識しにくくなる。なお、同じく還元の段階における利息型に該当するサービスとしては、銀行口座へのキャッシュバックサービスが挙げられるが、これは従来から様々な事業者で導入されている。

サービス内容の背景にある事業特性

 サービス内容が保有と還元、また利息と運用のように、異なる領域で提供されているのは、ポイントプログラムの提供主体の事業特性の違いに依るところが大きい。

 保有ポイントへの利息を提供しているリアルワールドでは、顧客は主に会員ページに掲載された広告の商品の購入やサービスの登録・利用によってポイントを獲得できる(そのほか、ゲーム等の実施でもポイントを獲得できる)。一方で還元先は他社ポイントや銀行口座へのキャッシュバックなど、自社サービス外への還元が中心であるため、ポイントを一通り交換し終えてしまった顧客がそのまま休眠・解約へと移行してしまうリスクも少なからず存在する。このサービスはそういった顧客に対してポイントを保有し続けていることのメリットを提示し、利用し続ける(一定水準以上のポイント残高を保有し続ける)ことを促す効果が期待される。

 セゾンカードの利用を中心に付与される永久不滅ポイントを提供しているクレディセゾンも同様に、保有に焦点を当てている。これは永久不滅ポイントを貯め続けていて、かつ資産運用ニーズの高い顧客層に焦点を当てたサービスとなっていると言えよう。またこのサービスは擬似的な投資であるため証券口座を必要としない。証券投資に二の足を踏んでいた顧客にとっても試しやすいサービスと考えられる。

 一方で楽天やインヴァスト証券では、いずれも自社サービスである証券口座への還元となる。ポイントとしては消費されてしまうため顧客との関係が断絶してしまうように映るが、実際には現金化されて自社口座へと振り込まれることになるため、自社の預かり資産残高増加へと発展的な状態遷移を遂げている。

 このように、事業特性、ひいては提供できるサービスに違いがあるために、ポイントプログラムとしての金融系サービス形態も異なってくる。

顧客満足と自社経済圏強化の両立施策として普及

 今回取りあげたサービスは、顧客にとってのポイントの価値を利息や運用を通して高める(=顧客満足度を高める)だけでなく、顧客にポイントを貯め続ける、あるいはその原資を自社に蓄積し続けるようになっている(=自社の顧客資産規模を増大させる)点でも、今までのサービスとは一線を画している。

 ポイントの未使用残高や証券口座の預かり残高は、将来的には何らかの消費へと繋がるため、当該企業の潜在的な経済圏の規模を規定する要因にもなり得る。またこうした経済圏は電子マネーや仮想通貨など、独自のバリューを有する決済手段とも連携させることで一層拡大させることが可能になる。顧客に付与したポイントの原資を運用等で増大させ、顧客の満足度を高め、また最終的な還元先を自社(あるいは自社グループ)サービスや決済へと導くことで、その経済規模を一層拡大させる取り組みは、今後も広がっていくと考えられる。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

冨田勝己Katsumi Tomita

ICT・メディア産業コンサルティング部
上級コンサルタント
専門:マーケティング全般

注目ワード : 電子マネー

注目ワード : 仮想通貨

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