1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. アセットマネジメント
  6. 目論見書管理業務の効率化が期待できる共通プラットフォーム

目論見書管理業務の効率化が期待できる共通プラットフォーム

2018年3月号

資産運用サービス事業部 上席システムコンサルタント 古賀智子

投信業界では更なる効率化への意識が高まっている。1社では改善されにくい課題の一つが目論見書の印刷物に係る業務だ。投信会社と販売会社間での必要部数等のやりとりなど、多対多の情報交換業務に労力がかかっている。改善にむけ、関係会社皆が参加するプラットフォームが望まれる。業態を超えて共に検討する時期にきているのではないか。

効率化が求められる目論見書管理業務

 顧客本位の業務運営に関する原則を考え、投信業界でもさらなる効率化への意識が高まっている(※1)。しかし、1社で効率化を検討しても、改善されにくい課題もある。投資信託の目論見書管理に係る業務がその一つであろう。

 投資信託の目論見書とは、投資対象や運用方針、販売手数料などのファンドに関する重要な情報が記載されている資料である。特に交付目論見書は販売時に交付が必須であるが、販売方法により、Webで電子交付する投資家と、書面で交付しなければならない投資家の2種類があり、目論見書の電子ファイルと印刷物の2種類を準備しなければならない。印刷物による交付は負荷が高いが、Web交付を利用する投資家の割合はまだ低く、運用会社、販売会社双方で煩雑な事務となっている。

 目論見書の作成から投資家への配付までには、4つのステップがある。

 最初のステップは、投信会社内で行う目論見書の作成と交付準備である。このステップは、複数部署のメンバーが共同で作業する必要があり、開示可能な最新のデータ管理をファンドごとに行っていく煩雑さがあるが、投信会社内の問題のため、解決はしやすい。

 2つ目は、投信会社が複数の販売会社に目論見書をデリバリーするステップである。投信会社は、最新の目論見書ファイルを複数の販売会社にファンドの取扱状況を確認しながら配布する必要がある。もっとも厄介なのは、印刷物の場合の配送までの手続きだ。最新版ファイルの作成終了後、各販売会社に目論見書の必要部数をヒアリングし、それを印刷会社に伝え、印刷と配送を依頼する。販売会社は複数ある上に、取扱ファンドもまちまちであるため、このステップは非常に労力のかかる仕事だ。

 このステップでは、相手方の販売会社でも煩雑な業務となる。複数の投信会社から、最新の目論見書ファイルを入手し、かつ必要な印刷物の部数を、複数の投信会社にファンドごとに連絡しなければならない。

 3つ目は、販売会社内の目論見書ファイルと印刷物の管理だ。目論見書には、ファンドごとに異なる有効期限がある。さらに訂正による差替えもあり、非常に管理負荷が高い。特に印刷物では在庫管理も必要となる。配送してもらった目論見書について、在庫部数を管理し、有効期限のチェックをする。期日が過ぎていたら破棄し、再度必要部数の配送を依頼しなければならず、多数の取引相手とのやり取りが何度も発生することになる。

 4つ目は、販売会社から投資家への印刷物の配付である。各支店の担当者や本社の配送部署は、各運用会社から届けられた目論見書を顧客に郵送する。郵送代の負担も多く、配送ミスのリスクと隣りあわせだ。

課題解決のために必要な共通プラットフォーム

 4つのステップにおける課題は2つある。1つは、運用会社と販売会社の間でやり取りされる最新目論見書ファイルの一元的管理が必要なことだ。運用会社がアップロードしたファイルを複数の販売会社がダウンロードできる機能がないと、最新版を個別にメールでやり取りしなければならない。しかし、これについては既にサービスが存在する。まだまだ参加者が十分ではないが、多くの販売会社と投信会社が利用し改善に向かっている(※2)。

 2つ目は、まだ改善の糸口がない印刷物の管理に関する課題である。必要部数のヒアリングや送付の依頼という多対多の情報交換業務、その後実施すべき印刷物の煩雑なデリバリー業務は、その煩雑さ故に解決が望まれている。抜本策は、印刷物での配布がなくなることだが、現状はまだ難しい状況だ。そこで、前述の目論見書ファイル一元管理のサービスを大きく拡張し、関係各社が利用できる共通プラットフォームを構築することで、印刷物に関する業務の効率化の実現が期待できる。

 共通プラットフォームとは、投信会社、販売会社、印刷会社のすべてがアクセスできる環境である。各ファンドの取扱販売会社が管理されており、適切な販売会社のみが参照できる。各販売会社でプラットフォームに必要部数を入力すると、投信会社は印刷配送すべき部数を把握できる。印刷会社もプラットフォームを参照できれば、印刷までスムーズに作業が進む。印刷物が届くまでの時間が短縮できれば、販売会社は在庫を余分にストックする必要が減り、破棄する確率も減る。また、各ファンドの配送先の登録までもが共通プラットフォームで可能となれば、販売会社の支店や投資家にまで直接配送でき、配送コストと配送ミスのリスクも軽減できるだろう。

 しかし、共通プラットフォーム構築には、乗り越え難い大きなハードルがある。それは、関係各社のすべてが参加しないとならないということだ。参加しない会社があると、せっかくプラットフォームに参加した会社でも、参加しない会社のために新旧2種類のフローが存在することになり、効率化も遠ざかってしまうからだ。

 では、なぜプラットフォームに参加しない会社があるのだろうか。業務フローの変更に思いのほか負荷がかかる、あるいは対象ファンド数が少ないなど、プラットフォームの導入コストに比べて効果が少ないため参加を見送るケースも想定される。この場合、導入支援を充実させることや、ファンド従量制の料金体系にして小規模の会社も参加しやすいサービスを組立てる対策があるだろう。

 また、参加者が増えてから考えようと保留するケースや、グループ企業内で閉じたネットワークを作ってしまうケースも考えられる。その場合は、プラットフォームの提供側で、参加していない会社の分をシステムに手作業で代替登録し補完する案もある。プラットフォーム参加者の業務フローが二重にならないようにする対策だ。

 しかし、本来は全員参加のプラットフォームが望ましい。投信業界の効率化・合理化が求められている今、関係各社、皆が参加するプラットフォームの構築について、業態や企業グループを超えて、積極的に検討・推進していく時期に来ているのではないか。皆が協力して、資産運用業界の効率化が実現することに期待したい。

1) 投信協会でも、「ビジネス環境の整備等に係る検討小委員会」等で、業務の合理化、効率化の検討が行われている。
2) NRIでは、「FundWeb Library」というサービスを提供中。投資信託委託会社と投信販売会社間をシステム連携し、投資信託委託会社から投稿された文書を各種Webサイトに自動連携できる機能を提供している。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

古賀智子

古賀智子Tomoko Koga

資産運用サービス事業部
部長
専門:資産運用サービス企画

この執筆者の他の記事

古賀智子の他の記事一覧

このページを見た人はこんなページも見ています