1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. リテールビジネス
  6. 米国ロボ・アドバイザー利用者にみる日本での普及のヒント

米国ロボ・アドバイザー利用者にみる日本での普及のヒント

2018年1月号

リテールソリューション企画部 上級コンサルタント 東山真隆

米国ロボ・アドバイザー利用者の実態調査によると、主に、投資経験のある30~40代が中長期での積立投資にロボ・アドバイザーを利用している。日本での利用促進や運用資産拡大のためには、投資経験者の年齢分布等をもとに、顧客像やサービス内容を補完していく必要があるのではないか。

 米国におけるロボ・アドバイザー(以下、ロボアド)の2016年末時点の運用資産残高は、約830億ドルと推定され(※1)、米国の運用資産残高全体に占める割合はまだ小さいものの、成長市場の1つとして注目されている(※2)。また、日本の金融機関においても、FinTechや「貯蓄から資産形成へ」の推進施策として、2016年頃より自社開発やFinTechベンチャー等との提携によってロボアドの提供が進められており、今後は、ロボアドの利用促進や運用資産の拡大に重きが置かれると予想される。

 そこで、市場成長が先行している米国において、個人投資家がロボアドをどのように利用しているかを把握するため、野村総合研究所は2016年9月に米国でインターネットアンケート調査を実施した(※3)。なお、ここでいうロボアドとは、米国で最も一般的な、個人顧客を対象に非対面で提供されるセルフ・プロファイリングと分散ポートフォリオによる自動運用を組み合わせた投資一任運用サービスを指す(※4)。

投資経験のある30~40代を中心に、中長期での積立投資にロボ・アドバイザーを利用

 米国においてロボアドは、一般に、小口投資家や人口の多いミレニアル世代(※5)を主な顧客ターゲットとして、操作の容易さや手数料の低さなどを差別化要素にサービスを提供している。アンケート調査でも、ロボアドで投資一任運用を行った人の年齢は、30代と40代が約6割を占めており、比較的若い人を中心に利用されている傾向が伺えた。また、ロボアドで投資をした決め手は、「オンラインで手軽に利用できる(20%)」、「手数料が安い(15%)」、「シンプルで使いやすい(10%)」であった。

 ロボアドを利用する前の投資経験をみると、投資経験者が87%と圧倒的に多いことが分かった(図表1)。ロボアドというと投資未経験者向けというイメージもあるが、必ずしも未経験者が利用しているわけではないようだ。これは、ベターメントをはじめとするロボアドの新興企業が、既存の金融機関から運用資産シェアや顧客(主に個人投資家)の奪取を図ってきたことに加え、2015年と16年に大手金融機関であるバンガードとチャールズ・シュワブが参入し、既存顧客への提案や401(k)を中心とした確定拠出年金事業からの誘導を通じて、市場成長を牽引していることが主な理由と考えられる。

 ロボアドで投資一任運用を行っている人が想定する運用期間や運用資金の拠出方法にも特徴がみられた。米国のロボアドの多くは、セルフ・プロファイリングの際に運用目的(ゴール)の設定を行うが、主に「退職後の生活費(47%)」や「子供の教育費(20%)」といった中長期的なゴールを意識している人が多いこともあり、想定運用期間は「10年以上(23%)」が最も多く、約6割が3年以上であった(※6)。

 また、ロボアドへの運用資金の拠出方法では、積立投資を利用している人が多く、「積立投資のみ(40%)」、「一括投資と積立投資の両方(18%)」を合わせると、約6割が積立投資を行っているとの回答であった(図表2)。確定拠出年金を通じた積立投資が米国で普及していることの影響も大きいが、ロボアドにおいても、セルフ・プロファイリング時に毎月の積立額の設定を行いシミュレーション等に反映させることはもちろん、口座開設時に自動振替での積立を提案したり、アカウント・アグリゲーションによる銀行預金口座等の一元管理を通じた入金処理の簡便化や、おつりの端数を四捨五入した金額を積立投資する仕組みなど(※7)、様々な工夫がみられる。

途中離脱防止のカギは、人を介したアドバイスやサポート・ニーズへの対応

 一方、ロボアドにアクセスしたものの、投資には至らなかった人もいる。アンケート調査では、その主な理由(複数回答)として「ファイナンシャル・アドバイザーと相談してから投資したい(26%)」、「オンラインではなく、人を介して取引したい(21%)」、「提案されたファイナンシャル・プランやポートフォリオが理解できない(17%)」が上位に挙がっていた。途中離脱者は人を介したアドバイスやサポートを求めていることが伺える。

 近年、バンガードやチャールズ・シュワブ、ベターメントなどの主要各社はこうした潜在顧客のニーズに対応するため、「ハイブリッド型」と呼ばれる、従来のロボアドに加えてビデオチャットを通じてコールセンターにいる営業員がファイナンシャル・プランニングなどのアドバイスを行う新しいロボアドの提供を開始しており、今後の動向が注目されている。

わが国の金融機関への示唆

 アンケート調査より、米国においてロボアドは、投資経験のある30~40代を中心に、中長期での積立投資のために利用されていることが推察される。

 現在、日本の金融機関では、ロボアドを投資未経験や初心者の若年層にアピールしている例が多く見られる。米国の状況をみると、今後、ロボアドの利用促進や運用資産の拡大を図る上では、投資経験者をターゲットとして、その年齢や人口分布等をもとに、顧客像やサービス内容を補完していく必要があるのではないか。たとえば、団塊ジュニア世代や定年退職を意識し出す50代前半の世代など、やや年上の人たちに対して、老後に向けた積立投資による資産形成や、老後の資産取り崩しのためのファイナンシャル・プランニングを「ハイブリッド型」のロボアドも活用して提供するなど、日本の特性を踏まえて顧客像を具体化し、それらの人たちの潜在ニーズに対してサービス内容を補完していくことが求められよう。

1) セルリ・アソシエイツによる試算。同社は、米国のロボアドの運用資産残高が2021年末までに約3,850億ドルに拡大すると試算している。
2) 米国におけるロボアドの動向の詳細については、金融ITフォーカス2015年3月号「米国のロボ・アドバイザーによるヒトとの競争と共生」2015年11月号「ロボ・アドバイザー2.0を超えて」2017年2月号「二種のハイブリッド型ロボ・アドバイザーの侵攻」参照。
3) ニューヨーク州またはカルフォルニア州に在住の20歳~69歳の男女4,266名を対象に実施し、個人投資家向けに非対面で提供されるロボアドの利用者265名(うち136名はロボアドによる投資一任運用を契約中)から回答を得た。
4) 日本では、投資一任運用だけでなく、分散ポートフォリオと該当する投資信託の提案のみを行うサービスもロボアドに含めることが多い。
5) 一般的に、1980年から2000年に生まれた世代を指す。米国で最も人口が多い世代で、米国人口の約4分の1を占める。
6) ロボアドでの想定投資期間の回答は、「1年以下(6.6%)」、「1~3年未満(22.1%)」、「3~5年未満(17.6%)」、「5~10年未満(16.9%)」、「10年以上(22.8%)」、「特に決めていない(14.0%)」であった。
7) ベターメント、シグフィグ、エイコーンズなどの例。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

東山真隆

東山真隆Masataka Higashiyama

リテールソリューション企画部
上級コンサルタント
専門:リテール金融

注目ワード : FinTech(フィンテック)

注目ワード : ロボ・アドバイザー

このページを見た人はこんなページも見ています