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拡大するオルタナティブ・ファイナンス市場

2017年12月号

ビットリアルティ株式会社 取締役 谷山智彦

クラウドファンディングに代表されるように、インターネットを通じて投資家と資金調達者を直接マッチングする金融手法が世界的に急拡大している。伝統的な金融システムとの対比から、これらは「オルタナティブ・ファイナンス」とも呼ばれ、日本でも今後、不動産の投資型クラウドファンディングを端緒として新しい金融市場が登場する可能性がある。

世界的に広がるオルタナティブ・ファイナンスの動き

 近年、オルタナティブ・ファイナンスという言葉を耳にするようになった。一般に、オルタナティブと聞くと、プライベート・エクイティや不動産ファンド等の「オルタナティブ投資」を思い浮かべることが多いが、テクノロジーを活用した代替的な金融手法として「オルタナティブ・ファイナンス」に注目が集まっている。

 オルタナティブ・ファイナンスとは、インターネット上のオンライン・プラットフォーム等を通じて、資金提供者(投資家)と資金需要者を直接マッチングさせることで、伝統的な金融システムを補完する複線的な金融システムを構築する動きである。代表例としては、クラウドファンディングやP2P(Peer to Peer)レンディング、ソーシャル・レンディング等があり、図表1に示すように、これら代替的金融手法が世界的に急拡大している。特に英国、米国、そして中国の市場規模が急速に拡大しており、従来の間接金融を中心とした金融システムに限らない新しい金融市場が誕生しつつある。

 ただし、現在の日本で「クラウドファンディング」と聞くと、地方創生等の特定プロジェクトへの寄付や、ニッチな新製品を発売前に応援して購入する仕組みというイメージが強いのではないだろうか。しかし、それら寄付型や購入型のクラウドファンディングは、金融商品取引法等の規制の対象外であり、実はオルタナティブ・ファイナンス市場全体のわずか数%に過ぎない。大部分のオルタナティブ・ファイナンスは、株式や債券、投資ファンド(匿名組合出資)等の有価証券を、金融商品取引業者が運営するオンライン・プラットフォーム上で募集(もしくは私募の取扱い)を行う仕組みである。

一定の割合を占めるまで拡大してきた代替的金融手法

 それでは、これらのオルタナティブ・ファイナンス手法は、どの程度まで伝統的な金融システムを補完、もしくは代替するようになってきているのだろうか。図表2は、英国におけるシェアの推移を示したものである。

 2015年には、P2Pレンディングによる事業融資は小規模企業向け新規融資の13.9%、株式型クラウドファンディングはベンチャー投資の15.6%に相当するまでに拡大している。わずか3、4年で従来の金融システムの一定割合を占めるまで成長しており、企業の資金調達手段として決して無視できない規模にまで拡大しつつある。

 さらに、資金提供者の機関化も顕著である。機関投資家が資金提供者として参画しているプラットフォームは、2013年には全体の11%だったが、2015年には45%にまで拡大した。2015年のP2Pレンディングによる調達額の約2、3割は機関投資家となっており、個人だけではなく、機関投資家にとっても魅力的な投資先となりつつある。

日本でも拡大が期待される不動産のオルタナティブ・ファイナンス市場

 英国や米国等で、オルタナティブ・ファイナンス市場が急拡大した契機となったのは法改正である(※1)。そして日本でも、従来は寄付型や購入型が中心だったクラウドファンディングから、金融的なオルタナティブ・ファイナンスを可能とする環境整備が、特に不動産分野を中心に次々と進められている(※2)。

 従来、個人がオルタナティブ投資として、例えば不動産を自らのポートフォリオに組み入れたいと思った場合、大口資金を用意してマンションやアパート等の実物不動産を購入し、自ら賃貸経営を始めるか、株式市場との相関が強く、日々の価格変動リスクが存在する上場REITに投資するしか手段がなかった。しかし今後は、機関投資家による私募ファンドや私募REITへの投資と同等のオルタナティブ投資手段として、小口化された非上場の不動産金融商品を、個人でもインターネットを通じて気軽に資産ポートフォリオに組み入れることが可能になる。日本においても、テクノロジーを活用した新しい資金調達手段と投資機会を提供するプラットフォームが数多く登場し、不動産分野のオルタナティブ・ファイナンス市場が拡大する可能性が出てきている(※3)。

個人の資産運用に「本当のオルタナティブ投資機会」を

 それでは、日本でもオルタナティブ・ファイナンス市場が登場することで、どのような変化があるのだろうか。

 まず、資金需要者にとっては、銀行融資や株式上場等の従来の金融手法に縛られることなく、多様で幅広い資金調達が可能となる。資金調達手段が分散化・柔軟化されることで、潜在的な資金ニーズの顕在化や、より安定的な事業運営が可能となるだろう。

 そして、資金提供者(特に個人投資家)にとっては、初めての「本当のオルタナティブ投資機会」となり得る。上場市場や他の資産クラスの影響を比較的受けず、日々の価格変動によるキャピタルゲインではなく、賃料収入等の安定的なインカムゲインを重視した金融商品は、本当のリスク分散効果をもたらす可能性がある。当然、流動性リスクには留意すべきだが、長期投資の観点から過度に換金性を求めない投資家にとっては、それに応じたリスクプレミアムも期待できるだろう。

 今後、日本においてもオルタナティブ・ファイナンス市場が拡大し、資金調達手段と資産運用手段の分散化と多様化が進展することを期待したい。

1) 米国では2012年にJOBS法が制定され、英国では2014年に金融行為監督機構(FCA)によって株式型クラウドファンディングの新たな規制が導入された。
2) 投資型クラウドファンディングを可能とする金融商品取引法の改正(2014年)や、インターネットを通じた不動産投資を可能とする不動産特定共同事業法の改正(2017年12月施行)等がある。
3) 野村総合研究所は、国内最大の独立系不動産アセットマネジメント会社であるケネディクス株式会社と合弁で、不動産の投資型クラウドファンディング事業を運営するビットリアルティ株式会社を設立した。
https://www.nri.com/jp/news/2017/170810_1.aspx

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

谷山智彦Tomohiko Taniyama

ビットリアルティ株式会社
取締役
専門:オルタナティブ投資