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投資型クラウドファンディングの現状と課題

2017年11月号

未来創発センター 主席研究員 大崎貞和

投資型クラウドファンディングの活用を促す法改正から2年以上が経過した。投資ファンド形態のファンドが一定の拡がりをみせている半面、投資家保護の観点からの懸念も残されている。

拡がるクラウドファンディング

 研究者やベンチャー企業から慈善団体やアーティストに至るまでの様々な資金需要者が、インターネットを通じて多数の資金提供者から少額ずつ資金を集めるクラウドファンディングが活発化している。資金集めに関する情報を掲載するサイト(ファンディング・ポータル)が、日本語でもいくつも開設されている。

 クラウドファンディングには、資金提供の見返りに何が与えられるかで、①株式や債券などの有価証券を出資者に交付したり匿名組合出資の形で資金を集めたりする投資型、②資金提供の見返りに商品やサービスを提供する購入型、③特段の見返り提供を前提としない寄付型、の三つの類型に分けられる。

 これらのうち投資型については、株式や債券の発行であれば第一種金融商品取引業者(証券会社)の登録を受けた者が仲介する必要があり、金融商品取引法(金商法)のディスクロージャー(情報開示)規制の適用を受ける場合もあるなど規制が厳しく、国内での円滑な実施は難しいと指摘されていた。

新規参入を促す規制緩和

 そこで2014年の金商法改正で、発行価額の総額1億円未満、投資家1人当たりの払込額50万円以下のクラウドファンディングだけを取り扱う業者について、新規参入を容易にするための規制緩和が行われた。

 証券会社の自主規制機関である日本証券業協会や投資ファンド販売業者の自主規制機関として2010年に設立された第二種金融商品取引業協会もクラウドファンディングに関する自主規制ルールを整備した。

 改正法は2015年5月29日に施行され、既に2年以上が経過した。規制緩和を受けた新規参入もみられ、2017年7月末時点で、クラウドファンディングを取り扱うとして登録を受けている第一種業者は5社、第二種業者は15社となっている。

 投資ファンド形態のクラウドファンディングについては、インターネットのみで完結する電子募集型の取扱い状況が集計されている(図表参照)。一方、株式形態でのクラウドファンディングは、2017年5月に初の事案が現れ、これまでに数件が実施されている。

クラウドファンディングの課題

 2014年の法改正の狙いは、新規・成長企業へのリスクマネー供給の拡大だとされた。すなわち、創業間もないベンチャー企業が、クラウドファンディングを通じて幅広い投資家層からの出資を募ることで、「死の谷」と呼ばれるような倒産の危機に陥ることを回避できるようになるものと期待されたのである。

 しかし、クラウドファンディングでは投資家1人当たりの払込額は50万円以下に制約されるので、1億円弱の資金調達で200人もの株主が発生することとなる。将来の株式公開を目指すベンチャー企業の場合、反社会的勢力による株式の取得がないことを確認するといった上場審査時の手続を念頭に置けば、多数の株主を発生させるファンディングは現実的な資金調達手段ではないとの指摘が当初からあった。改正法施行後2年強を経て実施が数件という実績をみる限り、そうした見方は的確だったように思われる。

 一方、金商法による規制の射程外に置かれている購入型や寄付型のクラウドファンディングについては、全体像を示す統計は見当たらないものの、1件で9,400万円余りの資金調達に成功した事案が報じられるなど、一定の成功を収めているようである。

 また、投資型の一類型である投資ファンド形態でのクラウドファンディングについても、投資ファンドの販売に必要な第二種金融商品取引業の登録規制が比較的緩やかであるといった事情もあり、先に触れた第二種業協会が集計しているファンドだけで300本を超えるなど、活発に利用されているようである。

 もっとも、投資ファンド形態のクラウドファンディングについては、市場の拡大を手放しで喜べないようにも思われる。

 例えば、投資ファンド形態で行われるクラウドファンディングの中には中小企業などが事業資金を個人から募るソーシャルレンディングと称するものがある。1年未満の運用期間で、年率8%から10%といった高い予想利回りを提示したファンド募集が行われていることもあり、超低金利に悩む個人投資家の関心も高い。しかし、募集時に提供された資金使途や貸付先の数等に関する情報が事実と異なっていたなどとして複数の仲介業者に対する行政処分が行われるなど、投資家保護の観点から不安を感じる面がある。

 株式や債券とは異なり、投資ファンドについては情報開示に関する詳細な規制が及ばない上、監査人など第三者によるチェックも十分とは言えない。もちろんリスクを伴う投資は自己責任というのが基本原則であり、過剰な規制が自由な経済活動を萎縮させてはなるまい。とはいえ、詐欺的な行為を排除できないのでは、クラウドファンディングという仕組みそのものに対する信頼が損なわれる懸念もある。

 既に、第二種業協会が2018年から新たな自主規制ルールを適用することを決めるといった動きもある。投資家に信頼される市場の構築を期待したい。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

大崎貞和

大崎貞和Sadakazu Osaki

未来創発センター
主席研究員
専門:証券市場論

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