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海外トピックス

2017年10月号

金融ITイノベーション事業本部 國見和史

・英FCAが資産運用市場の改善策を公表、EU規制の施行も念頭に
・米SEC、ICOは証券法の適用対象になり得ると警告

英FCAが資産運用市場の改善策を公表、EU規制の施行も念頭に

 英国の金融行為監督機構(FCA)は6月、約一年半にわたった資産運用市場調査の最終報告書を公表した。調査では、資産運用市場で競争原理が働いているか、投資家は支払った金額にふさわしい価値(VFM)を投資商品から得ているかという観点で広範な分野を点検。昨年11月に公表した中間報告書に対する関係者の意見を反映させながら、改善策パッケージを示した。

 改善策は多岐にわたるが、中でも、1)ファンドガバナンスの向上、2)投資目的の明確化、3)手数料の透明化、に向けた施策は示唆に富む。

 1)が課題とされた背景には、ファンドマネジャー(AFM:資産運用会社グループの子会社の場合も多い)は投資家の最大利益を図ることが義務付けられているにもかかわらず、ガバナンスを司る取締役会がその役割を十分に果たしていないとの結論に至ったことがある。最終報告書ではAFMに対して、①投資家にVFMを提供できているか評価を行い年一回以上報告すること、②取締役会に2名以上の独立取締役を任命することを義務化することを提案。と同時に、すべての金融機関を対象としてFCAが導入を準備している、シニアマネジャーの個人の責任を強化する新規制(SM&CR)の中に、取締役会会長の責任として、AFMに投資家の最大利益のために行動させることを盛り込むことも提案した。

 2)では、ベンチマークを投資目的の説明などにおいて適切に活用するための提案が興味深い。中間報告書ではすべてのファンドにベンチマークを設定させることも検討された。しかし最終報告書では、①現時点ではその必要はないとしつつ、②ベンチマークを設定しない場合には、その理由を投資家に説明するよう求め、マーケティング資料にいかなるベンチマークの使用も認めない、とする方針が示された。

 3)では、中間報告書で注目された、投資家が実際に負担するファンドのコストを単一の「オールイン手数料」で示すよう求める提案が最終報告書では見送られた。代わりにFCAは、来年1月に施行されるEUの第二次金融商品市場指令(MiFID II)やパッケージリテール商品(PRIIPs)の開示規制によって手数料やコストが従来より明確にされるため、むしろこうした開示の効果を高めるための方法を検証するとした。これらEU規制でも、ポートフォリオの「取引コスト」など間接コストは開示され、全体のコストや投資リターンへの影響も把握しやすくなる。

 今回の改善策パッケージでは、中間報告で検討された野心的な案の多くが見送られた。また上記のようにEU規制を改善策の一部と位置づけた分、業界は新たな負担を免れる格好になった。しかしFCAでは報告書に基づき、今後も提案を諮問したりワーキンググループを主催したりする計画を進めており、引き続きその動向が注目される。

米SEC、ICOは証券法の適用対象になり得ると警告

 米証券取引委員会(SEC)は7月、「ICO(イニシャルコインオファリング)」、「トークンセールス」などと呼ばれる、ブロックチェーン技術を用いたトークンの勧誘、売付けは連邦証券法の適用対象となり得る、と市場参加者に注意を喚起する調査報告書を公表した。SECは報告書で、昨年、ドイツ企業Slock.itが立ち上げたバーチャル組織、The DAOの発行したトークンについて分析し、同トークンが証券に該当し発行者のThe DAOはSECへの発行登録が必要だったと述べた。

 ICOは、ブロックチェーン技術を用いたプロジェクトなどの資金調達のため、プロジェクトの支持者らに対して仮想通貨や法定通貨と交換で独自のトークンを発行するもの。トークン保有者は、プロジェクトで構築するプラットフォームへのアクセスやアプリの利用などの権限を得られる。中には、プロジェクトの利益の一部を受け取ることができたり、プロジェクトの意思決定に参加する投票権を持つトークンもある。

 ICOによる資金調達は昨年から徐々に活発化。今春以降は大型案件が相次ぎ、調達金額が2億ドルを超える案件も登場した。今年上半期のICOによる総調達額は12億ドルを超え、同時期のベンチャーキャピタルによるブロックチェーン企業への投資額を上回ったという。一方で、ICO市場が過熱する中、プロジェクトの質は玉石混交で詐欺案件も多く、規制の枠組みが明確でないこともあり関係者の間では懸念が高まっていた。

 今回の報告書でSECは最高裁判例に基づく有名なHoweyテスト(投資が利益を期待したものか、利益は発起人や第三者の努力によるものか、など)に照らして、The DAOのトークンが証券法上の「証券」の中の「投資契約」に該当すると判断した。同時に、ICOが証券の勧誘、売付けに当たるかどうかは案件ごとに状況に応じて判断することを強調し、こうした新技術を利用した場合でも従来の基準を適用する姿勢を示した。

 今回のSECの対応について、業界では予想の範囲内と見る向きが多く、驚きは小さかったようだ。実際、Howeyテストを意識してICOを設計する動きは広まりつつある。例えば、証券に当たる可能性が高いと判断された案件では、証券法の登録義務を回避するため、登録免除規定を活用して投資家を適格投資家や海外投資家に限定するなど工夫が試みられている。

 各国の規制当局がICO市場への警戒を強める中、SECも投資家に注意を促しつつ、証券法に違反する案件に厳しく対処する姿勢を強めている。業界でも、当局の関与は市場の成熟化につながると前向きに捉える向きは多い。無秩序に拡大してきたICO市場がいかに成熟化するか注目される。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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導入事例

國見和史Kazushi Kunimi

金融ITイノベーション事業本部
コンサルタント

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