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RPA導入にかかる検討課題と解決に向けたアプローチ

2017年9月号

金融デジタル企画一部 上級研究員 片岡佳子

国内企業において、RPAが一種のブームとなっているが、導入検討時には、いくつかの課題に直面することが多いようだ。その解決には、組織内におけるRPAの位置づけを整理する事が重要である。

急速に拡大するRPAと共通する課題

 業務効率化のためのロボット、いわゆるロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)は一種のブームといえる。比較的取組みの早かった金融機関のみならず、2016年末以来、物流等幅広い業態において、RPAの導入効果を検証するための実証研究(POC:Proof of Concept)が多く実施されている。

 RPAの最大の利点は、従来型のシステム開発と比較すると導入が容易であり、安価かつ迅速に成果が得られることにある(※1)。こうしたメリットからPOCの結果は前向きに受け止められ、これまでのシステムでは考えられないほど短期間に本番環境への適用も始まった。しかしながら、RPA特有の導入ハードルの低さは、その導入目的や位置づけ等に関する組織横断的な議論が十分になされないままに検討が進みやすいという傾向にも繋がっているようだ。その結果、本格的な適用検討段階に入るといくつかの課題に直面し、検討が思うように進まないという話が聞かれる。

 そうした課題のひとつとしてPOC後にまず直面するのが、適用対象業務をどのように選定するべきかという議論である。本格的にRPAを導入するにあたり、適用対象業務を選定する必要があるが、その際、非効率ではあるが利用頻度や担当者はさほど多くない業務も対象とするのか、あるいは、利用頻度が多くかつある程度の人数を割いている業務のみを対象とするのか、といった点が一つの論点となる。RPA導入の効率性や、ロボットの乱立防止、管理負担軽減の観点からは、利用頻度の高い業務のみを対象とする事が望ましい。一方で、現場において非効率性が高いのは、異なる種類のルーティーン作業を少人数で行うような少量多品種型の業務であり、RPA導入の目的とされる場合が多い業務効率化・働き方改革という観点からは、これを対象としなければ十分な成果は得られないという声もある。何を基準にRPA化の是非を判断すればよいのか、というジレンマである。

 また、どの程度RPAを管理するべきかという問題もある。RPAが操作するシステムが変更された場合に、その影響をどう管理するのか、誰がRPAの業務を監督するのか、といった従来からの課題に加え、足元ではRPAが実施する業務のコンティンジェンシープラン検討や、システムリスクとしての管理の必要性が指摘され始めている(※2)。

 管理を厳格化するほど、結果的に導入負担や運営コストも高くなりRPAの利点を相殺しかねない。そこで生じるのが、導入から導入後の管理にかかるコストも含め、そもそも費用対効果をどのように評価するべきか、という問いである。RPAの導入が先行している欧米では、業務効率化を通じた人員削減による短期間でのコスト削減効果を基準に評価される場合が多い(※3)。しかし日本では、企業文化的に直接的な人件費削減を目指しにくく、成果を計る期間や基準が曖昧になりがちである。そのため、RPA導入、運用、管理にかかるコストの妥当性を評価することが難しくなっている。

RPAで何を目指しどう位置づけるか

 こうした課題に対する対応策として当初よく聞かれたのは、RPAをEUCの一種と割り切り、従来から存在するエクセルマクロの進化系のようなものとして扱う、というアプローチである。この背景には、RPAが多くの場合、現場部署に評価され、その要望により導入が検討されてきた事がある。現場部署では、その利点を最大限生かし、簡易なかたちで安価かつ短期的に業務を効率化させることが望まれるため、あくまでも便利ツールとしてRPAを用いるという考え方がとられた。こうした考え方の下では、ユーザーの要望に応じて少量多品種業務もRPAの適用対象に含められる。また、導入・管理も現場主導とされることが多いため、導入のごく初期の段階においてのみコンサルティング会社やRPAプロバイダー等に業務を委託し、あとは自走することが目指される。RPAのソリューション選定時にも、価格やRPAのワークフロー設定の容易さなどがより重視される傾向にあるようだ(※4)。

 しかしこうした考え方の下では、それぞれの現場単位での成果は意識されるものの、包括的目線・中長期的目線でのRPAの位置づけや導入方針の検討、IT部署との連携が不十分になりがちという問題がある。こうした点を踏まえ、足元で増えてきているのが、RPAをシステムの一部と捉え、既存システムのライフサイクル管理の枠組みに沿って導入・評価を行うアプローチである。例えば、ある金融機関では、POCの結果を受け全社的なRPA導入を決定、それに伴いRPAをIT部門の所管とする方針を決定し、IT部門を中心としたRPA専門チームの設置を進めている。この中では、管理や機能の観点から、IT部門がRPAのベンダー選定等を行うだけでなく、RPA導入対象業務の選定や、システムとしてRPAの運用リスクを集中管理する事も検討されている。

 こうした整理のあり方は、RPAにおいて先行している欧米に近い。例えば、ある大手米系金融機関では、全ての拠点におけるRPAのツール及び導入対象プロセスの選定、導入支援をITオフショア拠点が一括して実施している。この結果、RPAの導入・管理が組織全体で標準化されるばかりでなく、ノウハウが蓄積されるため他拠点での成果を別の拠点に転用する事も可能となっている(※5)。また別の動きとして、金融機関の既存システムのプロバイダーが、簡便な既存システムの不便解消・エンハンス手法のひとつとしてRPAを提供する動きも出てきているようだ。この場合、従来の体制に基づいてRPAが構築・管理されることになる。

 このようにRPAを従来のシステムと同じ枠組みに位置づける事で、前述したような課題の整理が容易になる。もちろん、このアプローチの下ではRPA導入の柔軟性は低下する事になるが、一度導入してしまうと撤去が困難であることを念頭におけば、こうした中長期的目線に立った体制やフレームワークの構築は不可欠と言えるだろう。

 POCを実施する際に、価格や機能性、他社事例など単純なツール比較に陥っているケースは少なくない。しかし真っ先に検討されるべきなのは、本番運用を視野に入れた、組織横断的・中長期的な観点でのRPAのあるべき姿なのではなかろうか。今後、RPAを用いた業務システム全体のあり方に関する議論が益々深まっていく事が期待される。

1) RPAの特徴については、金融ITフォーカス2017年5月号「適用可能性が高まる業務効率化ロボット・AI」参照。
2) 金融ITフォーカス2017年7月号「FinTechに戸惑うリスク管理」参照。
3) 副次的な効果として、業務の正確性向上やモニタリングが容易になる点なども意識されているが、評価はFTE(フルタイム勤務換算人数)がどの程度削減されたか、で語られる場合が多い。
4) 実際には、当初想定されたほどツールの操作が容易ではなく複雑な業務への導入ができないという声は少なくない。また、こうしたアプローチを取る場合ほど、RPAソリューションにモニタリングや管理ツールがきちんと備えられ、最低限の管理が容易にできる事が重要になるが、部署ごとの検討が中心となるためか、そうした点はあまり意識されない場合が多い。
5) 従来のBPOサービスプロバイダーが「RPA専門集団」となり、金融機関の業務をRPA化前提で一括して受託するビジネスモデルも生まれている。サービスプロバイダーは、ワークフローの設定ノウハウ、管理ノウハウ等を生かし、RPAの導入成果にコミットしている。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

片岡佳子

片岡佳子Keiko Kataoka

金融デジタル企画一部
上級研究員
専門:金融関連ソリューション企画

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