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資産運用業界におけるBPOの最新動向

2017年9月号

資産運用サービス事業部 グループマネージャー 古賀智子

投信業界がアウトソースする業務範囲は、この5年間で、入力代行から、判断業務も含めたアウトソースへと変化してきている。また、業務の一部をアウトソースする「部分アウトソース」への注目も集まってきており、BPOも様々な形を見せてきている。

投信業界のアウトソース業務範囲は拡大傾向

 資産運用業界でのBPOは、1997年、信託銀行が受託業務のかたわらで、投資信託会社の基準価額算出の入力代行業務を行うようになったことから始まった。この代行業務は「事務受任サービス」と呼ばれ、投信事業が免許制から許可制になった後に設立された多くの投信会社が利用することになった(※1)。

 2014年から、長年、自社のバックオフィスで基準価額算出業務を行っていた大手資産運用会社も、グループ会社の信託銀行などにアウトソースするようになり、業界における基準価額算出業務のBPOの割合はさらに高くなっていった。現在、基準価額算出業務をアウトソースしている資産運用会社の割合は63%にのぼる(図表1)。

 このような中、この5年で、重要な判断の必要な業務をもアウトソースする運用会社が増加している(図表2)。

 その一つが、職人技と思われていた法定レポート作成業務のアウトソースである。投資家に運用実績を半期に1度報告する「運用報告書」作成業務は、投信業務知識を幅広く必要とし、その知識に基づくチェックや判断事項も多岐にわたっており、熟練の技が必要と考えられてきた。ミスが許されないゆえ社内の達人に頼りきりとなり、人材育成が課題であった。しかし、作成手順とチェック基準を詳細に定義した規定書を作成することで、専門職を擁するベンダーであれば、アウトソースが可能となった。業務ノウハウのある人材を継続的に雇用し続けなければならないという心配から開放されるメリットから、この5年でアウトソース率が大幅に伸びており、現在38%の会社がアウトソースを実施している。このほか、有価証券報告書のEDINET報告業務や、販売会社に定期的に運用実績を報告する週月報レポートも同様に増加傾向にある。

 もう一つは、データプロセッシング業務をアウトソースするという変化だ。現在はまだ実施している運用会社は25%に留まっているが、これも増加傾向にある。この業務は基準価額の算出に必要なデータを、入力前にクレンジングし、確定する業務だ。このデータは基準価額算出の基礎となるものであり、基準価額を正しく計算するには100%正確である必要がある。この業務には、ブローカーとの約定結果の精査と確定、銘柄属性の整備、当日の時価を複数ベンダーと比較して評価時価を確定する作業などが含まれる。これらの情報は、基準価額の正確性に大きく影響を及ぼし、会社としての的確な判断が必要な業務であるため、自社で作業するのが主流であった。しかし、入力代行だけをアウトソースしても、この判断業務をアウトソースしなければ人件費削減など本当の意味でのBPOメリットが得られないという認識が広まり、少しずつ増加してきているのだ。

注目が集まる「部分アウトソース」

 BPO業務の拡大とともに、最近設立された資産運用会社では、業務を「フルアウトソース」することが主流となっている。運用部門だけあれば事業運営ができることを目指し、可能な限りすべての業務をアウトソースするという考え方だ。

 その一方で、「部分アウトソース」と呼ばれる方式に注目が集まっている。アウトソースといえば、業務にあたってきた社員を業務とともにアウトソース会社に移籍させるやり方を想像する人も多いだろう。部分アウトソースは、現在従事している社員を支援するアウトソースだ。

 たとえば、運用報告書の2分冊化の制度改正があった際、運用報告書作成部署のメンバーの増員が必要となった。専門職をすぐに雇用できればよいが、そうはうまくいかず、このままだと社員の残業が大幅に増加することが予想された。そこで、制度改正により追加となった仕事だけをアウトソースする方式を取ることにしたのだ。また、ベテランの女性社員が産休に入る場合、代替職員が簡単には見つからず困ることもあるだろう。その場合も、産休期間のみアウトソースすることができ、女性職員も気兼ねなく子育てに専念できるのではないか。

アウトソース実施時の注意点

 BPOを行うことには多くのメリットがあるが、以下に挙げるような注意点もあるため、対策が必要だ。

 第1に、社内に業務ノウハウがたまらず、業務知識の空洞化の危険性がある。それを避けるには、投信業務の研修機能を充実させることが必要だ。たとえば、投信の基準価額算出業務には独特なルールがある。法律や投信協会の発行する定款諸規則集に記載のあるものもあるが、慣習で決まっているものも多い。新ファンドの組成時や制度改正時には、こうした知識が必要不可欠となる。BPOベンダーに定期的に研修を行ってもらうことで、社内にその知識を保つことが大切だ。

 第2に、フィデューシャリー・デューティーを果たしつつ、ベンダーに任せられる体制を整備することだ。管理だけするつもりが、BPOベンダーからの確認依頼が何度もあり、結局社内で作業するのと同じとなり、コスト削減が見込めない失敗例もある。失敗しないためのポイントは、ベンダーがアウトソース業務を業務内容規程書で詳細に定義できているか、作業進捗を投信会社側と共有できるプラットフォームがあるか、品質向上のためのKPIを設けて対策するなど問題が発生した場合の再発防止策がとれているかだ。管理の負荷を極力必要としないスキームが充実しているBPOベンダーを選定することが肝要だ。

 自社の目的にあった形のBPOを適切に適用することで、より効率的な事業運営を行うことが可能になる。そして、これからの日本に必要な「働き方改革」にも繋げられるのではないか。

1) NRIでも、2009年、NRIプロセスイノベーション(NRI-PI)を設立。多くの資産運用会社の基準価額算出業務のアウトソースを実施している。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

古賀智子

古賀智子Tomoko Koga

資産運用サービス事業部
グループマネージャー
専門:資産運用サービス企画

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