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鹿児島銀行様が、自行運用のシステムをNRIへアウトソースし、運用負荷軽減と本来業務への集中を実現

2017年6月号

株式会社鹿児島銀行様(以下「鹿児島銀行」、敬称略)は融資支援システム「KeyMan」の基盤・運用を全面的にNRIへアウトソースすることを決定した。準備期間を経て、2016年8月7日、その運用が開始された。

 鹿児島銀行では、融資業務を効果的・効率的に遂行するためのシステム「KeyMan」を開発し、2002年に稼動させた。これは、営業、事務、管理など融資に係る全業務の情報を一つのデータベースに集約したもので、融資支援のみならず、経営管理ツールとしても活用できるシステムである。2010年には、「KeyMan」を他行にも展開するため「共同利用型KeyMan」の運用を開始し、現在鹿児島銀行を含む4行が利用している。

 鹿児島銀行は「地域にとって“なくてはならない”銀行」をビジョンとして掲げており、融資業務はまさしく、地元企業を支援し成長へと導く要である。その融資業務のクオリティを高めたいという思いから開発した「KeyMan」を、ビジョンを同じくする地域金融機関にも是非とも利用して欲しいと考えている。他行に利用してもらうことで、KeyManにより多くの知恵が結集し、より進化したものになることを期待しているのである。

 しかし、この思いとは裏腹に、鹿児島銀行のKeyMan運用の負担は増すばかりであった。

自行でシステムを抱え続けることの負担

 鹿児島銀行に重くのしかかる負担の要因は、大きくKeyManの「システム構成」と「運用保守」に分けられる。

<システム構成が要因となる負荷>

 KeyMan用のサーバ設備は外部委託先のデータセンターに設置され、同一構成のサーバ設備が各銀行向けに並列する構成となっている。そのため、KeyManは利用行を追加するたびに複製構築する必要があり、基盤調達や環境構築は鹿児島銀行が請負うことになっていた。

 また各行で共有する認証基盤、運用監視、バックアップ、ウイルス対策といった機能は、鹿児島銀行のKeyMan共同化推進室にて統制・管理しているため、例えば、KeyManにおけるデータ量が増加すると、データベースやファイルシステムの拡張といった作業も鹿児島銀行に発生していた。


池田 泰臣氏

<運用保守が要因となる負荷>

 基盤関連の運用保守全般や資産調達管理は鹿児島銀行のKeyMan共同化推進室が集中的に行っていた。システムを構成するハードウェア、ソフトウェア、ネットワークには多くのベンダーが関わっている。障害が発生すれば、どこに原因があるのか、どのベンダーに調査を依頼すべきかも鹿児島銀行が判断し対応する必要があった。

 KeyMan共同化推進室の池田泰臣氏は、「KeyManの利用行が増えると、ハードウェアを追加することになります。ハードウェアはその時々でモデルが違うわけです。そうすると、OSは同じでも出る障害が違ったりするんです。こうなってきますと、もう銀行員が対応する範囲を超えています。また、私たち自身がそこまで対応するべきことなのか、と思いながらやっている部分がありましたので、改善したいという思いは強かったです」と当時を振り返る。

本来業務への集中に向け、基盤・運用をNRIにアウトソース

 鹿児島銀行では、基盤老朽化によるシステム更改が2016年夏に迫っていた。そこで、KeyMan共同化推進室が本来的な役割であるシステム企画、アプリケーション開発、利用行拡大といった付加価値の高い活動にリソースを集中できるよう、大幅にシステム環境を刷新することを決断した。

 クラウドサービス上にてサーバ及びネットワークを統合集約することで、利用リソースの最適化を図るとともに、リソース提供型のサービスとして遠隔地へのバックアップも含めた環境構築を容易にする。これにより、コストの抑制及び時間短縮を実現する。またクラウドの柔軟性を生かして、利用行増加時においてもリソースの増減に機動的に対応する。こうすることで「システム構成が要因となる負荷」を取り除く。

 また、基盤関連の運用保守全般や資産調達などを全面的にアウトソーシングすることで「運用保守が要因となる負荷」を取り除くことにしたのだ。

 そのアウトソーシング先として選ばれたのが野村総合 研究所(NRI)である。

 NRIが選ばれた理由は、
① クラウド基盤から運用オペレーションまでをワンストップで対応できること
NRIでは、IaaS/PaaSのリソースを提供する「クラウドサービス」、拠点及びデータセンター内のネットワーク接続環境を提供する「ネットワークサービス」、運用オペレーションを提供する「マネージドサービス」をトータルに提供しており、クラウド基盤から運用までワンストップのITソリューションインフラを実現している。鹿児島銀行は、それぞれにベンダーを変えると、結局のところ自分達の負担は軽減しないと考え、トータルにアウトソーシングできるところを探していた。また、ワンストップが実現していることにより、運用統括者(利用行や運用保守窓口との連絡・調整の一元化や月次報告書のとりまとめ等)を置くことも可能になる。

② NRIは共同利用型システムの運用経験が豊富であること
KeyManは共同利用型のアプリケーションであるため、共同利用型特有のノウハウが必要とされる。NRIは共同利用型システムを多数提供しており、運用の実績も重ねている。鹿児島銀行はNRIが提供するBESTWAY、ValueDirectを利用しているため、実体験としてワンストップの運用がスムーズになされていることを知っており、安心感を持っていた。

③ 運用の高度化が図れること
KeyManは自行の運用手順、要員に支えられた独自の仕組みである。鹿児島銀行は、この仕組みを単にそのままアウトソースするのではなく、新しい基盤の上で、運用のあり方も見直したいと考えていた。NRIでは長年、全社的にシステム開発の標準化に取り組んでおり、運用基盤においても多くのシステムで共通化・自動化が実現している。NRIにアウトソーシングすることで運用の高度化も図ることができる。

開発と運用の知見が結集したマネージドサービス(MDC運用)

 NRIの運用高度化の取り組みの中で、最も象徴的なものがMDC(マルチデータセンター)運用である。

 MDC運用とは、複数の異なるデータセンターで稼動するシステムを、離隔した運用拠点から統合運用するサービスを指す。一般に、データセンターで稼動するシステムの運用管理はデータセンター内で行われているが、NRIではデータセンターとは物理的に異なる場所に設置した運用拠点で行っている。こうすることで、あるデータセンターが被災したとしても、その状況を遠隔地にある運用拠点で確認することができるほか、障害が発生したデータセンターの情報をまとめ、関係者に連携することができる。そして、その運用拠点からBCPとして稼動する別のデータセンターの運用管理を行うこともできる。運用拠点自体も、大手町を含む3箇所にあり、万が一、1箇所が被災したとしても、他の場所にある運用拠点に瞬時に切り替えることができる。

 リモートの運用拠点での運用監視を可能にしたのは、データセンター現地で行う必要のある業務(ローカル運用)と遠隔から可能な業務(リモート運用)の切り分けができているからである。切り分けるには、徹底的に業務の標準化を進める必要がある。こういった標準化は、運用部門だけで進められるものではなく、また開発部門だけでできるものでもない。運用部門と開発部門が密に連携するDevOps(※1)が求められる。NRIでは、そのDevOpsのカルチャーが浸透しており、それが徹底した標準化を可能にしているのだ。


濵﨑 研悟氏

 池田氏は、「NRIの運用拠点を見学したときに、オペレーターの数の少なさに驚きました」と語る。KeyMan共同化推進室長の濵﨑研悟氏は、「障害が発生した時に「ダッシュボード」にエラーログを通知する機能はどのデータセンターにも標準装備されていると思いますが、それだけではなくエラーログを振り分けながら、既知の障害であれば、どう対処すればよいかといったフローまで出るようになっており、運用業務が見事に自動化されていることが分かりました」と語る。

 「ダッシュボード」には、各データセンターの電源や空調、通信や基盤、各システムの状況がリアルタイムで表示されるようになっている。複数のデータセンターの稼動状況が一目で分かるのだ。こうした一元管理は、「統合CMDB(※2)」と呼ばれるデータベースが整備され、データセンターのどのラックにどういった物理サーバが搭載されていて、その物理サーバ上では、どういった仮想サーバが動き、どの業務システムで利用されているのか、といった情報が自動的に結びつけられているからこそ可能となるのである。また、システムから発報される大量の情報を運用システムに随時蓄積し、そこから得られたナレッジを作業の自動化につなげ、継続的に運用品質の向上を図っている。そうすることで、個々人のレベルに依存しない均質なサービスレベルを実現できるのである。

 池田氏は、「今までKeyManの運用監視は最低限の仕組みのみ自動化しており、あとは銀行が人手を使って対応してきました。やはり銀行員が、運用業務を根本的に見直し、将来をみすえて高度化させることには限界があると感じていました」と語る。濵﨑氏は、「NRIの運用担当者が、MDC運用について熱く、熱く説明してくれました。運用・保守は毎日のことですので、システムのリリース時の華々しさと比べると、至って地味で日の当たることはまずありません。しかし、システムを継続して使っていく以上は一番重要な部分です。熱く語る姿を見て、非常に共感を覚えたと同時に、運用の高度化への真剣さが伝わってきて、安心して任せられるという思いを強くしました」と続ける。

お客様のシステムもNRIのシステムも垣根なく対応

 運用先としてNRIが選ばれたのは2015年4月。5月から9月にかけて、鹿児島銀行とNRIの役割分担を確認するための要件定義を実施し、10月から環境構築に着手した。

 KeyManは鹿児島銀行が十数年にわたって築き上げたアプリケーション・基盤・運用の仕組みであるため、可視化しづらい細かなレイヤーが隠れている。NRIの基盤・運用の専門家が、時として見過ごされがちになる課題に対しても、漏らすことなく解決に取り組むと共に、その内容を両社で共有し、迅速に対応していった。

 濵﨑氏が印象に残っていることとして、「NRIは常にNRIが考えるベストな案を持ってきてくれました。「鹿児島銀行さん、これはどうしましょうか?」というスタンスでもなく、ゼロから一緒につくりあげるのでもない。完成が10としたら、NRIが考える10を持ってくる。そこをベースに議論ができるので結論に導きやすかったです」と語る。「アプリケーション部分は、われわれサイドでつくっているので、NRI側からあまり見えないというもどかしさがあったと思います。それでも、「基盤としては、やっぱりこうあったほうがいいですよね」と提案してくるわけです。ですから、任せて大丈夫という安心感がありました」と続けた。

 池田氏は「KeyManは当行が開発したアプリケーションですから、NRIの他のシステムとは別扱いで、ダッシュボード上でも個別に小さい枠が表示されるものと思っていました。しかし、同じ仕組みの中の一つとしてみる、ということをNRIは徹底していました。ですから同じ品質でやってもらえるんだ、という心強さを感じました」と語った。

大幅な負担軽減を実現したアウトソーシング


福村 裕司氏

 クラウドへの移行、運用保守のアウトソースを実現したことで、鹿児島銀行の役割は大幅に軽減した。それを示したのが、右ページの「NRIのITソリューションインフラ」である。

 KeyMan共同化推進室の福村裕司氏は、「移行を終えて、基盤の維持、運用保守の負荷から解放されたことを実感しています。インフラ回りの障害はあったかどうかさえ分からないくらいになっています。本来の業務である業務系の開発に集中できていますので、まさしくアウトソーシングしてよかったと感じています」と語る。池田氏は「正直、NRIの運用拠点を一回見学しただけでは、わかったようでわからないような感じではありました。けれども、実際に運用が始まってから、本当に自動化されている、ということを実感しています。実際、いわゆる障害のコールやメールの件数は、8割は減っています」と続ける。

 鹿児島銀行は、システム環境を大幅に変える決断をしたことで、KeyManの機能の充実や利用行の拡大に向けた戦略的活動に、より多くの時間を割けるようになった。それは、結局は地域の活性化につながるものであり、NRIが、そうした活動の一翼を担えたのであれば、非常に光栄なことである。

 濵﨑氏からは、「今回は、基盤・インフラ、データセンターの分野のプロジェクトでしたが、NRIには、金融に関していろいろな知識やノウハウがあります。鹿児島銀行では、地域創生やフィンテックといった新しい取り組みをしており、引き出しの多いNRIにはいろいろ相談したいですし、提案してくれる、という期待があります」という言葉をいただいた。

 『ナビゲーション×ソリューション』を標榜するNRIとして、お客様から得られた信頼と期待に継続して応えていきたい。

お客様プロフィール

鹿児島銀行は、鹿児島県内の預金シェア47.0%、貸出金シェア45.4%を占める、地元に密着した地方銀行である。2年後には140周年を迎える歴史ある銀行が今年4月に採用したスローガンは「はじめよう、あたらしいコト」。この言葉には、「地域の発展のため、自由闊達で創造性に満ちた新しい取り組みに挑戦していく」という決意が込められている。2015年4月に野村総合研究所などとともにシステム販売を手がけるサザンウィッシュを設立。2015年10月に肥後銀行と経営統合し九州フィナンシャルグループを設立するなど、新たな挑戦は既に始まっている。

1) Development(開発)とOperations(運用)を組み合わせた造語。
2) 統合CMDBとは、データセンター内の物理ラックの設置場所・電源構成や、サーバ・システム情報などを自動的に結びつけることにより、インフラ情報の一元管理を可能としたNRIの運用管理ツール。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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