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新型クルーズトレインを2倍楽しむためのヒント

2017年5月号

投資情報サービス事業部 主任コンサルタント 金島一平

5月1日からJR東日本がクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」の運行を開始した。全客室スイート、東日本のこだわりの食材を使うディナーなど、最高のおもてなしで注目を集め、1泊2日で一人32万円からという価格設定ながら、一番列車の抽選倍率は最高76倍という人気ぶりだ。

 その豪華さと高額なツアー料金に目を奪われがちだが、実は多くの新技術が採用されている。なかでも特徴的なものが、電化・非電化両区間の直通運転を可能とするデュアルモード技術(※1)で、電化区間では架線を通じて、非電化区間ではディーゼル発電機から電力を供給してモーターを駆動する。これにより、電化されていない東北のローカル線や北海道の各線を含めて基本的にどの路線でも自由な走行が可能になる。国内で営業運用に入る列車では初めて採用されたテクノロジーである。

 一方、国外では、欧米メーカーが開発したデュアルモード技術を搭載した車両がすでに欧州各国で運転されている。日本メーカーも積極展開を試みており、近年では日立製作所が英国政府から受注した都市間高速鉄道計画(Intercity Express Programme、IEP)向けの車両に採り入れられている。

 この計画は、首都ロンドンを起点に北部・西部の両方面を高速列車で結ぶものだが、英国では未だに非電化区間が多く、目下電化を推し進めているという状況だ。そこで、車両にデュアルモード技術が用いられることになったが、特筆すべきは発電機をユニット化して着脱可能な専用設計にしたことだ。これにより、将来電化が進展した際には発電機を取り外すだけで済み、車両本体の置き換えが不要となるため、長期的なコスト削減が実現できたのである。

 IEPの受注をめぐっては、実績豊富な欧米メーカー勢とのコンペとなり、かなりの苦戦を強いられたそうだ。しかしながら、最終的に受注を勝ち取れたのは、新技術を採り入れながら英国の鉄道事情に合わせたカスタマイズに対応できるという柔軟さが評価されたと考えて良いだろう。日本企業の強みを活かしたグローバル展開における好事例といえよう。

 昨今、金融ビジネスでも人工知能(AI)やブロックチェーン技術など革新的テクノロジーの浸透により、取り巻く環境が大きく変わろうとしているが、これらの技術を活用しつつ、顧客の求めるサービスを柔軟にデザインできることが成功の鍵となるはずだ。

 ―さて、TRAIN SUITE 四季島の一番列車は、1日に上野駅を出たあと電車として東北本線を走り抜け、青函トンネルをくぐって翌2日には北海道入りする。いまごろ甲高いディーゼル音を響かせて北の大地を快走していることだろう。

1) JR東日本は「EDC方式」、日立製作所は「バイモード」と称している。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

金島一平Ippei Kanashima

投資情報サービス事業部
主任コンサルタント

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