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適用可能性が高まる業務効率化ロボット・AI

2017年5月号

金融デジタル企画一部 上級研究員 片岡佳子

このところ、バックオフィス業務の効率化を企図したロボット・AIの金融機関への導入の動きが活発化している。この背景には、金融機関における実需の高まりと共に、ロボット・AI技術の適用が容易になっていることがある。

業務効率化への適用が進むロボット・AI

 これまでロボットやAIの金融機関への導入事例というと、顧客情報やニーズ等を分析するロボアドバイザー(※1)や、音声・メールなど非定型データを対象とした金融機関内部での行為監視(※2)といった、ミドル・フロント業務への適用事例が多くみられてきた。しかしこのところ、欧米のみならず日本でもバックオフィス業務の効率化を企図したロボット・AI導入の動きが活発化している。その理由として、①欧米では、規制により、バックオフィス業務の管理・監督強化が求められるようになり、オフショア化していた業務の正確性向上とコスト削減(※3)を同時に達成する必要性が高まったこと、②日本では、人口減少が見込まれる中で残業時間抑制への対応が求められ、こうした日常定例業務においても業務効率性の向上が求められていること、③こうした状況を後押しする形で、金融機関の実需に対応した比較的導入負担が低くコストも妥当な業務効率化ロボット・AIソリューションが充実してきていること、などが挙げられる。

 ロボット・AIソリューションの中でも、最もバックオフィス業務への適用が拡大しているのが、ロボティックプロセスオートメーション(※4)(RPA)であろう。実際、欧米金融機関のBPO拠点であるインドでは人間に代わりRPAが導入される比率が高まっているほか、日本においても、実証研究フェーズから実務への適用に移行する金融機関が出てきている(※5)。RPAとは、基本的には、現場担当者が行っている操作をユーザーインターフェース上でワークフローとして登録することで、それを人が実行するのと全く同じ手順、同じかたちで、繰り返し再現させることができるソフトウェア型のロボットを指す(※6)。従って、全く同じ作業がある程度定期的に繰り返されるような業務に適している。例えば、毎営業日の業務終了後、取引データを複数システムに登録するために、各システム用にファイルフォーマットを変更し、それぞれのシステムを立ち上げ異なるIDを入力してログインし、アップロード作業を行う…といった、バックオフィス業務でよくみられるような「定型化、単純化された繰り返し業務」はRPAの得意とするところである。

 RPA導入の利点の一つが、RPAはインターフェースを通じて人が操作するのと同じようにアプリケーション(エクセルやデータ入力システム等)の操作を行うため、自動化に際してシステムやデータベースそのものに手を加える必要がないという点だ。そのため、既存のレガシーシステムを生かしたままで効率化に着手できるほか、従来のシステム開発を伴う自動化案件と比べて導入にかかる期間が短く、導入コストを大幅に抑制できる。

 また、欧米金融機関で目指されている業務の管理・監督機能の強化という観点では、ロボットでは人と異なり単純なオペレーションミスが発生しない。さらに、近年多くのRPAベンダーが提供しているロボットのモニタリングツールにより、中央集権的にロボットのプロセス管理や動作状況のモニタリングを行うことができるようになっており、リアルタイムで業務監視が可能だ。

ロボット+AIの組み合わせにより適用領域が拡大

 このようにRPAは非常に利便性が高いものの、幾つか技術的な限界もある。まず、ワークフローの事前設定が必要なため、RPAは決まった作業を決められた通りに実行することしかできない。業務インプット等に幾つかのバリエーションがある場合、その都度場合分けの条件を設定しなおす必要があり、現実的にはこうした業務への適用は不可能といえる。また、RPAは複数システム間でデータをやり取りする操作は得意としているものの、例えばスキャンされただけの文書や、メール、文章形式での情報記述など、システム化、定型化されていないデータには対応できない。しかし最近はこうしたRPAの欠点を補うようなソリューションが出てきている。

 適用事例が増えている代表的なものが、機械学習や言語解析を用いてデータ抽出を行うAI搭載のソリューション(データ抽出ソリューション)である。これにより、文書、メール、Webのようにデータ項目が散在しているデータソースから必要な情報のみを抽出するプロセス(※7)にAIを用いて、従来の目視による情報検索や手入力を代替することが期待できる。例えば、複数ページにわたる従業員の雇用契約書の中から、雇用者の情報、給与、雇用条件、雇用期間など、人事管理上必要な情報のみをピンポイントで抽出し、その情報をシステムで対応可能な形に整備する業務をAIで実行することができる。このようにして「定型データ化」された情報は、RPAを用いて別のシステムに登録したり、他のアプリケーションを用いて関連する情報と照合するといった、その後の業務フローに組み込むことが可能だ(※8)。

 データ抽出ソリューションのプロバイダーの多くは、文書フォーマットと記載情報がある程度限定されている請求書や契約書、法定文書等に特化している。特定の文書を対象とすることで、AI適用のプロセス-すなわち必要な学習データや初期設定ノウハウの蓄積が進み、結果的に、顧客にとって比較的スムーズなソリューション導入や抽出する情報の正確性向上につながっている(※9)。

適用対象業務の精査と把握が不可欠

 このように実用可能性が高まっているロボットやAIであるが、導入検討に際して幾つか留意すべき点もある。まず、自動化を検討する際に、対象とする業務の妥当性検証は欠かせないという点である。特にデータ抽出ソリューションに関しては、抽出すべきデータ数が多くなるとAIを学習させる負担やライセンス費用が嵩み、期待するような投資対効果が得られない場合がある。従って、利用しているデータの必要性や利用目的、あるいは企業横断的に見た場合に実は別部署で重複して入力されていないか、といった観点で現行業務を精査する必要がある。また、RPAもAIも、導入した後にそれらの実行している業務がブラックボックス化しかねないという点にも留意が必要だ。前述したRPAのモニタリングツールなどを用いながら、ロボットやAIの業務を管理・監督する仕組み作りを導入の検討と同時並行で実施していくことが望ましい。

 初期導入にかかる負担やコストだけでなく、正確性の観点でも、ロボット・AIは単なる研究対象から「実際に業務で使えるツール」になりつつある。その中で、ツールの特性とその適用可能領域を正しく理解し、それらを使いこなしていくことの重要性は益々高まるだろう。

1) 金融ITフォーカス2017年2月号「二種のハイブリッド型ロボ・アドバイザーの侵攻」など過去のITフォーカスでも度々取上げられている。
2) NRI Financial Solutionsサイト、2016年9月の今月のキーワード、「RegTech」などを参照のこと。
3) 経済発展に伴いインドに代表されるオフショア拠点の人件費が高騰し、良質な人材のコストが上昇していることも背景にある。
4) Robotic Process Automation
5) NRIでも、金融機関のBPO業務にRPAの適用を開始している。2017年4月4日付けニュースリリース参照
6) RPAの定義や、その中で提供される機能はソリューションプロバイダーごとに若干異なる。
7) 複数ある文書パターンの学習、意味情報解析、それらを用いた該当情報の選択といったプロセス。
8) さらに、従来であればスキャンしただけの画像データや、紙ベースでしか保存できなかった契約書を、抽出された基本情報ごとに整理し保存することも可能になる。
9) 近年はOCRの機能が高度化し、英語であればかなりの精度でスキャンした文書を文字情報化できるようになっている点も、正確性の向上に寄与しているといえる。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

片岡佳子

片岡佳子Keiko Kataoka

金融デジタル企画一部
上級研究員
専門:金融関連ソリューション企画

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