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海外トピックス

2017年4月号

金融ITイノベーション事業本部 國見和史

・英当局、不動産投信の流動性管理について意見を募集
・P2Pレンディング市場の変化に対応して規制改革を進める英当局

英当局、不動産投信の流動性管理について意見を募集

 英国の金融行為監督機構(FCA)は2月、不動産など非流動性資産に投資するオープンエンド型投信の流動性管理を改善するために新たな規制やガイドラインが必要か議論を喚起するためのディスカッション・ペーパー(DP)を公表した。

 FCAがDPを発表した背景には、昨年6月のEU離脱国民投票後、オープンエンド型の不動産ファンドで解約請求が急増し、6本のファンド(運用残高合計146億ポンド)が相次いで解約中止を余儀なくされFCAも対応に奔走したことがある。その結果、日次で投資家の解約に応じているファンドが非流動資産に投資するのは適当なのか、と問題意識を高めていた。

 今回のDPでは、FCAは特定の提案は行わず、いくつかの論点を挙げて関係者に意見を求めている。

 興味深い論点としてはまず、非流動資産に投資するファンドの取引機会の問題がある。FCAは、「流動性を管理しやすくする」という観点からは「日次」のような高頻度で投資家の取引請求に応じるのを規制で禁止すべきかもしれないが、これまで市場混乱を乗り切ってきた経験を考えると一律禁止には疑問もあると論じた。さらに、英国で多くの不動産ファンドが日次で投資家の取引請求に応じている背景には、販売チャネルである一部のプラットフォームが日次での取引をファンドを取り扱う条件としていることも影響しているのではないか、と示唆した。

 もう一つの興味深い論点は、規制当局がファンドの解約中止などの対応にどれだけ直接介入すべきか、という問題である。昨年不動産ファンドの解約請求が急増した際、FCAは、当局が介入して一律に解約中止を求めるのは適当ではないと判断し、個々のファンドに判断を任せた。これに対しDPでは、ファンドマネジャーが「他社に先駆けて解約停止すれば評判が悪化するので当局に判断してもらいたい」と考えることにも理解を示した。

 今回のDPで、FCAは、オープンエンド型ファンドの非流動性資産保有をすべて禁止したりすることで現行規制を根本的に見直すのではなく、どうすればさまざまな手段を使いながら流動性管理の改善を図れるかに議論の重点を置く姿勢を明確にした。ファンドマネジャーはすでに多様な流動性管理の手段が与えられ、いつ、どのように用いるかについても大きな裁量を持っているが、そうしたツールの望ましい使い方については明確なコンセンサスがないものも多い。FCAは昨年の経験も踏まえて、実践的な規制やガイドラインの導入が有効な処方箋になり得ると考えているようだ。

 FCAでは、本年5月まで関係者のコメントを求めている。その後、2017年中に対応策を公表し、必要があれば規制やガイドラインを提案することを予定している。

P2Pレンディング市場の変化に対応して規制改革を進める英当局

 近年、英国のP2Pレンディング市場は規模が急拡大しているだけでなく、機関投資家の投資が増えたり、対象となるローンのタイプが多様化するなど進化が著しい。英・金融行為監督機構(FCA)では昨年来、そうしたP2Pレンディング市場の急速な変化に対応するため、規制の見直しを進めている。昨年12月には、規制の変更を含む自らの暫定的な見解を示した中間報告書を公表した。

 FCAがP2Pレンディング業者に包括的な規制を導入したのは2014年。投資家への適切な情報提供、最低資本金の維持、破綻処理計画の策定などを求めたが、P2Pレンディング市場は金融市場に有益な競争をもたらすと認識されたため、比較的負担の軽い規制にして、その後市場の動向を見ながら修正していく方針が取られた。今回の規制の見直しは、その一環といえる。

 FCAの関心は多岐に渡り、報告書では、ローンへのアクセスで個人投資家が機関投資家に対して不利な扱いを受けていないか、P2Pレンディング業者が投資家に提供している情報(リスクや銀行商品との比較など)は適切か、ISA(個人貯蓄口座)を通して投資できるようになったことで投資経験の浅い投資家が増えていないか、などさまざまな論点が議論された。

 そうした中、FCAが特に注視したのは、多くのP2Pレンディング業者が貸し手(投資家)と借り手を直接結びつける当初の単純なビジネスモデルから離れつつある点である。たとえば、P2Pプラットフォームの中には、1)準備基金を設けて、借り手が債務不履行を起こしても投資家が損しないようにそこから補填させたり、2)投資家が自ら投資先を判断するのではなくプラットフォーム会社が自動的にアロケーションを決めたり、3)借り手にとってのローン期間はそのままで、投資家に対してはローンを売却することで短期間で資金を引き出せるような商品を提供したりする動きが広がっている。

 中でも、FCAは、1)は信用リスクをプールするもので資産運用業との境界を曖昧にしている、3)は短期借り・長期貸しの性格が銀行業と類似している、と指摘。他の金融サービス業との規制のアービトラージを引き起こしたり、投資家に商品の性格について誤解を与えかねないと懸念を示した。特に準備基金については、リスクを曖昧にし、「プラットフォームがローンに暗黙の保証を与えている」と投資家が誤解する可能性があると指摘した。

 中間報告書では、破綻処理計画を改善するための規制の強化、投資家への情報開示に関するより詳細な規則の制定などを今年第一四半期に提案し(執筆時点では公表されていない)、今夏に最終規則を公表したいと述べている。さらにその後、必要があれば再び規則変更に向けた提案を行う可能性もあるという。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

導入事例

國見和史Kazushi Kunimi

金融ITイノベーション事業本部
コンサルタント

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