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マイナンバー制度と金融機関の対応

2017年4月号

未来創発センター 制度戦略研究室長 梅屋真一郎

マイナンバー制度がスタートして1年が経過した。金融機関においては、有価証券、保険分野等で顧客のマイナンバー取得が進みつつある。2018年には預貯金分野も対象となる。預貯金口座数が膨大である事を踏まえた着実な対応が求められる。

スタートから1年を経過したマイナンバー制度

 2016年1月にスタートしたマイナンバー制度は開始後1年を経過した。この間、税や社会保障に関わる各種手続において、マイナンバーの申告や記載などが求められるようになった。

 例えば、税分野では確定申告や企業の年末調整の手続き等で個人事業主や従業員等のマイナンバーの届出が本格化し、社会保障分野においても、健康保険、年金分野での対応が2017年年初から始まった。これにより民間としてのマイナンバー対応は、2013年5月に成立した番号法で規定された利用分野に関しては全て完了した。

 なお、各個人のマイナンバーが記載されている通知カードはほぼ全住民に送付したが、依然として約130万通(2016年11月末時点)が住所不明等により受領されておらず、また本人の申請に基づき交付されるマイナンバーカードも交付済みは約1000万枚と、普及は依然として道半ばと言った状況である。

金融分野におけるマイナンバー制度と課題

 金融分野でのマイナンバーは税分野での利用となり、有価証券並びに保険分野が中心となっている。今後のマイナンバー取得においては、以下のような課題が考えられる。

 ①有価証券

 株式や投資信託等の有価証券は、マイナンバー制度の対象として取引報告書等にマイナンバー記載欄が追加されたこと等から、2016年1月の制度開始に合わせて顧客からのマイナンバーの届出が開始されている。金融機関は全ての個人顧客からマイナンバーの収集を行う必要があるが、制度上顧客への強制はできないことから、どのようにして番号収集を確実に行うかが各金融機関の大きな課題となっている。

 マイナンバーの収集は新規口座だけでなく、マイナンバー制度開始以前に開設された既存口座に対しても行う必要がある。新規の場合は口座開設時に届け出を行ってもらうことで比較的容易にマイナンバーを収集できるが、既存の場合はそのようなタイミングがなく、顧客から自発的に届け出てもらう必要がある。マイナンバーの届出期限は2018年12月末であり、対象者が多数に上る事を考えると、時間的余裕は少ない。今後、各金融機関は限られた時間の中で着実に全対象者の番号取得を行うことが求められる。

 日本証券業協会でもこのような状況を踏まえ、業界としての広報に乗り出しており、新聞広告の掲載やパンフレット・ポスター等の作成等を行っているが、どこまでしっかり収集できるかが課題である。

 ②保険分野

 生命保険・損害保険の保険金や年金に関しては、マイナンバー制度の対象として支払調書へのマイナンバー記載が必要になったことから、制度開始時点より顧客からのマイナンバー届出が始まっている。

 ただし、一定期間内に全口座からのマイナンバー届け出が行われる有価証券とは異なり、保険に関しては保険金ないしは年金支払時点でマイナンバーを届けることとし、それ以前には契約者がマイナンバーの届け出を行わないという保険会社が大半である。これは、保険契約数が膨大な数にのぼるうえ、必ずしも契約終了時点までに保険金を支払う訳ではないことから、保険会社の業務運用上、そのような方針を選択しているところが多いためである。

 しかしながら、マイナンバー制度による事務負担の軽減の一環として、電子納税に伴う保険料控除の電子化・自動化や、税務当局などからの保険契約に関する問合せの電子化が検討されており、今後、全ての保険契約について予めマイナンバーを登録する必要が出てくる可能性がある。

 なお、預貯金についてはマイナンバー制度制定時は対象外であったが、2015年の番号法改正によりマイナンバー制度の対象となり、2018年より、当面は任意ではあるがマイナンバーの届出が行えるようになった。預貯金分野は、税分野での利用と共にペイオフなど預金保険での利用も行えるとされている。

 預貯金口座へのマイナンバー登録は当面は任意であるが、改正番号法には2021年を目途にした見直し条項がある。番号の届出状況次第で義務化も視野に入れられており、今後全ての預貯金口座にマイナンバーの登録が必要になると考えられる。

金融機関に求められる対応

 商品によりマイナンバー対応の時期やタイミングは異なるものの、何れにしても対象となる金融商品については着実に番号を収集することが必要となる。

 前述のようにマイナンバーの届出を顧客に強制することは制度上できない。そのため顧客からの自発的な届出が前提となるが、番号を収集する金融機関側には番号収集の義務があることから、どのように対象となる全ての顧客から確実に番号を収集するかが大きな課題となる。

 金融以外の分野、例えば企業による従業員の番号収集は着実に実施されていると言われている。金融分野で番号収集が同様に行えなかった場合には、金融機関の対応に関して当局から強い指導を受けることになろう。あるいは、番号の届出を行わない顧客へのペナルティの検討と言った議論も出かねない。

 とは言え現時点で金融機関が行える対策は限られており、結局は丁寧な顧客説明としっかりした事務対応を行う以外に有効な対策はないと言える。

 特に、2018年から任意でのマイナンバー届出がスタートする預貯金は10億口座以上あると言われている。任意での届出とはなっているが、3年を目途にした登録義務化を想定すると、膨大な口座一つ一つにどのようにしてマイナンバーを紐付けるかは、個々の金融機関の努力だけでは限界があると思われる。

 たとえば、

 ①行政の持つ住所、氏名、マイナンバー等の情報と金融機関の顧客情報のマッチング、

 ②非稼働口座の取り扱いの明確化

 といった対策を取ることが考えられるのではないか。特に①は、非稼働口座についての打開策にもなると期待される。今後、金融業界横断で実現を目指すべきであろう。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

梅屋真一郎

梅屋真一郎Shinichiro Umeya

未来創発センター
制度戦略研究室長
専門:制度調査・提言

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