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デリバティブ市場拡大を支える 清算インフラ刷新の取り組み

2017年4月号

証券ホールセール事業一部 営業グループマネージャー 木綿芳行

金融市場インフラは、マーケット動向、規制動向を踏まえ、安全性や参加者の利便性向上をスピード感を持って行うことが求められている。その中でJPXグループは、デリバティブ市場の拡大を受けて、デリバティブ清算刷新プロジェクトを開始することとし、準備を進めている。

 日本取引所グループ(以下、JPXグループ)は、2016年3月22日に第二次中期経営計画(2016年度-2018年度)を公表した。その中で、第一次中期経営計画(2012年度-2015年度)を振り返り、重点戦略のひとつである「デリバティブ市場の拡大」について、年間取引高が3年間で1.5倍に拡大したと成果を発表している。それを受け第二次中期経営計画では、重点的な取組みとしてデリバティブも含めた清算・決済サービス拡大とシステム基盤強化を掲げており、その第一弾として、JPXグループの日本証券クリアリング機構(以下、JSCC)が、2017年度後半の稼動を目指し、デリバティブ清算刷新プロジェクト(「上場派生清算・リスク管理・担保管理機能のシステムリプレイス」と「市場デリバティブ取引に係る清算業務・リスク管理の見直し」)の準備を進めている。

なぜ、デリバティブ清算の刷新が必要なのか?

 JSCCは、デリバティブ市場の清算インフラとして、大きく3つの課題を抱えている。

 まずデリバティブ市場運営の一翼を担う現行の上場清算システムでは、アプリケーション部分は稼働から10年以上経過しており、デリバティブ新商品、リスク管理の高度化等、新ビジネスへの対応のために、より高い柔軟性、先進性が求められる状況にある。

 2点目として、JSCCでは、従来の上場商品(現物・上場デリバティブ)のほか、2011年のOTCデリバティブ清算業務の開始、2013年の日本国債清算機関との合併により、大きく3つの清算システムが並存している。このため、システムの統合等によるシステム全体の効率化・最適化の余地が相当程度ある状況である。

 3点目として、金融危機以降の店頭デリバティブ取引の清算機関への集中や、リスクの集中先となる清算機関への規制強化をきっかけに、規制当局はもちろんのこと、契約のカウンターパートとなる清算参加者においても、清算機関の品質向上への取り組みに関心が高まっている。こうした動きは、同じレバレッジ商品である市場デリバティブ取引にも及んでおり、海外清算機関は競うように利便性向上と品質向上に取り組んでいる。JSCCにとっても日本市場の信認を維持・向上するために同様の取り組みを行うことが必要となってきている。

 JSCCでは、これらの課題を早急に解決するため、清算機関が最終的に実現すべき機能とシステムの将来像をイメージしながら、フェーズドアプローチにより段階的にシステムインフラを刷新するプロジェクトを開始した。具体的には、まずは現物取引と市場デリバティブ取引の両方を取り扱う現行の上場清算システムの中から、優先すべき上場デリバティブの清算機能のみを切り出してシステムの刷新を行うこととした。その機会に合わせ、グローバルに採用されている清算業務・リスク管理の制度やプラクティスにキャッチアップするため、各種制度や業務の本格的な見直しを実施することになっている。

清算インフラの将来像の重要性

 今回のデリバティブ清算刷新プロジェクトにおいては、ビジネス面、システム面で実現すべきコンセプトが挙げられている。ビジネス面では「上場派生清算機能の向上・グローバル化」、「リスク管理の高度化」、「担保管理機能の横断化」の3点、システム面では「アプリケーションの最適化」「システムインフラの統合」の2点である(図表参照)。具体的には、例えばシステムインフラの統合には、商品ごとに併存していた清算システム基盤(前述の課題2点目)の統合などが含まれる。

 これらの目標のなかで、ビジネス戦略上早急に対応すべきシステム・機能として、(1)上場派生清算システムの刷新、(2)担保管理システムの横断化、(3)リスク管理システムの高度化、(4)システム基盤の統合化の4つについては、2017年度後半の稼働が予定されている。

 さらにそれ以降も2020年を目処に、各システムのリプレイスのタイミングで、その時々のマーケットニーズ、規制動向及びIT技術の進展などを見ながら、清算機能のエンハンスやシステムインフラの効率化を順次進めていくものと考えられる。

 これらを実施することで最終的に目指すのは、商品システム毎に機能や基盤が分散していた非効率性の解消や、グローバル規制の強化に対しても商品横断的な対応が可能となる基盤の構築である。さらに、柔軟性・先進性のある統一システムへの刷新が目標とされている。

 今回のプロジェクト実施で注目に値することは、市場インフラとして最短スケジュールでのリリースを実現するため、グローバルで採用されている海外システムを積極的に導入している点である。これはビジネスのスピード感が増していることやグローバルスタンダード化の動きに対応したものと言えよう。海外のシステムとしては、上場派生清算システム及びリスク管理システムにCinnober社、担保管理システムにCalypso社のパッケージを採用して開発を進めている。

 今後の課題として、デリバティブ清算刷新プロジェクトを成功に導くためには、まず清算インフラの将来像を市場参加者間で共有することが必要と考える。その上で、当初の稼動ターゲットに向けて、清算参加者や清算参加者が利用するシステムベンダー等と一致協力し、コミュニケーションを密に取りながらスピード感をもって準備を進めていくことが重要である。今回紹介したプロジェクトを含めた清算インフラ強化の様々な取り組みを通じて、JPXグループが描くビジョンが実現されることを期待したい。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

木綿芳行

木綿芳行Yoshiyuki Kiwata

証券ホールセール事業一部
グループマネージャー
専門:証券決済サービス

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