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金融ITフォーラム報告

2017年2月号

蒲谷俊介, 富永洋子, 國見和史

野村総合研究所(NRI)は2016年11月17日、「金融業界のイノベーションが未来を創る」をテーマに「NRI金融ITフォーラム2016」を開催した。

 新たなITを活用して製品やサービスを革新するデジタルイノベーションの取り組みが欧米で盛んになっている。当然のことながら、日本もグローバル規模で新たなテクノロジーとアイデアによるビジネス戦略とイノベーションに取り組んでいくことが強く求められている。

 日本版のデジタルイノベーションとはどのようなものなのか。NRIは洞察力、実現力、共創力のコンビネーションを強みに、NRI独自の視点でこの課題に取り組んでいる。NRIでは、金融業界に更なるイノベーションを促し、金融機関の皆さまの戦略実現を支援していけるよう、様々な角度から議論や提案をしていきたいと考えており、その一環として当フォーラムを開催した。

 ここでは、基調講演、特別講演をお引き受け下さった三越伊勢丹ホールディングス 代表取締役 社長執行役員の大西洋様、日本銀行決済機構局FinTechセンター長の岩下直行様、金融庁総務企画局 参事官の松尾元信様、セブン銀行 金融犯罪対策部 部長の井手智典様、鹿児島銀行 医業支援部 部長席付の藪谷真喜子様、マネーフォワード 代表取締役社長CEOの辻庸介様、SAP Head of Industry Business Unit InsuranceのRobert Commings様の講演を紹介するとともに、2016年にNRIグループに加わったCutter AssociatesのMary C. StorrsとJonathan Chandlerの講演を紹介する。

新しい価値創造に向けたイノベーションについて
株式会社三越伊勢丹ホールディングス 代表取締役 社長執行役員 大西 洋氏

 経営トップは「5年後、10年後に何をするか」を視野にいつも考えている。しかしこの不透明な経済環境では、5年後を見通すのは難しい。仮説が成り立たない時代といえる。その中で、今企業に求められるのは真のイノベーションである。既存のモノ・コトの思いもよらない組み合わせが新しいものを生み出す。旧来のビジネスモデルには限界が来ている。

 小売業の市場規模はここ数年大きくは変わっていない。消費が活性化しない理由は、多様化する顧客ニーズに応え切れていないことが大きい。モノの消費が抑制され、ライフスタイルを重視したコト・サービス消費が拡大しているのに、これについて行けていない。流通構造にも問題があり、生産性が悪化している。もはやイノベーションなくしては生き残れない。求められるイノベーションは絶対的価値を創造するものでなければならない。当社でも改革を進めようとしており、その幾つかを紹介したい。

 一つはカード事業で、これまでの営業支援から、単独の事業として利益を上げることを目指す。カードでは割引からポイント制に移行し、外部と連携してポイントの利便性を高めている。それによって優良顧客を獲得することも可能になる。また金融面では決済手段を中心に店頭業務の効率化を進める。

 今やデジタルは経営の根幹に関わっており、デジタルなくして経営戦略なし、とも言える。当社では今年情報戦略本部を創設した。目標は「新しい価値創出」と「生産性の向上」である。たとえば、商品が回っていかない地方店で、バーチャルリアリティを利用し首都圏のショップを見てもらい、購入してもらう。また店頭接客に関するデータを集め、売上の高い人と平均的な人との違いについて分析を行っている。今後はIoTショップを展開するなど、リアルの強みを最大化するデジタル活用を考えている。マーケティングでもデジタルマーケティングやデータベースを活用するための新しい会社を合弁で設立した。

 イノベーションを進めるには人財が重要である。インフラとしての人財育成に力を入れている。販売インセンティブ制度を導入し売上に応じて報酬が変動する方式を取り入れた。20代の女性を中心に外部出向も進めている。また海外の出店を若い女性中心で行ったりしている。みな戻ってくると大きく成長している。今後求められるリーダーは人間力と広い視野・豊かな発想をもつ必要がある。一方で、常識にとらわれない、分野のスペシャリストも育てていこうとしている。

銀行の情報システムの将来像~FinTechが示唆する未来~
日本銀行 決済機構局 FinTechセンター長 岩下 直行氏

 少し前までは、金融制度にあわせて次の事業をつくる時代であった。今は、イノベーションが拡大し、FinTechに代表されるように、次々に生まれる新しいサービスに対し、規制が追いかける時代に変わった。

 FinTechはシリコンバレーで誕生した。リーマンショックなどの影響で、銀行の融資が滞ったり銀行そのものの信用が失われたりする中で、シリコンバレーのベンチャー企業は銀行を代替するサービスの提供を開始した。そのため、米国では銀行とガチンコ勝負のFinTech企業が多い。そもそも、伝統的な銀行とベンチャーではIT活用の方法が違う。それはBefore internet、After internetという言い方にもつながる。銀行システムは、インターネットがなかった時代、莫大な費用がかかり、精緻な事業計画のもと大企業にしか作れないものであった。一方ベンチャーは、インターネット上にクラウドができ、オープンソースでいろいろなことができる世界でサービスを作り上げている。ただ、消えてなくなる数も多い。いわば、FinTechは新しい金融の実験場といえよう。

 FinTechの投資額を見ると、日米で大きな差がある。日本の投資額が66億円に対し、米国は1兆2千億円。200分の1である。投資額がこれ程までに小さいにも関わらず、日本では書籍類で特集が組まれるなどブームの様相を呈している。実は、これらを購入しているのは銀行員。銀行がFinTechに代替されてしまうのではないか、という不安感の表れと考えられる。

 投資額の差異は、一つには日米欧の銀行システムの構造に起因する。日本では、勘定系システムを中心に密結合で作り上げているため、ちょっと変えようとすると、どこに波及するかなどすべてを検証する必要がある。一方、欧米は、システム間の連動が少ない疎結合のため、柔軟性が高く、一部だけの変更がしやすいので新しい技術、サービスを取り入れやすい。

 また、ITに対する考え方の違いも大きい。IT投資を増やした理由を聞くと、日本では圧倒的にコスト削減が多い。これは守りの投資。米国では顧客サービスの強化、ビジネスモデルの変化などポジティブな回答が多い。これは攻めのIT投資。日本も、イノベーションを興すには、FinTech企業などのサードパーティの力を借り、攻めのITへの転換を図る必要がある。

FinTechの活性化に向けた金融庁の取り組みと今後の課題
金融庁 総務企画局 参事官 松尾 元信氏

 FinTechの進展への対応は、平成28年度「金融行政方針」でも大きな課題として挙げられている。現状認識として、邦銀のITへの投資が一つの課題だと考えている。米銀のIT投資はサービス高度化など変化への投資が過半を占めるのに対し、邦銀では2割以下でしかない。欧米ではIT分野の企業と提携するオープンイノベーションも進んでいる。

 こうした認識のもと、今回の銀行法等の改正では、ITイノベーションの急激な進展に的確に対応することを柱の一つとした。この中で最もやりたかったのは「金融関連IT企業等への出資の容易化」である。銀行がITベンチャーなどの持分を持ってよいということを法律で位置づけ、欧米のような戦略的な動きを後押ししたいと考えている。出資対象となる、金融サービスの向上に資する業務についても幅広に取っていきたい。また法改正には、金融グループ内での共通・重複業務の集約の容易化が含まれたが、これもFinTech投資の集約・高度化につながるものと考えている。

 金融庁では、このほかにもFinTechへの対応を行っている。その一つがFinTechサポートデスクである。イノベーションを伴う新たな事業分野で開業を考えている企業などからの相談に、ワンストップで対応するものである。8割が法令解釈の問合せで、対応期間は平均4日と行政としてはかなり速く、好評を得ている。

 もう一つは決済高度化のためのアクションプランである。決済は金融庁がFinTechに取り組むきっかけにもなったもので、多くの論点が検討されているが、その中で重要なのが、XML電文への移行とオープンAPIのあり方の2つである。後者について、日本のように大半の人が銀行口座を持ち、銀行への信頼も厚い国では、FinTechは銀行との協業で進展すると考えている。協業の推進には、銀行が共通基盤を公開し、その上でFinTech企業がサービスを提供できるようにするオープンAPIが重要になる。現在、全銀協で検討会を設置し、検討を進めようとしている。

 日本の金融機関がFinTechの動きに乗り遅れると海外勢に負けてしまうのではないかとの懸念も提示されている。様々なFinTechベンチャーが台頭し、金融機関はそれらと協業を進める。そうすることで、コストも含めた競争力をつけていくことが必要と考える。

セブン銀行における金融犯罪対策の取り組み
株式会社セブン銀行 金融犯罪対策部 部長 井手 智典氏

 当社の口座開設は主にネットにより非対面で行っており、個人口座の数は160万を数える。今回は振り込め詐欺や口座譲渡を中心に口座の犯罪対策を紹介する。

 当社では、2008年から口座取引のモニタリングシステムを導入している。このシステムは、不正口座に特徴的な取引パターンをシナリオ化し、入出金・振り込みなどにおける不正取引をリアルタイムで検知するものである。検知口座の取引内容や属性等を調査し、口座名義人への架電等により口座利用停止の要否を判断する。しかし、疑わしいだけでは名義人に対抗することは難しいのが実情であった。

 そこで確信をもって口座利用停止等を判断する根拠として、ATM取引画像の活用を開始した。疑わしい取引の場合、ATM取引画像を確認する。口座属性情報と照合して性別・年齢が相違したり、同一人が複数名義のカードで連続して取引したりしていた場合は、自信を持って一部取引停止や口座利用停止の判断ができる。

 もう一つは、ネットバンクにアクセスする端末を特定できるシステムを導入したことである。同一端末から複数の口座にアクセスしている場合など、端末やIPアドレス情報等をネガ登録することで、なりすましや口座譲渡の関連口座の抽出や不審アクセスの早期把握が可能になった。

 当社では、こうした取組みの結果、口座謝絶件数が1年前に比べ3.2倍になるとともに、利用停止の件数は3割減と未然防止の効果が現れてきている。

 金融犯罪の撲滅には金融機関全体での取り組みが欠かせない。当社では、他の金融機関のカードでの不審取引が判明するとその状況を当該金融機関に積極的に連絡している。提携金融機関からの調査依頼に応じた対応も始めた。また、検知や調査・判定のレベルアップや効率化を進めるため、金融犯罪に関する事務等を子会社に委託する取組みも開始している。金融犯罪への対応は、競合する場でなく協力する場と考えており、連携して金融犯罪の未然防止を進めてまいりたい。

ICT技術を活用した業務改革~決済のペーパレス化の実現と最新の取り組み~
株式会社鹿児島銀行 医業支援部 部長席付 藪谷 真喜子氏

 鹿児島銀行は、2015年4月、NRI、ITベンダーのインビオ社とともに、システムソフト開発やコンサルティングを主な業務とするサザンウィッシュ社を設立した。同社が販売する製品の開発には行員が全面的に関与しており、われわれのノウハウが詰め込まれている。

 電子稟議システムRouteも、肥後銀行との経営統合に伴い、行内での稟議をより迅速に行うことが喫緊の課題となる中で開発された製品である。いかにもwordにて紙稟議を作成しているかのような工夫を凝らして、電子化への円滑な移行を実現した。

 Routeシステムの特徴は3つある。第1に、いつでも、どこでも決裁できること。外出中もPCやタブレットで閲覧・決裁が可能なため、意思決定を高速化できる。第2に、どんな複雑な決裁ルートも設定できること。内容によって異なる決裁者を自動判定する機能もつけた。第3に、大量の紙資料をペーパレス化できること。また、Routeはオープンソースを利用しているため、費用を抑えられる上、導入する各社の事情に応じて自在にアレンジすることができる。

 一方、サザンウィッシュが新しい取り組みとして、特に力を入れているのは、データ収集のプラットフォーム開発である。現在、TrovoとMeecapという2つのプラットフォームを持っている。

 Trovoは、ネット上の情報、地理的な情報、衛星からの情報などを収集した法人情報データベースのプラットフォーム。一方、Meecapは、ユーザーが持っているさまざまなノウハウを蓄積するため、キーボードなどの操作をデータとして記録できるプラットフォームである。これらのプラットフォームで収集した情報をAIを使って分析し、面白い成果物を作り出せるような仕組みを開発していきたいと考えている。

FinTechにおけるオープンイノベーションについて~顧客ニーズの実現に向けた取り組み~
株式会社マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻 庸介氏

 マネーフォワードは、お金という課題をテクノロジーを通じて解決することをビジョンに掲げ、個人向けのPFM事業および中小企業向けクラウドサービス事業(会計・給与など)を2本の柱としてビジネスを行っている。様々な金融機関や企業と提携し、新しいサービスを推進している。

 近年、スマホの普及により人々の行動が劇的に変化した。情報やサービスに簡単にアクセスできるようになり、顧客ニーズが多様化している。また、開発コストの低減により新サービスやアプリが次々と台頭し、一気にマーケットを席巻するものもある。サービス提供者にとっては競争が激しくなり、便利なサービスもすぐ陳腐化してしまう。ユーザーのサービスに対する経験値や期待値が上がり、より良いものを求めるようになっている。

 このように外部環境の変化が激しい中で、企業や金融機関がユーザーのニーズに合ったサービスをすべて自分で行うことは難しい。B2Cの世界では何がはやるか、「いいサービス」とは何なのか誰にも分からない。大企業の成功体験では対応できないものであり、他企業との連携を積極的に活用するオープンイノベーションが必要になる。開発コストは劇的に低下しており、いろいろなアイデアを試すことができるが、成功するアイデアは一握りであり、スピード感のある開発と失敗が許される組織・文化が必要である。そうしたやり方はベンチャーの方が得意だと言える。企業や金融機関は、自社で行う分野と他者と組む分野をしっかりと整理し、ベンチャーと協業することで、革新的なアイデアを素早く実現することが可能になるだろう。

 当社の行動指針はいくつかあるが、最も重視しているのがユーザーフォーカスである。エンジニアもユーザーの声を身近に聞けるようにし、ユーザーからのフィードバックを活かしながらサービス開発を進めている。顧客目線での開発が何よりも大切である。

デジタルインシュアランスの動向
SAP Head of Industry Business Unit Insurance Robert Commings氏

 保険業は従来、商品志向だったこともあり、保険の対象ごとに商品が細分化されていた。しかし、顧客志向へ変化する中で、起きてしまったことに対応する損失補償型から、なるべく起きないようにする損失防止型へと移行しつつある。これは旧来の保険の枠組みを超えたもので、ヘルスケア、自動車、セキュリティシステムといった異なる業界から参入したり、そうした業界と協業したりするケースも増えている。

 こうした変化を受け、世界中で保険会社の経営陣は、保険業はどう変わろうとしているのか、新しいビジネスモデルの出現にどう備えるか、さまざまな会社とどうパートナシップを結ぶか、盛んに議論している。

 たとえばデジタル化戦略の最高責任者は、IoTやAIといった新技術を活用して新しいビジネスモデルをどう確立するか検討している。マーケティングの最高責任者は、商品をただ売るのではなく「顧客体験」を売る場合は市場や販売方法がどう変わるのか考えている。そしてCFOは、こうした新しい商品やビジネスモデルの詳細な収益性を検討している。

 デジタルビジネスの世界に一歩踏み出すにはどうすればよいのか。第一に、マーケティングや商品チームだけでなく、経営陣全体が業界で何が起きているか全体像を理解することである。そして第二に、会社内にイノベーションについて検討し推進する組織を持つことである。こうした組織は短期的に成果を出すよう圧力がかかりやすいので、いかに守るかも課題となる。

 SAPでは、お客さまの会社にイノベーションを起こすため、デザインシンキングという手法を用いる。デザインシンキングでは、顧客が何を欲しているのか感じ取ろうとする。そこからアイデアを構築し、プロトタイプをつくり、テストする、というサイクルを繰り返す。SAPではこうしたデザインシンキングのワークショップを開催して、世界中の多くの企業を支援している。

資産運用会社におけるマーケットデータ管理戦略
Cutter Associates Director Mary C. Storrs

 Cutter Associatesは、欧米を中心に200を超える顧客基盤を有し、業界の専門知識等をベースにして、リサ-チ、ベンチマーキング、コンサルティングビジネスを展開している。なおコンサルティングで得られた知見はリサーチへ反映される等、相互に連携し相乗効果をもたらしている。Cutterリサーチでは、メンバーシップ制を採用し、リサーチテーマはメンバーの要望を聞いて決定している。1テーマにつき50~100ページにわたるリサーチペーパーは、メンバーへのインタビューやディスカッション、ベンダーアクセスを通じて作成されている。リサーチ結果の閲覧もメンバー限定であるため、ベンダーから独立した公平なリサーチを実現している。

 本講演では2016年のリサーチテーマの一つであった「市場データ管理」について紹介した。Cutterメンバーのうち約50社から得たアンケート結果によると、多くの運用会社がデータのライセンスコスト、ベンダー管理、データソース管理などに課題を抱えている。契約条件の交渉を含む契約管理、請求書管理等といった市場データ管理の業務については、多くの場合、スプレッドシートなどのツールを利用して、または全くの手作業での管理が行われるなど非効率な運営がされている。またライセンスコストを除くコストの75%は人的コストであり、市場データの管理業務にユーザーの時間が割かれていることも確認された。一方で、データライセンス管理の徹底や、市場データ管理の一元化などを通じてコスト削減に成功している運用会社もある。そして、外部のベンダーサービスを利用することで改善を図っている運用会社も3分の2ほどいることも確認された。

 最後に市場データ管理システムを提供する主要4ベンダーについて、それぞれのシステムの機能評価、ベンダーの健全性評価結果を紹介した。Cutterのリサーチレポートでは、評価項目をまとめヒートマップを作成し、それらを総合的に勘案してベンダー採用の手がかりを提供する。なお市場データ管理分野の今後の展開としては、レポート作成機能、ワークフロー管理機能、ウェブベースの機能提供、ASP型のサービス提供などが注目されている。

資産運用会社におけるリスク管理システムの活用動向
Cutter Associates Research Analyst Jonathan Chandler

 資産運用会社や機関投資家にリスク管理システムを提供しているベンダーの間で、ユーザーのニーズ変化などを受け、新しい動きがいくつか見られる。

 ここ数年、運用会社は投資対象を非伝統的資産に拡大している。それに対応するため、リスク管理対象投資資産を広げたり、マルチアセットクラス、ファクターベース投資をサポートするリスクモデルの充実化を図っている。また運用会社に対する規制や顧客の要求に対応するため、より洗練されたストレステストやシナリオ分析のツールの開発などを進めている。さらに運用会社のコスト削減の動きを受けて、リスク計算に必要な、投資資産の時価や属性データを一括で提供したり、データマネジメントやリスクレポーティングを通して本来顧客が行っていた機能を提供したりしている。

 こうした動きとともに、現在、ユーザーの関心を集めているのは、バークレイズが提供する分析プラットフォームPOINTの運営停止(※1)にどう対応するかである。POINTはポートフォリオ構築、リスク管理、パフォーマンス測定・要因分析など幅広い機能をカバーしており、現時点で、これを代替する単一ソリューションは存在しない。多くの会社が新しいソリューションを探している。

 Cutter社の会員である資産運用会社などに実施した調査によれば、半数以上が近々新しいリスク管理システムへの変更を検討しているという。上述のさまざまな環境変化を考えればあまり驚く結果ではないかもしれない。

 今後を展望すると、投資プロセスにおけるリスク分析の重要性はますます高まり、フロントオフィスからきめ細かい深い分析が求められるようになるだろう。その結果、フロントからバックまで互いに意思疎通しやすいようにシステムの統合が進む可能性がある。また技術革新はこれまで以上にサービスに影響を与えるだろう。ユーザーにおいてはIT基盤のアウトソースやクラウド技術に対する関心が高まる一方、ベンダーはAIを活用した機械学習、予測分析など新しい機能の開発を進めている。

※画像はクリックすると拡大します。

1) Bloomberg社への売却に伴いサービス内容が変更される。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

蒲谷俊介

蒲谷俊介Shunsuke Kabaya

資産運用グローバル事業部
主任システムコンサルタント
専門:資産運用関連のソリューション企画

富永

富永洋子Hiroko Tominaga

事業企画室
コンサルタント

導入事例

國見和史Kazushi Kunimi

金融ITイノベーション事業本部
コンサルタント

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