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P2P金融に対する規制を本格化する中国

2016年11月号

NRI北京 金融システム研究部長 神宮健

P2P金融に対する規制の発表を受けて、中国のP2P金融は淘汰の時期に入った。一方、インターネット金融のリスクとチャンスをいかにバランスするかという挑戦は今後も続く。

2016年はインターネット金融の規制元年

 中国のインターネット金融にとって、2016年は規制元年となっている。昨年7月に人民銀行を始めとする10部門が連名で「インターネット金融の健全な発展の促進に関する指導意見」(指導意見)を発表し規制の大枠を示した。その後、ネット上の支払サービスについての規制が発表されるなど、現在は、各分野の規制が発表される段階にある。

 今年8月、銀行業監督管理委員会(銀監会)等は「インターネット貸借情報仲介機関の業務活動の管理暫定弁法」を発表・実施した。これはいわゆるP2P金融(インターネット上の貸借)に対する規制である。

 中国政府は、P2P金融は中小・零細企業の資金調達難の緩和に資するはずであるとの観点から、P2P金融に即座には規制をかけず状況を観察していた。銀監会によれば、今年8月時点で、正常なP2Pプラットフォームは2,235社で資金調達残高は6,803億元である。その一方で、経営に問題のあるP2Pプラットフォームは1,978社である。具体的な問題行為としては、P2Pプラットフォームの自社への融資や事実上の銀行業務を行っていることがあり、また、昨年以降は資金調達をしているプロジェクトが虚偽であるといった大型の詐欺事件も発生し社会問題となっていた。今回の規制により、中国のP2P金融はこれまでの急拡大の時期から業界内の淘汰の時期に移行すると見られる。

 今回の弁法では、インターネット貸借とは個体(自然人・法人・その他組織)間のインターネットプラットフォームを通じた直接貸借であり、インターネット貸借情報仲介機関(P2Pプラットフォーム)はもっぱらインターネット貸借の情報仲介に従事する金融情報仲介企業と定義した。

 その上で、第一に融資集中のリスクを防ぐため、小額の融資を主とすることが徹底された。具体的には、同一自然人の同一のP2Pプラットフォームからの借入残高上限は20万元(法人は100万元)、異なるP2Pプラットフォームからの借入残高総額上限は100万元(法人は500万元)とされた。

 第二に、過去数年で明らかになった問題行為がネガティブリストの形で禁止された。具体的には、P2Pプラットフォーム自社に対する融資、資金プーリングと貸出(無許可の銀行業務)、貸し手への担保提供・元利保証、借り手のプロジェクトの満期別分割、自社の資金運用商品等の金融商品の販売と他の金融機関の金融商品の代理販売、資産証券化に類似した業務あるいは資産バンドリング・資産証券化・信託資産・基金などの形式による債権の譲渡、資金調達するプロジェクトの真実性や収益の見通し等についての虚偽・誇張、借入用途が株式投資・先物契約・仕組み商品・その他デリバティブ等の高リスクのプロジェクトの場合の情報提供、クラウドファンディング業務、等の13の行為である。

 第三に、顧客資金(貸し手、借り手)は銀行で分別管理される。P2Pプラットフォーム会社による顧客資金プーリングや持ち逃げを防ぐためである。銀行は、資金の取引について形式上チェックする責任を負うが、融資プロジェクト及び貸借取引の真実性についての審査責任は負わない。

 第四に、P2Pプラットフォームは登録制となる。P2Pプラットフォームは情報仲介機関であり信用リスクを負わないため、最低資本金等のハードルの導入は見送られた。但し、電信業務経営許可を取得しなければならない。

予想されるP2Pプラットフォームの淘汰

 現時点で、P2Pプラットフォームが違反状態にある場合、今後1年以内に改めなければならない。金額上限の規定については過半数のプラットフォームで違反状況にあると見られており、従来のビジネスモデルが成立しなくなる場合もあると見られる。

 また、資金管理について銀行と契約を結び、電信業務経営許可を取得しているP2Pプラットフォームも少ない。銀行に関しては、実質審査の責任はないものの、やはり損失が生じた場合の自身の評判への影響を懸念していると見られる。また、電信業務経営許可の取得も簡単ではないとされる。このため、P2Pプラットフォームの淘汰が進み、数百社程度に減少すると予想されている。

 規制面でも課題を残している。金額上限規制の運用には、統一的なデータベースを作る必要がある。また、インターネット金融の特性として広域でサービスを提供するため、規制当局である中央の銀監会と地方政府がうまく分業・協力する必要がある。

 さらに、禁止された証券化類似業務は、売掛債権、ファイナンスリース等を原資産として広く行われている。シャドーバンキングに利用されている面もあるが、一方で、認められている資産証券化業務ではカバーし難い部分に金融サービスを提供しており、新たなビジネスの機会を示しているとも言える。今後も新たな金融の形が出てくる可能性があり、リスクとチャンスをいかにバランスするかという課題は今後も残る。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

神宮健Takeshi Jingu

NRI北京
金融イノベーション研究部長
専門:中国経済・金融資本市場

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