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日本から1時間以内でブラジルに行く方法

2016年8月号

投資情報サービス事業部 主任コンサルタント 金島一平

いよいよリオデジャネイロ五輪が開幕する。日本人選手の活躍を一目見ようと、現地を訪問予定の読者もいらっしゃるだろう。しかし、日本からみてブラジルは地球のほぼ真裏。飛行機を乗り継いで行っても丸一日以上かかる。「今回ばかりはテレビで我慢」という方も多いのではないだろうか。

 ここで、思考実験をしてみよう。日本から地球の中心に向けてトンネルを掘る。ひたすら掘って裏側まで貫通させるとブラジルに到達する(正確にはブラジル沖の大西洋上に到達する)。このトンネルに日本側から飛び込むと、勢いをつけなくとも地球の中心に向かって進むことができる。「落下する」という方がしっくり来るだろうか。

 空気抵抗がない自由落下を仮定すると、地球の中心部をおよそ時速29,000km(マッハ23~24)で通過し、ブラジル側には40分程度で到着する計算になる。晴れて、日本から1時間以内でブラジルに行く方法が見つかった、というわけだ。

 現実には地球の中心には超高温のマントルや核があって、貫通トンネルを掘ることは不可能に近い。しかし、これを単なる夢物語と片付けないのがエンジニアの魂だ。「真空チューブ列車(Vactrain)」という技術が古くから研究されている。これは、空中、地下もしくは海底にチューブを設置し、チューブ内を真空にして走行抵抗をゼロに近づけることにより、地球の重力や最小限のエネルギー付加だけで人員や物資を輸送しようというものだ。アメリカ大陸とブリテン島を結ぶ大西洋トンネル計画など長い研究史を持つが、2013年にかのイーロン・マスク氏が「ハイパーループ(Hyperloop)」という構想を発表したことで脚光を浴びるようになった。

 ハイパーループは、フリーウェイ等に併設したアルミ製の真空チューブ内で、人が乗る「ポッド」を磁力で浮上推進させる。飛行機並みのスピードと、鉄道と比較して安価な建設コスト、そして何よりゼロ・エミッションで環境に優しいという特長をもつ。現在、米国カリフォルニア州・ネバダ州で各種試験が始まっており、2018年を目標に有人での走行を予定しているそうだ。

 真空環境下での安全性の確保など、実用化に向けて解決しなければならない課題は多いという。しかし、世の中を便利にできるアイデアを、困難に直面しながらも事業化し実現させようとするスピリットに学ぶべきことは多いだろう。

 マスク氏は以前、「失敗する恐れが大きかったとしても、価値のあるプロジェクトは推し進めるべきで、意義のあることだ」と語っている。日本国内でもFinTechの取り組みが加速しているが、既存の枠組みやこれまでの常識に捉われず、積極的に挑戦する姿勢を大切にしたい。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

金島一平Ippei Kanashima

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