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日銀ネットの外為円決済とSWIFTのISO20022移行

2016年6月号

証券グローバルソリューション事業一部 上級コンサルタント 鈴木那津子

日銀ネットで行われている外国為替の円決済は、昨年よりISO20022フォーマットで実施されている。
今後SWIFTの従来のメッセージ形態(MT)がISO20022に移行するにあたり、日銀ネット決済部分も影響を受ける可能性がある。

新日銀ネットでの外国為替円決済はISO20022フォーマットで電文送受信開始

 2015年10月13日より新日銀ネット(※1)が全面稼動された。新日銀ネットでは、将来一層のSTP(※2)が期待できるとして、特定業務の電文(※3)についてはISO20022(※4)メッセージフォーマットが採用されている。

 外国為替円決済についても、この業務で使われる各種電文が、新日銀ネット全面稼動時からISO20022フォーマットにて授受されるようになった。外国為替円決済とは、海外の個人や法人が日本へ円の送金を行う場合や、金融機関間で外国為替の取引を行った場合に、日銀ネット上で行われる金融機関間の円決済を指す。

 日銀ネット上で授受される外国為替円決済の電文は、SWIFT Net(※5)で授受されているメッセージと密接な関係にある。海外の銀行から日本の支払先への送金依頼があった場合、その支払指図はSWIFTのネットワーク(SWIFT Net)を通じて送信される。SWIFT Netにおいては現在、銀行間でのメッセージ授受の標準としてFINというメッセージサービスが用いられており、そのフォーマットはMTフォーマット(※6)(以下MT)となっている。したがって、この支払指図で円決済を行うにはMTを日銀ネットのISO20022に変換しなければならないことになる(図表参照)。

 また、銀行間でのメッセージ送受信はSWIFTのMTが主流であるため、金融機関内における社内ネットを利用した拠点間のメッセージ授受についてもMTフォーマットが利用されているケースも多い。したがって、外国為替円決済制度の直接参加金融機関(※7)においては、SWIFT Netもしくは社内ネットを通じ受信したMTを日銀ネットのISO20022フォーマットに変換しスムーズに送信する、またその逆に日銀ネットより受信したISO20022フォーマット電文をSWIFT Net用もしくは社内ネット用にMTへ変換して送信することが非常に重要となっている。

円滑な外国為替円決済は全国銀行協会の外国為替円決済制度により実現

 スムーズな送受信に必要となるのが両フォーマットの変換ルールである。日銀ネットの外国為替円決済は、全国銀行協会が運営する「外国為替円決済制度」に基づいて行われている。この制度では、制度参加金融機関に関する所定の手続き・規則などのほか、資金の送り手と受取り手の事務を効率化し、決済を円滑に進めるべくSWIFTのMTと日銀ネットのISO20022フォーマットの変換ルールについても定めている。

 ISO20022フォーマットはMTと比較すると、設定可能な情報量(情報を設定する項目数)が多いのが特徴である。すなわちSWIFT Netを通じあるいは社内ネットを通じ授受されているMTを日銀ネットで決済するべくISO20022フォーマットへ適用しようとした場合、ISO20022フォーマットから見ると一部の情報不足が発生するのである。

 「外国為替円決済制度」の変換ルールは、上述の情報不足補完なども勘案した上で、MTで授受される情報量をうまくISO20022フォーマットへ適用するものである。現時点の日銀ネットにおける外国為替円決済は、この全国銀行協会が定めた日本ローカルのISO20022フォーマット設定ルールに基づくことで円滑な決済が行われていると言える。

将来のSWIFT Net ISO20022移行に向けて

 現状、銀行間におけるSWIFT Netでの標準メッセージがMTであることは前述のとおりだが、SWIFTでは2000年から、MTと共にISO20022フォーマットでの送受信も可能となっており、現在はMTからISO20022フォーマットへの移行可能期間にあたる。リーマンショックによりSWIFTのISO20022移行は一旦トーンダウンしているような状況ではあるが、近い将来もう一度ISO20022へ移行する機運が高まる時期がくるであろう。

 その際に各金融機関において必要となるのは、SWIFT Net接続部分や社内ネット上で利用されているMTのISO20022化である。日銀ネットの外国為替円決済のように既にISO20022化された部分であっても、I SO20022フォーマットの利用ルールに変更が生じるのであれば、もちろんシステム改修が必要になる。

 また、外国為替円決済は、関係する金融機関が特に多いペイメント業務の一部であり、関係する金融機関のすべてで一斉にMTからISO20022への移行が行われることは考え難い。その場合、移行時期が異なる金融機関とSWIFT Net上でメッセージ授受を行うためにはMTとISO20022フォーマットの相互互換の対応が継続して必要になる可能性もあり、金融機関におけるシステム対応は大規模になり得る。

 このように、MTからISO20022フォーマットへの移行は、SWIFT Netの参加金融機関数を考えると長い期間を要する可能性がある。日本の「外国為替円決済制度」におけるISO20022フォーマット利用ルールもその移行期間中に影響を受け続け、外為円決済の直接参加金融機関においては都度システム対応が必要になることも考えられる。MTからISO20022メッセージへの移行がどの時点で行われるかは未定だが、過渡期に大きな影響を受けることは間違いない。金融機関ではそうした事態への対応を考慮しておくことも必要であろう。

1) 決済インフラのネットワーク化や金融取引のグローバル化、さらには今後の金融サービスの内容や様々なニーズの変化を見据え、2015年10月13日に全面稼動開始された日銀ネットのリニューアル版を指す。
2) STP(Straight Through Pricessing):約定から決済までに至る一連の作業を、標準化されたメッセージフォーマットを用いシステム間自動連携させることによってシームレスに行うことを指す。
3) 日銀ネットで行われる決済は、大きく分けると当預(当座預金)系、国債系、外為(外国為替円決済)系とあるが、そのうち国債系と外為系の主要電文にISO20022フォーマットが採用された。
4) ISOにより制定された、金融業務で利用される通信メッセージの標準化手続に関する国際規格を指す。
5) SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)Net(Network):ベルギーで設立された非営利の協同組合が提供している、高度に安全化された金融通信メッセージサービスのネットワークを指す。
6) FINはSWIFTのメッセージサービスの一つで、MT(Message Types)*** という定型化されたメッセージを送受信できる。外国為替円決済に係るメッセージは、例えばMT202(銀行間送金用のメッセージ)やMT103(顧客送金用のメッセージ)である。
7) 日本における外国為替円決済制度は、日銀ネットでの円決済を自社で行う金融機関と、委託する金融機関にわけられる。そのうち、前者を直接参加金融機関と本文中で呼称する。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

鈴木那津子Natsuko Suzuki

証券ホールセール事業一部
上級コンサルタント
専門:フィクストインカム・為替に係るIT サービス

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