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醜いアヒルの子の見分け方

2016年6月号

ホールセールソリューション企画部 上級研究員 外園康智

ある国の王様は無類のカエル好きで、カエルに似た献上物をもってきた者に、褒美を与えることにした。さっそく3人が、それぞれ「バッタ」「サンショウウオ」「カエルの置物」を持ってきた。さて、どれが“カエルと似た特徴を多く持つ”のか?

 世界には「カエルA」「バッタB」「サンショウウオC」「カエルの置物D」の4つしか存在しないとしよう。“似ている度”を比較するため、これらの“特徴点”を考えてみる。例えば、カエルAとバッタBの共通の特徴は“跳ねる”だ。上記の4つのもので、このような「特徴」を考えられる組合せは、
 (A)(B)(C)(D)
 (AB)(AC)(AD)(BC)(BD)(CD)
 (ABC)(ABD)(ACD)(BCD)
 (ABCD)
の15パターンがある。各組の特徴は、(ACD)は“両生類”、(ABC)は“生き物”、(B)は“昆虫”、(AC)は“泳ぐ”などだ。

 この15の特徴点の中で「カエルA」と「バッタB」に共通するのは4つである、と同時に「カエルA」と「サンショウウオC」も4つ、「カエルの置物D」についても同じである。つまり、どれもカエルと共通の特徴点の数は同じになり、“同じ”だけ似ていると言える。残念ながら誰もご褒美をもらうことはできない。

 これは「醜いアヒルの子定理」(※1)と呼ばれ、ブール代数という数理論理学の定理である。童話の展開とは異なるが、白鳥の子とアヒルの子は、アヒルの子同士と同じだけ似ていて見分けられないのだ。例では対象を4つに限定したが、「椅子E」「うさぎF」など、比較対象をいくつ加えても同じことが証明できる(※2)。

 この定理は、直感にかなり反するように思えるが、特徴量をすべて同等に扱うことで成立する。逆に言うと、我々人間は、物事を比較・分類する際に、特徴的な部分やデータにのみ注目し、評価の重みづけをしていることが分かる。主観や目的がないと、何か意味のある分類や情報にならないのである。

 これは抽象数学にさえあてはまる。数字や幾何図形などの集合に対して、要素間の距離の計り方や分類・グルーピング方法は様々あり、アプリオリには決まっていない。

 ちなみに直感的には「カエルとバッタ」と「カエルとサンショウウオ」では、前のペアの方が似ている気がする。しかし後者だと思う人もいるらしい。“何を似ていると思うか”を基準に人をグループ分けすると、揉め事は少なくなる気がする。

1) 物理学者の渡辺慧氏が1969年に証明している。
2) 比較対象に“すべての存在”を加えれば、考えうる“特徴点”はすべて網羅される。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

外園康智Yasunori Hokazono

金融デジタル企画一部
上級研究員

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