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泡と消えた700億円

2016年4月号

投資情報サービス事業部 副主任コンサルタント 五十嵐瑛一

英国に行ったことがある人であれば、誰もが現地のパブを目にしたことと思う。英国におけるパブは日本の居酒屋・レストラン・宿屋を合わせたような存在であり(ロンドンのような大都市では酒の提供をメインとしている所も多いが、地方に行くと宿屋も兼ねた大きなパブがある)、パブに一度も行ったことがない英国人はよほど偏屈な人でもない限りいないだろう。

ロンドンを代表する金融街シティでも、スーツ姿のビジネスマンが真っ昼間からパブの外でグラスを片手に談笑している光景が見られ、日本の金融街とは異なる雰囲気に驚かされる。パブはその名の通りPublic Houseの略であり、日本語にすると公共の家、つまり誰でも入って寛げるお店だ。

 読者の皆さんは“パブ”と言われて何を連想するだろうか。日本でも良く飲まれるビールを挙げる方が多いと思う。ただし英国で伝統的に飲まれているビールはエールビールであり、日本で主に流通しているラガービールとは異なり炭酸が少なく、常温(といっても地下のタンクから汲み上げるため多少は冷えている)で飲むのが通常だ。

 また、ビールを注文する時に使用する単位はPint(パイント)であり、1Pintは約568ml、ビール大瓶と中瓶の中間くらいの容量がある。そんなに飲めないという読者の方もいるかもしれないが、ご安心を。Half Pint(284ml)で注文することも可能だ。

 そして英国では、生ビールを販売する際には内容量が1Pintであることを示す器を用いることが、何と法律で規定されており、多くのパブでは1Pint丁度が入るPintグラスを利用している。これならば誰もが誤魔化されることなく正確な量を飲めるはずである。しかし過去には、実際に提供されるビールは95%(即ち540ml)しかなく、これにより消費者は年間4億ポンド(約700億円)損をしているという調査結果があった。

 その原因の1つが、ビールにはつきものの泡である。丁度1Pint入るグラスだと、泡の分があるため正味1Pintを注ぐことができないのだ。これを受けて、英国ビール・パブ協会(British Beer and Pub Association)が正味で1Pintを注ぐように勧告を出したという経緯がある。そのため現在では、Pintグラスのギリギリまで、ほとんど泡がないように注いで提供したり、1Pintのメモリをつけた少し大きなグラスを用意して、そのメモリまで注いだりといった対応をしているパブも多い。

 経済活動にも泡(バブル)はつきものであるが、弾けた後に中身が空だった、ということにならないように注視したいものである。ちなみに、英国は昔からバブルに縁があり、バブルの語源になった南海泡沫事件(South Sea Bubble)も同地で発生した出来事である。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

導入事例

五十嵐瑛一Eiichi Igarashi

資産運用グローバル事業部
主任コンサルタント

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