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世界最大手のグローバル信用情報機関エクスペリアンの変貌

2016年4月号

金融ITグローバル推進部 上級コンサルタント 岡野靖丈

世界最大手のグローバル信用情報機関エクスペリアンの収益は、2015年度48億ドルを超えており、市場を席巻している。M&A等によるエリア戦略、プロダクト・サービス戦略強化が、そのドライビングフォースになっている。

高収益を維持するエクスペリアンの実態

 現状、グローバルな信用情報機関(※1)のビジネスの中心は北米市場である。移民が多い米国では、クレジットカード作成や融資申請だけでなく、ローン金利や保険料率、住宅の賃貸、就職などで、支払履歴やそれに基づいて計算されるクレジットスコアが参照されており、クレジットスコアは生活していく上で大きな意味を持つ(※2)。クレジットスコアを提供している企業は多数存在するが、最大手は、1980年に設立されたアイルランドのダブリンに本社を置くエクスペリアン(Experian)である。当社の収益は2015年度約48億ドルと、2位のエクイファックス(Equifax)のほぼ倍であり、営業キャッシュフローマージン32%、EBITDAマージン34%、ROE26%超の高収益企業である。

 地域別では、図表1のとおり、英国・アイルランド21%、ブラジルを中心とした南米市場18%、EMEA・アジア大西洋10%と収益全体の半分を北米以外で稼いでおり、グローバル化を加速させている。競合企業のエクイファックス、トランスユニオン(TransUnion)もグローバル化を進めているが、収益の8割近くを北米市場に依存している状況である。

 またビジネスライン別では、南米市場等の市場拡大の影響で信用・消費者サービスが70%を占めるが、残りの30%は米英を中心にマーケティング・意思決定分析サービスで収益を上げている。顧客別でも、保険を含めた金融34%、対消費者が20%を占めるが、残りの46%は金融以外のリテール・自動車・ヘルスケア・通信・ユーティリティ・メディア&テクノロジー等と幅広い。

エクスペリアンの事業戦略

 エクスペリアンは、個人の信用データに加え、行動データ(※3)(購買データ、位置データ、SNSデータ等)や顧客データ(売上データ、マーケティングデータ、リスクデータ等)、外部データ(業界データ、各種経済指標等)といった多様なデータを分析し、マーケティング・意思決定分析・債権回収・不正検知・顧客ポートフォリオ管理などのソリューション開発を強化してきた。例えば、初期与信から債権回収に至るスコアリングモデルとポリシールールの統合管理や、企業の保有する顧客データベース等を分析し、どの顧客にどのようなオファーをすると最大の収益が獲得できるのかといったシミュレーション、更には、なりすましによる不正口座開設・不正ログイン・不正オンライン取引の検知等、多様なサービスを提供している。図表2のとおり、これらのソリューション開発やターゲット国の信用情報機関業務を開拓・強化するために、積極的に買収・提携等を進める組織体制を整備し、実施してきた。

 これらのソリューション開発の体制として、ビッグデータ分析を行うデータラボを米国・英国・シンガポール等の拠点に設け、多数のデータサイエンティストを雇用してきている。対顧客については、セールスパーソン、コンサルタント、アナリスト等が連携し、顧客のニーズに対応できる体制をとっているほか、法規制対応の専門組織も整備されている。

 上記のように、エクスペリアンは、単に信用情報を収集・提供する信用情報機関ではなく、各地域の特性に合わせ、多様なデータを収集・分析し、マーケティング・意思決定分析まで幅広いサービスをグローバルに提供できる、個人・企業のインサイトに注力した総合データソリューション企業に変貌している。

日本の信用情報機関の状況

 日本では、個人向け貸付けの総量規制実施に伴い、指定信用情報制度(※4)が導入されており、貸金業者が借り手の総借入残高を把握できる仕組みが整備されている。信用情報機関は厳格に情報を管理し、過剰貸付を防止することが役割であり、エクスペリアンのような多様なサービスが提供される状況にはなっていない。実際、匿名加工情報のルールや、どんな行為がプライバシー侵害にあたるのかといった規制は未整備であり、社会・文化的な違いも大きく、そのまま上述のようなサービスが受け入れられるとは考えにくい。しかしながら、2015年9月に改正個人情報保護法が成立し、パーソナルデータの利活用を後押しする動きもあり、環境は徐々にではあるが変わりつつある。今後日本に合ったサービスの創出も考えられるのではないだろうか。

1) 個人信用情報の収集及び提供を行う機関。米国では信用情報として、個人の職業、住宅情報、世帯構成、資産・収入、ローン等の支払い状況などが該当する。
2) FACT(Fair and Accurate Credit Transactions)法により個人は自身のクレジットレポートを閲覧することが可能である。
3) 米国のプライバシー規制の方針は、基本的には自主規制であるが、FTC(Federal Trade Commission 公正取引委員会)がFTC法5条の「不公正または欺瞞行為の禁止」条項により取り締まる。プライバシー保護の包括的な法律がない米国企業では、利用目的や取得情報などの収集に予め承諾した個人のみを対象にデータを扱う(オプトイン方式)。
4) 個人に関する指定信用情報機関は、全国銀行信用情報センター(銀行系)、㈱CIC(クレジットカード系・信販系)、㈱日本信用情報機構(消費者金融系)の3社である。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

岡野 靖丈

岡野靖丈Yasutake Okano

金融システムリスク管理部
上級コンサルタント
専門:コーポレートガバナンス、企業・事業価値評価

注目ワード : 社外取締役

注目ワード : 指定信用情報機関制度

  • 2010年01月01日 ソリューション一覧 Daybreak/PL

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