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2016年はインターネット金融規制元年に

2016年3月号

NRI北京 金融システム研究部長 神宮健

2016年はインターネット金融に対する規制元年となり、中国のインターネット金融はこれまでの急拡大の時期から秩序ある発展と業界内の淘汰が進む時期に移行すると見られる。

インターネット金融規制元年へ

 中国のインターネット金融は、「インターネット金融元年」と呼ばれた2013年以降、余額宝(※1)の爆発的人気等を受けて急速に拡大してきた。P2P金融(インターネット上の個人間貸借)では、野放図な発展の結果、資金の返済不能や持ち逃げといった問題会社が全体の約3分の1を占めるという影の部分が大きいものの、中国政府は中小企業金融等の育成の観点から状況を観察してきた。

 2015年7月にようやく最初の規制である「インターネット金融の健全な発展の促進に関する指導意見」(指導意見)が発表され、規制の大枠が示された(※2)。この指導意見を受けて、2015年12月には、P2P規制の草案やアリペイに代表されるネット上の支払サービス提供機関についての規制が発表された(※3)。2016年はインターネット金融に対する規制元年となり、中国のインターネット金融はこれまでの急拡大の時期から秩序ある発展と業界内の淘汰が進む時期に移行すると見られる。

昨年12月に発表された2つの規制

 まず、銀行業監督管理委員会(銀監会)が2015年12月28日に発表した「貸借情報仲介機関の業務活動の管理暫定弁法」の草稿(パブリックコメント募集用)を見る。草稿段階であり今後の修正が予想されるが、P2P金融を主な対象とした規制の基本的な考え方がわかる。

 草稿では、インターネット貸借とは、個体(自然人・法人・その他組織)間のインターネットプラットフォームを通じた直接貸借であり(主に小額)、インターネット貸借情報仲介機関は、もっぱらインターネット貸借の情報仲介に従事する金融情報仲介企業と定義される。つまり、資金の貸し手と借り手の間で、情報を仲介し両者をマッチングさせるサービスである。また、貸し手と借り手の資格条件、情報の真実性、プロジェクトの真実性・合法性についても審査する。

 貸倒れのリスクは貸し手が負い、情報仲介機関であるインターネット貸借機関は信用リスクを負わない。このため、インターネット貸借機関の設立については最低資本金等のハードルの導入は見送られ、ライセンス制でなく登録制となっている。

 一方、過去数年で明らかになった問題行為は明示的に禁止された。具体的には、関連取引(P2Pプラットフォーム会社の株主といった関係者等への資金提供)、P2Pプラットフォーム会社による資金プーリングと貸出、担保提供・元本保証、借り手のプロジェクトの満期別分割、他の金融機関の金融商品の販売(※4)、借り手の資金用途が株式投資の場合のサービス提供等である。

 リスク防止のため、P2Pプラットフォーム会社自体の資金と貸し手・借り手の資金は分別管理される。また、貸し手と借り手の資金は第三者の管理機関である銀行により管理されなければならない(※5)。地方の金融監督部門は、登録後の機関に対して評価・分類を行う。

 業界のインフラ整備としては、銀監会がインターネット貸借業界の中央データベースを構築する(※6)。

 次に、同じ12月28日に人民銀行から発表されたネット上の支払サービス提供機関向けの規制「非銀行支払機関インターネット支払業務管理弁法」(2016年7月1日実施)の内容を見る。

 ここで、インターネット支払は「小額で迅速な支払い」と性格付けられており、小額支払いのチャネル提供という原点が示された。また、実名制が重視されており、本人確認の方法によって、支払上限は開設後累計1000元、年間累計10万元、同20万元と異なっている(※7)。

 支払機関の口座上に記録される顧客の資金残高については、顧客が支払機関にその保管を委託する形となり、当該資金残高に対応する銀行口座は顧客名でなく支払機関名となる。したがって支払い口座上の資金は預金保険の対象外である。

 支払機関は、「金融機関及び貸出・資金調達・資金運用・担保・信託・両替等の金融業務に従事するその他の機関の口座を開設してはならない」とされた。支払機関内の口座間で取引が行われると資金の流れが外部から見えない。そのため、金融機関がその中に入ってしまうと、マクロ的な金融リスク管理上問題が生じる恐れがあることから採られた措置と思われる。

 また、支払機関は顧客のリスク評価管理制度・メカニズムを構築し、リスク準備金制度と取引賠償制度も構築しなければならない。

 規制面では、人民銀行が支払機関の資質、リスク管理コントロール制度等の要素を考慮し、優良機関を優遇する分類監督管理を行う(※8)。

今後の展開

 今後の動向を見ると、第一に、上述した当局によるインターネット金融機関の評価や分類管理等を通して業界内の淘汰を進めると思われる。

 競争激化が予想される中で、2015年以降、P2Pプラットフォーム会社は資金調達に動いている。2015年12月に宣人貸がナスダックで上場を果たし、他にも上場の意図を示すところがある。また、2016年に入り、数社がPEファンド等から資金を調達している。こうした資金調達は今後も続くと見られる。

 一方、規制面では、枠組みはできつつあるものの、従来型の縦割り行政から必ずしも脱却できていない。例えば、昨年の株価急落の際問題となった場外信用取引にはP2Pも絡むなど、各金融規制当局が効率的に連携する必要は高まっている(※9)。インターネット金融が発展する中、長年議論されている金融規制の見直し、具体的には金融商品・サービス機能に基づいた統一的な規制の運用を急がなければならない。

1) アリペイに口座を持つ顧客が、口座上の遊休資金をマネーマーケットファンドに投資する仕組みである。本誌2014年3月号参照。
2) 本誌2015年9月号参照。
3) 「個人銀行口座サービスの改善と口座管理強化に関する通知」(2015年12月25日)も発表された。インターネットでの口座開設の規定を含む。
4) 銀行の理財商品、証券会社の資産管理プラン、投信、保険商品、信託商品等。
5) 管理機関(銀行)はプロジェクトや取引情報の真実性の審査責任は負わない。
6) また、銀監会は業界の自主規制組織を指導する。
7) 非対面方式で、一つの方法での本人確認の場合、Ⅰ類口座となり、口座の残高利用による支払い上限は開設後累計1000元と大きく制限される(小額、臨時の支払い)。対面方式・あるいは非対面方式で三つ以上の方法で本人確認の場合は、Ⅱ類となり、上限は年間10万元となる。同じく五つ以上の方法ではⅢ類となり上限は20万元となり、金融商品の購入・投資も可能になる。
8) 優良な方からA、B、C類に分類され、顧客の一日の取引金額の上限に差をつける。
9) 場外信用取引は本誌2015年12月号参照。今回の規定でP2Pの株式投資への資金調達は禁止された。かりに昨年と似た事態に新たな規制枠組みで対応するとすれば、証券監督管理委員会と銀監会がうまく連携する必要がある。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

神宮健Takeshi Jingu

NRI北京
金融イノベーション研究部長
専門:中国経済・金融資本市場

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