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リニアモーターカーが地下鉄を走る?

2016年2月号

金島一平

皆さんはリニアモーターカーと聞いてどういったものをイメージされるだろうか。きっと疾風のごとく走り抜ける列車の姿だろう。しかし、もっと身近なところにもリニアモーターカーが走っているのをご存知だろうか。実は、東京の地下を走る都営大江戸線もれっきとしたリニアモーターカーなのだ。

 リニアモーターカーは推進方式で大きく二つの種類に分けることができる。

 ひとつは、車体を磁気で浮かせる方式で、一般にイメージされやすいタイプだ。磁気浮上(Magnetic Levitation)を略してマグレブとも呼ばれる(※1)。車体と軌道の両方に磁石を設置するリニア同期モーターを用いており、車体を浮上させて走行抵抗を減らすことができるため高速性能に優れている。国内では山梨実験線が有名で、昨年4月21日には時速603kmの有人走行ギネス世界記録も達成している。しかしながら、軌道敷設と保守に手間がかかることもあり、実用化は容易ではない。現時点で高速での営業運転を行っているのは、上海浦東国際空港と市内とを結ぶ上海トランスラピッドに留まり、期待される日本の中央新幹線・品川~名古屋間の開業時期も2027年頃といわれる。

 もうひとつの方式が、都営大江戸線などで採用されている鉄輪式と呼ばれるものだ。地下鉄での採用例が多くリニアメトロと呼ばれることもある。車体のみに磁石を持たせ、軌道は通常の線路の間に金属板を設置するリニア誘導モーターを用いている。磁気浮上式のような高速化は望めないが、車体低床化によってトンネル断面を小さくできることによるコスト削減効果、勾配区間での走行性能の高さが注目され、主に地下鉄技術として世界的に普及が進んでいる。国内では東京、大阪、福岡など、すでに多くの政令指定都市の地下鉄で採用されている。また、国外ではボンバルディア社が早期から輸出ビジネスに力を入れており、アジア圏ではマレーシアへの導入を皮切りに、中国、韓国にも展開している。

 鉄輪式リニアモーターカーは、「浮上して高速に走行するもの」という固定観念から脱却し、リニアモーターという革新的な技術と線路を走る列車という既存概念を融合した鉄道業界におけるイノベーションの好事例といえよう。

 昨年はFinTech元年とも呼ばれ、国内金融機関においてITを活用した新たなビジネスモデルを模索しようとする機運が急速に高まった一年であった。2016年は、革新的技術と既存の金融インフラの融合から、数多くのイノベーションが生まれてくることを期待したい。

1) リニアモーターカーは和製英語で、国外ではマグレブが通称なのでご注意を。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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金島一平Ippei Kanashima

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