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アリババのインターネット金融業務

2016年1月号

NRI北京 金融システム研究部 研究員

2016年、中国のインターネット金融は、規制が整う中でさらなる発展が期待される。業務の範囲・規模においてトップを走るアリババを例にインターネット金融の現状を見てみよう。

インターネット金融でトップを走るアリババ

 インターネット金融元年と言われた2013年以降、発展を続ける中国のインターネット金融では、インターネット会社大手のいわゆる「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセント)がしのぎを削っている。アリババは中国最大のE-コマースプラットフォーム(※1)を持つことで、金融事業展開でも優位にある。ここでは、アリババを例に中国のインターネット金融の現状を見ることにする。

 アリババは金融事業を統一管理するために、2014年10月に「螞蟻金融サービスグループ」(以下、「蟻金融」)を設立した。「螞蟻」(蟻)という名の通り、当初から中小・零細企業や個人がサービス対象である。アリババの目標は、水や電気のように生活に不可欠な商業インフラになることである。

個人消費者向けサービス

 個人消費者は2つの携帯アプリを通してアリババの金融サービスにアクセスできる。一つは「支付宝」(アリペイ)、もう一つは2015年8月発表の「螞蟻聚宝」である。

 アリペイは消費に関する様々な機能(主に決済サービス)を提供する。蟻金融によると、2015年6月末の時点で、アリペイの実名ユーザー数は4億を超えている。スマートフォンの普及により、アリペイの使用領域はオンラインからオフラインに拡大し、水道光熱費の支払から病院の予約まで、生活の隅々にまで浸透している。

 ここに、個人信用評価の「芝麻信用」とバーチャルクレジットカードの「螞蟻花唄」が加わった(図表参照)。

 「芝麻信用」のサービス対象は、他のアリババ金融商品と同様、アリババの商品にとどまらない。信用度が高点数の消費者は一部のホテルやレンタカー業者で優遇される。また、信用記録が「非常に良好」(950点満点中750点以上)と判断された場合、オンラインでシンガポールとルクセンブルクのビザを取得することまでできる(※2)。

 一方、理財(資金運用)機能に集中したのが「螞蟻聚宝」である。蟻金融は、新たな機能が増え続けるアリペイから理財機能の部分を分離した。「螞蟻聚宝」はユーザーに基金(投資信託)売買、株式情報(A株・香港株・米国株を含む)等のワンストップ理財サービスを提供する。基金売却の際の口座入金時間を見ると、業界平均「T+3」に対して、「螞蟻聚宝」は「T+1」である。将来は余額宝(※3)での株式売買等の機能も取り入れる予定である。

 「螞蟻聚宝」と協力する銀行、資産管理会社、保険会社、担保会社は120社以上である。80社以上の基金会社が「螞蟻聚宝」で基金商品を販売している。

企業向けサービス

 企業向けのサービスとしては「螞蟻小貸」(小額貸付)、「網商銀行」(銀行)、「螞蟻金融雲」(クラウドコンピューティングサービス)がある。また、金融機関向けのITインフラ強化の一環として、アリババは2014年に大手金融ITベンダーの恒生電子を完全買収している。

 「螞蟻小貸」はタオバオ等で収集したビッグデータに基づき、零細企業・個人事業主向けに「小額、短期間、いつでも利用可能」の小額信用貸付を提供している。2015年7月末時点で、累計で170万社の零細企業に対し、4500億元の融資を行っている。不良債権比率は約1.5%で(※4)、主に大企業に融資する商業銀行とほぼ同じ水準である(※5)。

 また、蟻金融は「網商銀行」の株式の30%を所有しており、最大株主となっている。同行は国内銀行として初めてすべてのコアシステムをクラウド上に構築した。ビッグデータを利用して信用評価を行い、それに基づき融資(担保不要)を実施するという、「信用を富に変える」ことを目指している。同行は銀行ライセンスを持つことで、融資以外に現金管理やサプライチェーン・ファイナンス管理等の総合サービスも提供する。なお、「螞蟻小貸」の業務は最終的に「網商銀行」に移行される予定という。

ネット保険・証券

 上述のような個人の消費・資金運用、中小企業向けのサービスの他、アリババは保険や証券ビジネスにも進出、あるいは進出を目指している。

 2012年、アリババは中国平安・テンセントと「衆安在線」というインターネット保険会社を設立した。アリババは、持株比率19.9%で最大株主である。中国平安とテンセントはそれぞれ15%を保有している。「衆安在線」は2013年11月6日に開業したが、従来の経営方式と異なり、支店を作らずに完全にインターネットを通じて保険の販売と保険金の支払を行う。2015年10月末の時点で、「衆安保険」の累計顧客数は3.39億人、保険契約件数は29.36億件を超えている。

 証券業務については、蟻金融は徳邦証券の75%の株式を取得しようとしている(※6)。ただし、当該取引はまだ当局の認可を取得していない。

 このアリババの例に見られるように、中国においてインターネット金融は広く浸透している。2015年7月には金融当局等は『インターネット金融の健全な発展の促進に関する指導意見』を発表した(※7)。2016年にはこれに基づいた法律面の整備が進み、インターネット金融が秩序立った発展を見せることが期待される。

1) アリババ(Alibaba.com)は世界最大のB2B国際貿易E-コマース。淘宝(タオバオ、Taobao)と天猫(Tmall)はそれぞれ国内最大のC2C・B2Cプラットフォーム。
2) 海外金融機関との協力により、海外でのアリペイの使用も推進されている。
3) 詳細は金融ITフォーカス2014年3月号を参照。
4) 2015年9月12日付『21世紀経済報道』より。
5) 銀監会によると、2015年6月末の主要商業銀行の不良債権比率は1.50%。
6) 2015年11月4日付、上海証券報より。
7) 中国人民銀行・工業と情報化部(工信部)・銀監会・保監会・証監会等10部門連名である。その後、保監会は関連細則を発表した。銀監会・証監会の規定は未発表。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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