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ディスクロージャー制度見直しの論点

2016年1月号

未来創発センター 主席研究員 大崎貞和

金融商品取引法、会社法、取引所規則に分かれて盛り込まれているディスクロージャー制度の整理に向けた検討が動き出した。各制度の目的や見直しの影響を見極めつつ、企業の負担軽減と投資者保護の確保を両立させることが求められている。

検討課題とその背景

 金融庁の諮問機関である金融審議会に「ディスクロージャー・ワーキンググループ」が設置され、昨年11月から議論を開始した。その主な狙いは、上場企業に求められる情報開示の内容の整理や非財務情報の開示のあり方についての検討である。

 上場企業は、金融商品取引法(以下「金商法」という)、会社法、取引所規則に基づいて、様々な情報の開示を求められている。それぞれの開示制度は、その目的や機能が異なり、開示すべき情報や開示の方法・時期なども多様である(図表参照)。

 もちろん、制度の目的が異なる以上、開示内容が同じでないのは当然とも言える。とはいえ、情報開示の主体となる上場企業からは、同じような情報を異なる形、タイミングで開示するように求められることに対して疑問の声も上がっている。

 そこで、2015年6月に策定された政府の経済成長戦略には、持続的成長に向けた企業と投資家の対話を促進するといった観点を踏まえつつ、投資家が必要とする情報を効果的かつ効率的に提供するために金融審議会において検討を行うとの内容が盛り込まれた。

 そこには、異なる制度間の重複の排除や相互参照の活用、実質的な監査の一本化、四半期開示の一本化、株主総会関連の日程の適切な設定、ガバナンス等の非財務情報の開示を充実させるための方策といった具体的な検討課題が掲げられている。

焦点となる四半期開示

 ワーキンググループにおける検討で一つの焦点となることが予想されるのが、四半期情報開示のあり方である。

 現在、取引所規則の求める適時開示の一環としての四半期決算短信と金商法上の継続情報開示の一つである四半期報告書が制度化されているが、平均的な開示時期は、前者が四半期終了後34日、後者が41日となっている。開示時期にそれほど開きがないのであれば、どちらかの制度に一本化してはどうかといった意見もある。

 しかし、仮に四半期決算短信を廃止すれば、業績予想情報の開示頻度が低下するとか、たとえ一週間とはいえ、既に決算情報がまとまっている以上、四半期報告書の開示までの間、会社関係者によるインサイダー取引の懸念が高まるといった問題が想定される。

 他方、四半期報告書制度を廃止するといったことになれば、取引所規則による情報開示だけで、虚偽開示の実効的な防止など、開示情報の質の確保が可能なのかという点が課題となろう。もともと取引所における自主的な開示制度として導入された四半期情報開示が、2006年の法改正で法定化されたという経緯を踏まえれば、情報開示の実質的な後退との見方もなされるかも知れない。

 もっとも、四半期情報開示をめぐっては、短期の業績変動を意識し過ぎた短視眼的経営姿勢を招くとか、証券アナリストや機関投資家の企業に対する見方の短期化につながるといった見解も一部にある。海外市場における制度の動向なども見極めつつ、突っ込んだ議論を行うことが求められるだろう。

電子化の課題

 従来、もっぱら紙の書面を株主に対して郵送するという方法で行われてきた事業報告書など会社法上の情報開示のあり方も重要な論点となろう。最近のIT技術の発達やスマートフォン利用の拡大などを踏まえれば、インターネットなどを活用した情報開示の電子化・効率化が可能と考えられるためである。

 もっとも、この問題をめぐっても、印刷・郵送費用の節減といった点に過度にとらわれることなく、多角的な検討を進めることが望まれる。

 日本市場では、個人投資家が株主として相当な存在感を発揮している。その背景には、会社法が書面投票制度を認めていることもあり、個人による議決権行使がある程度まで積極的に行われているという事情がある。

 従って、会社法上の情報開示の電子化を考える上では、株主総会の招集通知と議決権行使書面が事業報告書とともに郵送されることが、個人投資家の株主としての意識を高めているといった側面への配慮も欠かせないだろう。今回の検討の出発点にコーポレートガバナンス改革や投資家と企業の対話促進といった問題意識があることを踏まえれば、株主の投資先企業への関心低下を招くのでは本末転倒と言わざるを得ないからである。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

大崎貞和

大崎貞和Sadakazu Osaki

未来創発センター
フェロー
専門:証券市場論

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