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(いまの)人工知能の限界とは?

2016年1月号

最近、人工知能についての期待や懸念があちこちで表明されている。いずれコンピュータの処理能力が人間を上回るようになり、もはや人間が不要になるのではという説だ。

 この問題を理論的にきちんと検討する場合、結局のところ問題は、人間の役割をどこまで機械で代替できるか、というものに尽きる。そして、野村総合研究所でもつい先日、人間の労働の半分近くがITで代替可能という共同研究成果を発表している。

 当然、人間の枠組み設定能力や、職が持つ作業の複雑さに基づく批判は出ている。だがもう一つ、最近だんだん増えてきた批判がある。人工知能やロボットは、やっぱりまだ人間を代替できるほど賢くはなれないんじゃないか、というものだ。

 もちろんこれは昔からある批判だが、近年のディープラーニングやビッグデータ解析は、こうした限界を突破できるようにも思えた。かつて多くの政府が挫折した自動運転が、そうした成果を活用して成果を出してしまったことも希望の源泉ではあった。

 が、実はアメリカの自動運転の実験地の周辺では、おもしろいことが起こっているという。子どもたちがいたずらで、ボール紙で手製の「止まれ」標識を作るのだそうだ。でも愚かな自動運転車は、それを見てその場でずっと止まり続けてしまう。

 つまり機械学習や人工知能は、確かにあるパターンなどの抽出はうまい。でもその学習結果を見て、意図的にその裏をかくようなイタズラや悪意には、実はまだかなり弱い。各種のセキュリティ専門家もこうした点は指摘している。技術だけではセキュリティは確保できない。つまり自動化できない部分は依然として大きいのだ。もしそうなら、機械や人工知能の活躍できる範囲は限られるのではないか?

 むろんいずれ、そういう限界を突破する機械や人工知能もできるのかもしれない。が、もし機械がそこまで賢くなるのであれば、人間がいかに融通の利く便利な存在かくらいは判断できるはずだとも思う。そして人間を適当におだてて(ゲームを見ればわかる通り、人間は画面にパターンを表示して動かすだけで、飯も食わずに必死でボタンを押し続ける)、奴隷と感じさせずにこき使うくらいのことは簡単にできるはずだと思う。

 さてこれが金融にどう関わってくるか? もちろんビッグデータ解析は金融分野の大きな力となりつつある。だがそれを超えて、経済学者のポール・クルーグマンはかつて、いまの金融業界の職の大半は、実は自動化できるから不要になるのでは、という説を述べている。そして部外者から見ると、この説が当たっている部分もありそうだ。さて、読者のみなさんの仕事は、いずれ人工知能やロボットに置きかえられてしまわないだろうか?

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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