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“MONEY × IoT”をテーマにハッカソン開催

2015年12月号

ITアーキテクチャーコンサルティング部 上野哲志

2015年10月6日~7日、野村総合研究所(NRI)は、幕張メッセで開催されたアジア最大級のIT、エレクトロニクス、家電の総合展示会CEATEC JAPAN 2015において「NRIハッカソン@CEATEC JAPAN 2015 ~Money × IoT ~ Hack for Money ¦ IoTの力で、お金とのつき合い方を変えてみよう!」を開催した。

NRI ハッカソン@CEATEC JAPAN2015開催

 金融をテーマにしたハッカソンは過去にも開催されているが、“IoT”と掛け合わせた設定は少なくとも国内では初めてのことで、多くの関係者から関心をお寄せいただいた。

 ハッカソン(Hackathon)とは、ハック(Hack)とマラソン(Marathon)を組み合わせた造語で、エンジニアやデザイナー、プランナーたちが集い、2~3日間の限られた時間で集中的に共同作業してソフトウェアを作り上げる、技術とアイデアを競い合う開発イベントである。ソフトウェアだけでなくハードウェアコンポーネントが扱われることも多い。1990年代後半、シリコンバレーの大手IT企業にて自社サービスを改良する際、担当者以外の多様な知恵を取り込むための開発イベントとして開催され、その後、企業のスピーディーなサービス開発手法として定着していった。フェイスブックの「いいね!ボタン」や「タイムライン」といった主要機能が生み出された仕掛けとしても知られている。近年では、日本国内においてIT業界だけに留まらず、製造業、メディア、アパレル業界まで幅広い分野で開催されている。

 ハッカソンは、外部のアイデアを取り込んで新しい発想を得ようとするオープンイノベーションの考え方と相性が良い。金融業界ではFinTechが熱を帯びているが、今回のハッカソンの目的の一つも、業界外に所属する参加者の新鮮な思考とIoTというIT活用の視点を持って、新しい金融サービスの種を創出することにあった。参加者の創作力を支援するために、技術シーズの面でも多様なインプットが必要であり、ハッカソンの開催に先立って、ベンチャーから大企業まで幅広く技術シーズを一般公募した。

 今回のハッカソンの流れは下記の通り。

  • 予選:アイデアソン(Ideathon)
    東京、大阪にて各1日ずつ、グループワークとアイデアピッチを実施。全体の1/4(9チーム:大阪4チーム、東京5チーム)が本選進出
  • 開発準備期間(3週間)
    アイデアやデザインのブラッシュアップ、技術シーズのキャッチアップ、システム開発環境準備
  • 本選:ハッカソン(Hackathon)
    CEATEC JAPAN会場(幕張メッセ)にて27時間の集中開発
  • 発表会
    開発終了後、一般聴講可能なオープンステージに場を移し、各チーム①3分間のプレゼンテーション、②タッチ&トライを実施。タッチ&トライとは、審査員が作品を展示している各テーブルを回り、プロトタイプを実際に触り、質疑応答を行って理解を深める審査方法。

 予選の前半は、事前選定した技術提供企業も参加し、参加者への技術レクチャーの後、アイデア出しを一体となって行った。予選審査では、アイデアの提供価値や新規性に加えて実装イメージの具体性を評価対象とし、本選審査は、実際にプロトタイプの完成を大前提として、アイデアが良くても実際に動かない作品は審査対象外とした。幸いにも今回はすべてのプロトタイプが動作し、審査対象となった。

オープンイノベーションをテーマにパネルディスカッション

 各チームの最終プレゼンテーションに先立ち、オープンイノベーションを推進している3人の識者によるパネルディスカッションが行われた。モデレーターは、NRI上級コンサルタントの寺田知太が務めた。

■村上 臣氏(ヤフー株式会社,執行役員)
学生時代に仲間とともに、ベンチャー企業「電脳隊」を設立。現在はヤフー・ジャパンのCMO(チーフ・モバイル・オフィサー)を務め、新事業開発も手掛ける。

■中垣 徹二郎氏(Draper Nexus Ventures, LLC マネージングディレクター)
20年弱の間一貫してVC投資現場に携わり、日本とシリコンバレーを中心に世界中に広がるネットワークを通じて投資先企業の育成支援に従事している。

■Brandon K. Hill氏(CEO & Founder, btrax, Inc.)
サンフランシスコに本社を置き、グローバル市場向けのイノベーション創出をミッションに、ブランディング、サービスデザイン、UXデザインサービスを提供する。

 パネルでは、①「なぜ今、オープンイノベーションなのか?」②「ベンチャー企業が大企業と付き合うコツは?」③「逆に大企業がベンチャー企業と付き合うコツは?」をお題にディスカッションが繰り広げられた。3名とも“オープンに語り合う場”からモノが生まれ始めていることを実感しており、ハッカソンのような短時間の取り組みに加え、数ヶ月をかけた事業アクセラレーションやベンチャーと大企業の協働の必要性を口にした。また、常に死活問題と対峙しているベンチャー企業の実態から、意思決定のスピードについて大企業側が歩み寄ることと、日本企業のマネージャー層がハッカソンやミートアップなどのイベントに積極的に参加して、ネットワークを広げることの重要性も語られた。最後はプレゼンの仕方のアドバイスについても言及し、参加者の発表に弾みをもたらすだけでなく、聴衆全体のプレゼンテーションへの意識を高めた。

本選進出チームによるサービス/アプリケーションの説明

 本選進出チームが創り出した作品を簡単に紹介する。

 ※プレゼンテーション順に 作品名(チーム名)

①Money Heroes(UTJ All Stars)

 UTJ All Starsは、カードの利用を楽しくするゲーミフィケーション・プラットフォームを開発した。クレジットカードや電子マネーのカードをスマートフォン(スマホ)のカメラにかざすとAR(拡張現実)でカードからキャラクターがスマホ内に飛び出してモンスターと戦うRPG。どんなカードでも使えるが、提携サービスのカードからはより強くレアなキャラクターが出現し、それらのカードを使えば使うほどゲームの中でも恩恵を受ける。提携会社からのお知らせをゲーム中のリワードをつけて利用者に届けること等を通し、カード利用促進の基盤を目指す。

②おもてなし電子マネー(Money Smart)

 Money Smartチームは、「電子マネーをIoT化する」として、ICカード型電子マネーの利用額、残高等の情報を、スマホやスマートウォッチ上にほぼリアルタイムで見える化する仕組みを開発した。非接触ICカードの電子マネー利用時に発せられる搬送波をキャッチする仕組みを活用し、通常は数日かかる明細情報をリアルタイムに蓄積することができる。外国人旅行者向けに旅行中の購買や交通機関利用の場所や時間、金額を共有して旅行体験をサポートしたり、ゲートなどの通過時におすすめ店を紹介するなどのサービス構築につなげるとしている。

③ナンデヤネンボット(ナンデヤネンボット)

 ナンデヤネンボットチームは、日々財布に入っているお金を認識し、使用状況をグラフ表示して見える化して使いすぎないよう注意する物理的な「お金管理アドバイザーロボット」を考案した。

④OSUSHI(アハト・ゲルト)

 アハト・ゲルトチームは、主に買い物をする主婦をターゲットとし、商品の購入に応じて製造元や販売店の“一株に満たない端株”を自動購入するサービスを考案した。消費者にとって不要となった端株については、OSUSHI内で売買することを可能とする。これにより無駄な端株を持つことがなくなり資産をより有効に利用できるようになる。

⑤Keel(Keel)

 Keelチームは、不透明で、フィードバックがなく、継続性がないという課題が残る「募金」をテクノロジーで変革させるサービスを考案した。まずは募金の募集団体が資金用途や入金額などの条件を設定する。集まった募金はいったんエスクロー口座に入金され、その額が設定した条件に達すると、募集団体に入金される。その後、募金者には支援物資の現地での位置情報やフィードバックメッセージがリアルタイムに送られる。さらに赤い羽根やホワイトバンドの現代版として、Bluetooth対応の「keelバッジ」を用意。IoTの観点で、募金協力店では寄付用のポイントを利用したサービスを提供してもらえる仕掛けを提供し、継続的な募金活動が行われる仕組みを披露した。

⑥MONEY PENNY(マッシュルーム)

 マッシュルームチームは、流動性の低さが課題となっているタンス預金問題を解決する「スマート貯金箱 MONEYPENNY」をIoT技術を駆使して開発。センサーにより物理的な入金額や入金者を自動的に認識し、ネットワークを介してスマホから履歴や残高確認ができる。金庫ごと盗難されてもGPSで場所の特定が可能。今後、タンス預金額に応じたリワードプログラムや、自分の持つ実物資産の市場価値を把握しながら売却したり、タンス預金や実物資産を担保にした資金借入など、ファイナンスアクションにつなげていくとした。(審査員特別賞 受賞)

⑦ユキチ先生(T-SHOCK)

 T-SHOCKチームは、おこづかいの仕組みを通して、小学校低学年の子どもたちに会計の仕組みを教えるお金の教育総合サービスを考案。子どもたちは、家のお手伝いや学習机での勉強シーンで「ユキチ先生」のIoTデバイスを通して楽しみながら、「働くこと」と「お金」のつながりや、「会計」の基礎的な考え方を学べる。将来的には、子どもたちの習熟度に応じて、より複雑な「お金」の仕組みや「会計」の概念を学べるようにすることを目指す。

⑧Cabuca(Team UniX)最優秀賞

 Team Unixは、日常の買い物の中に株取引が溶け込むことで、いつの間にかへそくりのように投資ができ、好きな商品ブランドを応援(投資)できるサービスを考案。専用のNFCカードをレジに当てるだけで、あらかじめ設定した比率を上乗せして精算され、上乗せ分で株式を購入するという。個人から集めた資金はCabucaファンドとして運用され、運用益、売却益は配当としてユーザーに還元される。また、商品ブランドの情報をさまざまな角度で提供し、ブランドとの親近感を生み出し、株との新しいつきあい方を提供する。(最優秀賞 受賞)

⑨パトロニアハット(パトロニア)

 パトロニアチームは、大道芸人への投げ銭(個人間送金)をクラウドで行う仕組みを開発。アプリで手軽に送金でき、ライブ中継とシンクロさせて、世界中の人から募金を受けることを狙ったサービスである。募金を受けるデバイスはどのような物でもよく、目的に応じて選べばよい。今回のハッカソンでは、大道芸人が投げ銭を受ける帽子をモチーフに、クラウドからの送金が増えるほど帽子が大きくなる、といった観客の気持ちを見える化できるデバイスを開発した。このシステムは、大道芸に限らず、ウェイターへのチップやオークションなど、さまざまなシーンへの応用を考えている。


 最優秀賞に輝いたTeam UniXの作品「Cabuca」は、「お金とのつき合い方を変えてみよう」という本ハッカソンのテーマにストレートに応えており、また、シンプルながら実用性が高いアイデアと完成度の高いプロトタイプも踏まえ、全審査員から高い評価を受けての選出となった。

 今回のハッカソンを通じて、お金をテーマにした様々なFinTechサービスのアイデアが生まれた。ハッカソンの特性上、BtoC型サービスが多かったが、金庫のIoT化や新しい募金のプラットフォーム作りなど、決してスケールの小さなものばかりではなかった点も印象的だ。本選選出チームの半分は、スタートアップ関係者で構成されており、技術力や創造力、事業化への熱意は、非常に高いレベルにあった。サービス化に向けてはまだまだ考慮する点が多々あるが、数チームはNRIが提供するアクセラレータープログラムにより事業化検討を継続するとのことで、将来の展開が楽しみである。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

導入事例

上野哲志Tetsushi Ueno

ITアーキテクチャーコンサルティング部
専門:大規模ITシステムの構築、計画策定、IT組織のオープンイノベーション推進支援

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