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30周年を迎える国債先物市場―取引所インフラにおける取り組み

2015年11月号

グローバルソリューション事業一部 営業グループマネージャー 木綿芳行

1985年10月19日に、東京証券取引所で国債先物取引市場が創設されて、今年で30周年となる。この10年間、投資家のニーズに応えるべく市場インフラでさまざま取り組みがなされてきた。しかし、国債先物はその取引高が伸び悩む一方、海外投資家の割合は半分を超すまでになった。日本取引所グループもデリバティブを重点課題としており、今後の取り組みに期待したい。

 1985年10月19日に、東京証券取引所で国債先物取引市場が創設されて今年で30年となる。この間、東京証券取引所(東証)と大阪証券取引所(大証。現、大阪取引所)の両市場インフラで、さまざまな取引制度の見直しや新商品の導入等が実施されてきた。2014年3月には、東証と大証のデリバティブ市場統合に伴い、先物取引は大阪取引所へ集約され、現在に至っている。

最近10年の市場インフラでの取り組み

 これまでの取引所インフラとしてのさまざまな取り組みの中で、2005年以降に実施された特徴的なものを、3つの観点(①グローバルシステムの採用、②取引時間の24時間化、③高速執行サービス)から取り上げてみたい。

 国債先物・オプション取引に関する取引制度見直しや新商品の導入等は、取引システムのリプレイスに合わせて実施される場合が増えている。主なシステム更改には、
①新派生売買システム等の稼動(2008年1月)
②オプション取引のTdex+システム導入(2009年10月)
③先物取引のTdex+システム導入(2011年11月)
④東証及び大証のデリバティブ市場統合に伴うTdex+システムからJ-GATEへの移行(2014年3月)
が挙げられるが、これらのシステムでは海外のシステムをベースに開発されたものも多い。

 2009年に稼動したTdex+システムは、当時NYSE Euronextグループ傘下の取引所であったNYSE Liffeで利用実績のあった取引システムであるLIFFE CONNECTをベースに開発された、世界標準の性能・機能を有したデリバティブ取引システムである。東証デリバティブ市場の開設以来、初めて海外取引所が標準仕様を提供する取引システムとなった。さらに、2014年3月のデリバティブ市場の大阪取引所への集約にあたっては、大証で利用していたNASDAQ OMXグループ社のClick XTをベースとし、当時世界最高標準の取引機能や注文処理性能を兼ね備えたJ-GATEへ統合した。このようなグローバルシステムの積極採用は、日本の市場インフラの中でも特徴的な動きである。

 取引・決済の24時間化に関しては、現在全銀ネットや日銀ネット等、他の市場インフラでも議論が進んでいるが、取引所はいち早く取り組んできた。先物・オプション取引市場における取引時間は、当初は現物市場とほぼ同様の時間帯であったが、順次拡大されている。現在は夜間立会(ナイト・セッション)において3時まで取引が可能であり、グローバルマーケットを意識して約19時間マーケットが開いている状況である。

 先物・オプション取引の高速執行サービスについては、高速取引を行う自己部門や顧客(特に海外投資家)を有する取引参加者を中心に、コロケーションサービスが提供されている。東証のプライマリサイト内に取引執行のプログラムをインストールした機器等を設置することにより、東証の取引システム及び相場報道システムとの距離を極小化し、気配情報の取得及び注文の送信をマイクロ秒単位まで短縮することを可能とした。

海外投資家のシェアが大きく拡大

 国債先物取引の参加者を見ると、2000年頃には2割以下であった海外投資家の取引シェアが、直近では5割を超える状況となっている(図表1)。これにはさまざまな要因があると思われるが、例えば、上記で述べたような取引所のグローバルマーケットを意識したさまざまな取り組みが、海外投資家の拡大につながったこともあると考えられる。

 一方で、長期国債先物取引の取引高は、ここ20年近く伸びるどころか横ばい傾向にある。金利、債券利回りとも短期から長期までほとんど動きがないため、そもそもディーリングやヘッジニーズが乏しくなっているということは想定できる。しかし、大阪取引所の主要商品である10年長期国債先物の取引高は年間8百万枚なのに対し、ほぼゼロ金利であるアメリカでは、世界最大のシカゴ商品取引所(CME)の主要商品である10年物米国先物の取引高が年間3.4億枚程度もある。取引単位が異なるとは言え、約40倍の開きがあるのが現状である。

今後も継続されるシステム向上への取り組み

 JPXグループは、中期経営計画の重点戦略の一つとして「デリバティブ市場の拡大」を掲げている。大阪取引所は、それをインフラ面から支える重要な取り組みとして、2016年央に次期デリバティブ取引システム(次期J-GATE)を稼動させる予定である。そのシステムリプレイスのタイミングで、さまざまな取引制度の見直しや新商品の導入が予定されており、夜間立会時間も2時間30分拡大(午前3時から午前5時30分)し、約21時間取引可能なインフラ提供を行う。

 現物株式の東証一部における海外投資家の取引シェアは6割を超えているといわれ、JPXグループとしては、デリバティブ市場拡大に向けてグローバル化に力点を置き、今後とも海外投資家を意識した取り組みを実施していくことは必要である。それに加えて国内投資家(特に銀行や機関投資家)による日本国債のデリバティブ取引がより活発になるとともに、それを支える取引所インフラとして、更なる取引制度の見直し等が進められることを期待したい。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

木綿芳行

木綿芳行Yoshiyuki Kiwata

証券ホールセール事業一部
部長
専門:証券決済サービス

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