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導入段階に入った国債T+1化

2015年10月号

金融ITイノベーション研究部 上級研究員 片山謙

国債の決済期間T+1化の実施目標時期が発表され、対応準備を進める段階に入った。特にGCレポ取引では、新しい取引方式の導入や海外市場で標準的な取引形式への一本化について市場参加者の取組みが求められている。

実施目標時期が定まった国債のT+1化

 日本証券業協会、証券受渡・決済制度改革懇談会は、国債決済期間T+1化(※1)の実施目標について2018年度上期で合意したと2015年6月に発表した。同懇談会の下部機関である国債の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ(以下、WG)は、発表時点においては、2018年5月の連休後を実施日と仮定して準備を進めるとしている。同発表によれば、市場参加者のうち業務/システム処理の対応が必要と判断される先において2017年夏頃にはストリートワイドテストを踏まえたシステム開発や社内テストが完了する見通しとされる。後述するように取引の内容により市場参加者ごとに対応内容が大きく異なるものの、主なシステム開発・社内テストは2016年から2017年夏までに進めることが求められよう。

 ここで決済期間T+1化とは、①通常の売買取引(アウトライト取引)と②特定の国債銘柄の調達・運用を目的とするSCレポ取引(※2)の決済期間を約定日の翌営業日(T+1)化することと、③資金の調達・運用を主目的とするGCレポ取引(※3)を約定日同日(T+0)化する決済期間短縮化の総称であり、それぞれについて次に説明する(※4)。

アウトライト取引やSCレポ取引のT+1化

 アウトライト取引やSCレポ取引ではこれまで、約定日の夕方から翌日にかけて照合作業が行われてきたが、T+1化では照合作業を約定日中という限られた時間内に完了することが求められるようになる(図表)。今後、日証協のRTGSガイドライン等に市場共通のタイム・スケジュールが定められる予定とされており(※5)、市場参加者におけるフロント部門からバック部門への情報伝達の迅速化に加え、市場参加者の業態や取引類型に応じて、フロントやバックそれぞれで取引先との照合タイミングの迅速化、照合データ授受の標準化や電子化が検討課題となる(※6)。

 取引件数が少ない市場参加者では、これまで照合データを紙ベースや電話で授受してきたところが少なくなく、T+1化に向けた体制が整っているか点検を始める時期に来ている。また、迅速化にあたり本格的なシステム対応ではなく、電子メールやウェブ・ベースのデータ授受を選択する場合においても、標準的なデータ・フォーマットの利用を進めることや、授受したデータを速やかに確認、社内連携する仕組みを最低限整える必要が出よう。

GCレポ取引のT+0化

 GCレポ取引は、アウトライト取引やSCレポ取引の終了後、両取引等に伴う在庫のファイナンスを主目的に債券ディーラーや信託銀行等を中心に行われることが多い。そのためアウトライト取引やSCレポ取引のT+1化にはGCレポ取引のT+0化がセットとなる(図表)。

 GCレポのT+0化実現に際して大きく二つの変更が予定されている。第一は「銘柄後決め方式」の導入である。T+0のGCレポ取引を既に実現している米国、英国では、担保銘柄の範囲を定めたバスケット銘柄を用いて金額ベースで約定し、個別の担保銘柄については約定後に第三者のサービス機関がバスケットに沿って割り当てる方式が普及している(※7)。このサービスがあることで担保割当業務の効率化が図られていることを一つの背景として、両国ではGCレポ取引が、幅広いファンドや金融機関の参加を得て、即日の資金取引手段として発達している。

 上記のサービスに準じて、日本では銘柄割当機能に絞って第三者のサービス機関が集中的に行う「銘柄後決め方式」が導入されることとなり、第三者サービス機関として、金融市場インフラの日本証券クリアリング機構(JSCC)が銘柄割当機能の整備を検討している。同方式への市場参加者の対応としては、「バスケット」と呼ばれる新たな銘柄による金額ベースでの約定、JSCCとのメッセージ授受(電文)フォーマットとして採用されるISO20022標準への準拠、清算機関としてのJSCC(※8)が定める証券保管振替機構(以下、「保振」)の決済照合システムとのインターフェイス整備などがあげられる。

 第二の大きな変更は取引形式の一本化である。高齢化が進み年金や資産運用の変化が見込まれる中、海外を含めた幅広い投資家に日本国債への投資を促進する上でレポ市場の利便性向上が一つの課題となっている。そこで日本でも海外市場で標準的な売買形式(新現先方式)の普及を進めるため、銘柄後決めGCレポ取引の導入に合わせて新現先方式への一本化を図る方針が明示された(※9)。業態によっては従来方式から新現先方式への移行となり、取引先等との基本契約書の見直しや顧客への説明、売買形式に即したシステム処理への改変が求められる。

GCレポT+0化の先に期待されるもの

 先に、海外を含めた幅広い投資家から見た利便性について触れた。日本銀行によれば、2014年7月末時点の非居住者から証券会社等へのGCレポ取引による資金供給残高は9.9兆円と、信託銀行からの12.3兆円に次ぐ第二位となるまでに拡大した(※10)。拡大の理由は定かではないが、業界関係者にヒアリングしたところ、欧州の国債市場でマイナス金利が拡がった結果、日欧の金利差に着目した取引が拡大しているのではないかという意見があった。その欧州におけるレポ市場では、2014年12月時点で、日本国債を担保とする割合が8.6%と前年同期の4.6%から倍増しており、市場が違いこそすれ日本国債への需要拡大が感じられる。GCレポのT+0化実現により英米並みの有担保での約定日同日決済(即日資金)市場が広がり、新現先への一本化により日本市場に直接参加する海外投資家が増えれば、本邦参加者の運用・調達機会の更なる拡大に繋がりうるのではないだろうか。

1) T+1化の対象はリテール取引や非居住者取引を除く、金融機関や機関投資家取引である。
2) Special Collateralレポ取引の略。
3) General Collateralレポ取引の略。
4) 日本では2012年4月にアウトライト取引とSCレポ取引がT+3からT+2に、GCレポ取引がT+2からT+1に短縮化された。
5) 週刊金融財政事情2015年2月23日「グランドデザインと市場参加者に求められる対応」(吉田聡)。
6) 取引類型ごとの対応策は日証協の「国債の決済期間の短縮(T+1)化に向けたグランドデザイン」に例示されている。
7) 第三者が担保銘柄の割当から決済まで代行するレポ取引はトライパーティ・レポと呼ばれ、サービス機関としては欧米の大手カストディ銀行や国際的な決済機関が代表的である。
8) 清算機関を利用する場合、利用手数料に加えて証拠金や清算基金など清算参加者の破綻に備えた資金の預託が求められる。預託額は参加者口座の過去一定期間の決済額や時価変動実績などに基づいて算出されるが、預託の資金負担は現在の参加者口座にかかるため、特に、参加者口座の受益者が日々変動するファンド等の清算機関参加には、負担のあり方について更なる検討が求められている。
9) 新現先への一本化は銘柄後決め方式GCレポ取引が対象であるが、グランドデザインでは「日本国債の国際化を踏まえ、銘柄後決め方式GCレポ取引のみならずレポ市場全体として新現先取引への移行を踏まえた検討を行うことが望ましいと考えられる。」としている。
10) 日銀レビュー「レポ市場のさらなる発展に向けて」(2015年3月)。なお、証券会社等へは短資会社を経由した信託銀行からの資金供給もあるため総額は12.3兆円より大きくなるものと推察される。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

片山謙

片山謙Ken Katayama

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