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投資信託の理解度を高めるための営業員の対応

2015年10月号

リテールソリューション企画部 コンサルタント 大井悠也

投資信託を対面で購入した人の約9割が金融機関の営業員から受けた説明に満足しているが、投資信託の投資経験が短い人ほど、理解度の低い人が多い。投資信託の理解度を高めるためには、金融機関による販売後の対応が鍵を握るだろう。

 近年、投資信託の販売ルールが強化(※1)されており、証券会社や銀行などの販売会社は購入者への説明を徹底している。そのなかで販売会社は、「購入者は金融機関が説明を徹底していることをどのように感じていて、説明内容をどこまで理解しているのだろうか」と不安に感じているようだ。

 そこで、野村総合研究所が2015年5月に対面で投資信託を購入した人を対象に実施した、インターネットアンケート調査とインタビュー調査(※2)の結果をもとに、投資信託の営業実態と購入者の理解度を確認した。

約9割は説明に満足し、納得して投資信託を購入

 投資信託の営業実態として、金融機関の営業員に対する購入者の印象や、金融機関の営業員から受けた説明に満足したかなど、4つの項目を確認した(図表1)。

 まず、購入者の7割は営業員に勧められて購入銘柄を決めたと回答している。投資信託を購入する意思がそもそもなかったと回答した人も多く、営業員から受けた勧めを信頼して購入しているものと考えられる。

 また、購入者の8割は営業員が十分な金融知識を持っていたと感じている。知識があると感じた理由をインタビューで確認したところ、「商品性や経済動向を教えてくれたから」と、商品以外の説明をしてくれたことを挙げている。「本や新聞やアナリストの記事もいろいろ読んでいるようで、よく勉強していた」との発言もあり、知識を学ぼうとする姿勢も印象に影響するようだ。一方、営業員の金融知識が低いと感じた人は「通り一遍の説明で、投資信託に精通している感じはしなかった」と言う。マニュアル通りの説明だけでは、知識が高くないと思われてしまう可能性があるので注意が必要だ。

 そして、購入者の約9割が営業員の説明に満足し、損失は自己責任であると納得して投資信託を購入している。説明に満足した人が多いのは購入した投資信託で利益が出ているからではないかと考えられるが、そうではないようだ。購入した投資信託に損失が出ている場合でも、利益が出ている人にはやや劣るものの、78%の人が説明に満足している。また、インタビューでは、説明が徹底されていることに対して「金融庁からの指示もあるそうで、リスクは毎回同じようなことを説明されるが、トラブルを防げるし良いことだと思う」という肯定的な意見も聞かれた。

経験によって高まる理解度

 前述の通り、購入者は営業員の説明に満足している。では、購入者はその説明を理解しているのだろうか。「理解度テスト」(※3)の結果から確認していこう。

 「理解度テスト」は、「組み込まれている株式や債券の価格変動によって、基準価額が変動する」といった基本的な問題から、分配金と基準価額の関係を問うような複雑な問題までの10問で構成されている。

 テストの結果、購入者の半数は理解度テストを8問以上正答していた(図表2)。投資信託の投資経験が長くなるほど正答数は多くなっており、経験を積むことによって理解度が高まっている。

 一方、投資信託の投資経験が短い人は、正答数が少ない。ただ、理解度が低い要因は、説明が不十分であることではないようだ。投資信託の投資経験が5年未満の購入者は「営業員は十分な情報を出してくれているが、説明を理解するだけの能力が私にはない。だが、自分が知りたいときに営業員にいつでも聞けるので、安心している」と述べており、用語が難しいことなどから説明を受けた時点では内容を理解できず、さらには、いつでも聞ける営業員がいることで、購入時に理解することを諦めてしまうこともあるようだ。また、「説明を受けたときは営業員が何を言っているのか意味が分からなかったが、分配金が出た後に営業員に質問し、再度説明を受けてやっと意味が分かった」と、購入者自身が経験することによって用語や仕組みが分かり、再度説明を受けることによって投資信託の理解が進む様子も、インタビューからうかがえた。

理解度を高めるためには、販売後の対応が鍵を握る

 これらの結果を受け、金融機関としては、購入者に対し販売後の継続的な対応を行うことが考えられる。理解度の向上に寄与するだけでなく、購入者の満足度が高まり、購入者との信頼関係の構築にもつながるだろう。

 購入者にとって、投資信託への投資は老後や生活のための資産を形成することが目的であり、学ぶことが主目的なわけではない。不利益を被らないよう、営業員が説明を徹底することは必要であるが、購入者は現状の説明に満足し、損失は自己責任であると納得して投資信託を購入している。であれば、その場では理解できない「販売時」の説明をこれ以上徹底するよりは、「販売後」に購入者自身が必要性を感じたときに適宜説明を行って購入者の理解度を効果的に高めることの方が、金融機関と購入者の双方にとって望ましいのではないか。

1) たとえば金融庁は、「平成26事務年度 金融モニタリング基本方針」で、販売会社が、リスクや手数料等の費用について十分な説明を行っているか、検証を行うとしている。また、日本証券業協会は「高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン」(平成25年)で、高齢顧客への投資信託の勧誘にあたり、社内規則を定めることを求めている。
2) 金融資産300万円以上を保有する20歳以上の男女のうち、インターネットアンケート調査は直近5年以内(2010年以降)に対面で投資信託を購入した1,949名の回答を集計した。さらに、インタビュー調査はそのうち10名に実施した。
3) 出題した問題は、①「組み込まれている株式や債券の価格変動によって基準価額が変動する」、②「元本割れをしない金融商品である」、③「為替相場が変わると外国債券は損失が出る可能性がある」、④「分配金は税金がかからない」、⑤「分配金は必ず出る」、⑥「運用成績がよくないときには、分配金が支払われない場合がある」、⑦「分配金には普通分配金と、特別分配金がある」、⑧「販売会社が、分配金の水準を決めている」、⑨「分配金が支払われた額だけ、基準価額は下がる」、⑩「金融機関に支払う手数料・費用は、購入時のみである」の10問である。この10問に対して、「正しい」、「正しくない」、「分からない」の3択形式で実施した。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

大井 悠也

大井悠也Yuya Oi

リテールソリューション企画部
コンサルタント
専門:リテール金融

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