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中国におけるインターネット金融規制

2015年9月号

NRI北京 金融システム研究部 研究員

中国のインターネット金融に関する指導意見が7月に発表された。今後は関連の細則が制定され、規則整備が進んでいくと期待される。

インターネット金融の発展を促進

 「インターネット金融の健全な発展の促進に関する指導意見」(以下、「指導意見」)が7月18日に発表された。これを受け、7月22日に「指導意見」の内容を詳細にした最初の規則として「インターネット保険業務監督管理暫定弁法」が発表された。その他の監督管理規則も制定中である。

 インターネット金融は、中小零細企業金融や消費者金融の新たなチャネルとしてここ数年注目されていたものの、監督管理・参入基準・規則が無い、いわゆる三無状態が続いており、規則の導入が待たれていた。今回の「指導意見」は、人民銀行、工業・情報化部、公安部、財政部、国家工商総局、国務院法制弁公室、銀行業監督管理委員会(銀監会)、証券監督管理委員会(証監会)、保険監督管理委員会(保監会)、国家インターネット情報弁公室の10部門連名であり、インターネット金融の影響が及ぶ範囲の広さがうかがえる。

 「指導意見」の序文には、「金融革新を奨励し、インターネット金融の健全な発展を促進し、監督責任を明確にし、市場秩序を規範化する」とある。昨年来P2P(※1)金融において破綻や詐欺が多く見られ、最近の株式相場変動の背景にあると言われる信用取引の一部もP2P等を利用したインターネット金融によるものであったことから、規制の方向が注目されていたが、基本的にインターネット金融を推進する姿勢が確認された。中小零細企業金融や消費者金融の新たなチャネルとしての可能性を当局が重視していることが背景にある。

 「指導意見」の内容は、インターネット金融の定義(伝統的金融機関とインターネット企業がインターネット技術と情報通信技術を利用して資金融通・支払・投資・情報仲介サービスを実現する新型の金融業務モデル)に始まり、既存金融機関(銀行・証券・保険・投資信託・信託・消費者金融)がインターネットを利用して高度化することやネット金融機関を展開することを奨励・支持している。一方、インターネット企業が支払・P2P・クラウドファンディング・消費者金融等の業務を行うことを奨励し、さらに、伝統的金融機関とインターネット企業間の相互協力も促している。

 また、優良なインターネット会社の国内上場による資金調達を奨励し、スタートアップのインターネット金融企業に対する優遇税制も考えている。

 さらに、信用インフラの構築も推進する。ビッグデータ、インターネットと情報セキュリティに関するインフラ構築や信用情報の共有プラットフォームの構築等である。加えて、インターネット企業には金融信用情報データベースへのアクセスや信用調査業務実施への道も開かれる。中国中小零細企業の大きな課題である信用情報・信用調査の不足や入手難の問題を、ビッグデータ、インターネット等の利用により解決しようとするものである。

各業務の監督管理責任を明確化

 インターネット金融は新しい業務であるため、これまで規制面での監督管理責任者が決まっていなかった。今回の「指導意見」は各業務の監督管理責任を明確にした。基本的には金融の機能に基づき分担されたとみられる(図表1)。

 注目されていたP2Pとクラウドファンディングを見ると、「指導意見」はP2Pを個人間貸借の仲介サービスを提供するプラットフォームと位置づけ、その「仲介」という性質を明確にした。そのため、預金を集めて貸出を行うような銀行業務に類似した行為や、保証といった信用強化サービス等の提供を禁じている。監督管理の権限は銀監会に委ねた。クラウドファンディングについては「インターネット上の公開かつ小額のエクィティファイナンス」と定義し、管理を証監会に任せた。

 指導意見の発表を受け、今後は各部門がより具体的な規則を制定する段階に入る。

最初に発表された保険の規則

 「指導意見」を受けた最初の規則として、「インターネット保険業務監督管理暫定弁法」が7月22日に保監会により発表された(図表2)。

 インターネット保険商品の種類は多いが、その本質は伝統的な商品と変わらない。そのため、「暫定弁法」には特に「インターネット専用商品」に関する要求はなく、従来のオフライン商品と同じ基準で管理している。また、オンライン販売の非対面性による情報隠蔽の可能性を考慮し、情報開示を強化した。

 政府は、インターネット金融を活用し中小零細企業や消費者金融を促進するという意図がある一方で、そのリスクに対しては規制を強化したいと考えている。インターネット金融はこれまで無法地帯で野放しにされていた故の活力があった。いかに革新の活力を損なわずにリスク管理を強化していくのかが今後の課題である。

1) P2P:person-to-personの略。個人間貸借にサービスを提供するプラットフォーム。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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