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スマートペイメントの成長が求めるソリューション

2015年9月号

ICT・メディア産業コンサルティング部 上級コンサルタント 上田恵陶奈

スマートペイメント市場は、電子マネーとクレジットカードを中心に順調に成長している。今後、一層の成長を果たすためには、O2Oと一体的なサービスへと進化することが必要と考えられ、そのインフラとなるソリューションが求められている。

成長を続けるスマートペイメント~対面と非対面で一貫して成長するクレジットカード

 スマートペイメント(クレジットカードや電子マネーなどの電子的な決済サービスの総称)(※1)は、2015年度の取扱高が58.2兆円になると予測され、2020年度には87.4兆円に達すると考えられる(図表)。スマートペイメントの高成長を支えるのは、主にクレジットカードと電子マネー(※2)である。

 クレジットカードは、スマートペイメントで最大の勢力であり、その長い歴史の中で持続的に成長してきた。2015年度に49.7兆円と推計される取扱高は、2020年には70.5兆円にまで増加する。

 クレジットカードは、対面決済(※3)では、一回の決済金額が低い場合でも利用されるようになってきており、利用できる店舗の拡大と相まって成長が続いている。また、非対面決済(※4)でもクレジットカードの利用が最も多く、年平均11.5%の割合で伸長するEC市場に支えられて拡大が続く。このように、対面決済と非対面決済のそれぞれで高い伸びが期待できることが、クレジットカードの拡大を支える要因である。

 他方で、利用できる店舗(加盟店)を今後も拡大するためには、小規模な事業者に合わせた廉価な加盟店端末の普及が欠かせないという課題がある。シンクライアント(※5)やスマートフォンを活用した多様な決済サービスが既に登場しているにも関わらず、日本国内ではゆるやかな普及にとどまっている点が懸念される。

グループ外とECへの浸透が課題の電子マネー

 若者から全世代へ、大都市から全国へと利用者を拡大してきた電子マネーは、2013年からの交通系ICカード相互利用を契機として、利用が再加速している。2015年度に4.9兆円と推計される取扱高は、2020年度に11.3兆円に達すると考えられる。クレジットカードに比べて取扱高が少ないように見えるものの、自動販売機など少額決済で多く利用されることから、利用件数が非常に多いという特徴がある。

 電子マネーの技術的な課題として、対面決済における主要な電子マネーはICチップを用いているためECなどの非対面決済で利用しにくい点がある。この解決には、価値をネット上に格納する「サーバー管理型」を活用する方向性が想定される。しかし、特定のオンラインサービスで利用できるようなサーバー管理型の電子マネーは多数登場しているものの、対面決済で利用できないため局所的な利用にとどまっている。

 ビジネスモデルの面では、対面決済における電子マネーは発行企業の販促手段として利用されることから、発行企業以外で利用した場合、ポイントや割引など消費者への特典が見劣りするという構造的な課題を抱えている。

アプリ化とクラウドサービス化

 スマートペイメントの今後の急成長は、核となるクレジットカードと電子マネーの両サービスが、現金社会からキャッシュレス社会へという転換を実現できるかにかかっている。そこでの最大の課題は対面決済における加盟店の順調な拡大である。非対面決済は、クレジットカードと電子マネーの綱引きは想定されても、スマートペイメントが利用されることに変わりはないためである。

 では、加盟店拡大に必要な要素は何であろうか。現在、国はキャッシュレスの普及促進を掲げており、国際ブランドのひとつVISAはセキュリティを確保するため接触ICと暗証番号を併用した端末の導入を加盟店に求めている。これらは店舗がクレジットカード端末を導入したり置き換えたりする追い風である。しかし、キャッシュレス社会を実現するためには、従来と同様のクレジット専用端末を設置・置換するだけでは足りない。加盟店のニーズに合ったサービスを提供できる革新的なソリューションとその端末を普及させることが必要なのである。

 まず、個人事業主など小規模事業主に対しては、クレジットカード専用端末の低価格化ではなく、スマートフォンやタブレットといった、加盟店が持つコモディティの上で動く決済アプリケーションの提供が求められよう。この場合、ネットを経由する際のセキュリティ確保など決済の安全性がよく論じられるが、競われるべきは他のアプリケーションとの連携である。レストランを例にとれば、海外では既に、各種予約サイトからの予約の集約と残席管理、予約状況に応じたテーブル配置の提示、スタッフのシフトの過不足判定、来店客の売上を記録に残し、優良客には予約時に使用したメールアドレスに再来店を促すお礼を送信する、といった店舗運営の一連の機能が、タブレット上の一体的なサービスとして提供されている。決済から周辺サービスに拡張することで、周辺サービスの対価(※6)や予約サイトとのレベニューシェアを獲得することができ、小規模店では高止まりしがちな決済手数料や端末代を低減させる効果が期待できる。

 一方、中堅以上の事業主に対しては、既存POS端末との親和性をもち、多様な決済やCRMサービスをワンストップで扱える端末が望ましい。この場合、利用可能な決済・マーケティング(ポイント・クーポンなど)のサービス数を最大化してワンストップ性の高さを競うこと、シェアを高めて規模の利益を追求し低価格でサービスを提供することが競われると想定される。なぜなら、O2O(※7)などで使用するビッグデータの内容や処理のアルゴリズムといった技術による差別化は難しいためである。

 加えて、中堅以上の加盟店が満足できるようなサービスを提供するためには、具体的なマーケティング施策の充実が重要であり、個別事業者にそれぞれ適した施策を提言できる人材(データサイエンティスト)やノウハウの蓄積こそがサービス内容の差別化になると考えられる。人材育成は時間を要し、ノウハウに試行錯誤はつきものである。早い着手が望まれる。

1) スマートペイメント:企業と個人間(BtoC)の商取引において、現金や銀行での手続きを必要としない電子的な決済手段。デビットカードは含むが、口座振替や銀行振込は含めない。
2) 電子マネー:非接触IC技術を利用するか、あるいは決済時にカード等の媒体が不要な前払式の決済サービス。交通系ICカードは、商品・サービスの購入など乗車運賃以外の決済を対象とする。
3) 対面決済:店頭での買いものなど、支払い相手と同じ場所で決済するもの。
4) 非対面決済:オンラインショッピングのように、支払い相手と異なる場所で直接対面せずに決済するもの。
5) シンクライアント:サーバーに機能を持たせることで価格を低く抑えた多機能店舗端末。
6) 加盟店が支払う場合と、広告料モデルで加盟店は無料の場合の両方がある。
7) Online to Offline

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

上田恵陶奈

上田恵陶奈Etona Ueda

ICT・メディア産業コンサルティング部
上級コンサルタント
専門:決済およびCRM

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