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夏祭りに釣り合う配慮

2015年8月号

山本由香理

8月は夏祭りのシーズンだ。夜店にはあらかじめ高額紙幣を崩してから出かける人もいるだろう。夜店のような形態の店は、通常の店より釣銭の準備が少ないため、こうした配慮も必要だ。通常の店では釣銭の必要準備額は実績を元に予測が行われるが、夜店ではそれも難しいだろう。では実績がない状態でこうした予測をするにはどうすればよいのだろうか。

 会費制パーティを開催するとしよう。参加人数は20人の小さな会で、会費は7000円とし、当日会場入口で回収する。さてこの場合、あらかじめ受付で釣銭として用意が必要な千円札は何枚位だろうか。

 7000円を支払うパターンを考えると①5千円札1枚と千円札2枚②千円札7枚③1万円札1枚の3通りだ。まず、半分の客はあらかじめ準備をして①のパターンで支払い、1割は気を利かせて②、残り4割は③で支払うと推定する。ここで単純に各パターンが支払われる確率を掛け、千円札の枚数の期待値を求めれば良いのかと言うと、そうではない。確かに20人が一度に来場すれば、この支払いパターンなら総計で千円札の枚数はプラスとなり、釣銭は切れない。だが実際には客はバラバラに来場する。到着が早い客が1万円で払う客ばかりであれば、釣銭は早々に切れてしまう。よってこの予測は「現在の千円札の枚数」から「もう1人客が来た時どういう状況に遷移するか」を全ケース網羅して考える必要がある。例えば最初に10枚千円札を用意した場合、1人目の客が来ると5割の確率で千円札は12枚になり、1割の確率で17枚になり、4割の確率で7枚になる。2人目が来ると更にその3パターンから分岐し…という計算を全ケースで行い、千円札の枚数が0を下回るケースへ推移する確率を求める、という手順である。この方法で計算すると最初に千円札を10枚用意した場合、釣銭が切れる可能性はおよそ19%、20枚用意した場合で3%程度となり、このあたりに合格ラインがありそうだ、という予測が立てられる。

 各人の支払いパターンは独立した事象であり、既に来た客の支払い方に関係なく現在の釣銭状況のみで、次の状況を確率的に予測できる。こうした性質はマルコフ性と呼ばれ、金融商品の値動きは過去の変動と無関係とするランダムウォーク理論が基礎とする性質だ。昨今ではこの理論は市場急変時には利用できないとされ、他の複雑な予測方法が用いられることも多いが、今回のように時間と共に推移する確率を追うのに便利な手法であることは確かである。

 近年、夏祭りの開催数は人口減少に伴い減る傾向にあるという。時間とともに物事が移ろいゆくのは致し方ないが、夏の風物詩、できる限り続いていって欲しいと祈るばかりである。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

山本由香理

山本由香理Yukari Yamamoto

資産運用サービス事業二部
システムコンサルタント
専門:資産運用ソリューション企画

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