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NRIニュース

2015年8月号

内藤琢磨, 榊原渉

ニュース1:コーポレートガバナンス・コードに関するアンケートを実施
ニュース2:新設住宅着工戸数、空き家数・空き家率を予測
ニュース3:新刊本のお知らせ

ニュース1 コーポレートガバナンス・コードに関するアンケートを実施

報告:経営コンサルティング部 GM 内藤 琢磨

 本年6月1日、東京証券取引所が企業統治の指針である「コーポレートガバナンス・コード(以下「コード」)」の適用を開始した。野村総合研究所(以下、NRI)では、東証一部上場企業の、コードに対する初期段階における動向を把握することを目的に、「コーポレートガバナンス・コード等に関するアンケート調査(※1)(以下「本調査」)」を実施した。具体的には、「株主総会開催後6カ月以内の開示を義務付けられた11項目に対する対応の方向性」や「コード適用を踏まえたコーポレートガバナンス改革の取組スタンス」などについて、質問をしている。

 主な調査結果は以下の通り。

監査等委員会設置会社への移行を検討している企業は全体の48.7%

 コーポレートガバナンスの基本形態といえる機関設計において、「直近の見直しを前提に検討している(または見直しを公表済み)」あるいは「中長期的には見直しを検討する可能性がある」と回答した企業が、合わせて56.4%と回答企業の過半数を占めた(図表1)。さらに、その中の86.5%が、見直し後の機関設計として「監査等委員会設置会社(※2)」を想定している(図表2)。これらから、回答企業の48.7%が、「監査等委員会設置会社への移行」を検討していることが明らかになった。本年5月1日に施行された会社法改正によって、新しい機関設計として認められた監査等委員会設置会社に、今後多くの企業が移行していく動きが確認できた。

コード適用を自社のガバナンス再考の機会にする企業は64.0%

 コードに対応するスタンスについては、「自社のガバナンスを再考する機会にする」との回答が64.0%(複数回答)にのぼり、選択肢の中でもっとも多い回答となった。それに続くのが、「世の中の動向を見極めて対応する(50.4%)」「中長期的な企業価値向上の在り方を再考する機会にする(33.5%)」となっており、積極的スタンスと消極的スタンスの回答が混在した結果となっている(図表3)。

 消極的スタンスの企業が多く存在する傾向は、社内におけるコードの検討体制にも表れており、「経営企画部、IR部署等が主体となり検討を実施している」が68.2%(複数回答)と最も多い一方、「トップイシューとして、経営陣が主体的に検討に参画している」企業は29.7%と、回答企業全体の3分の1以下という結果となっている(図表4)。

 コードの適用によって認識する自社の経営課題・取組内容としては、「自社としてのコーポレートガバナンスに関する基本的な考え方の再構築」をあげる企業が66.5%(複数回答)と最も多く、3社に2社はこれまで明確に定めてこなかったガバナンスのあり方について、検討をしている状況が確認できる(図表5)。

最も対応に苦慮しているコードは「政策保有株式に関する対応」

 対応に苦慮しているコードとして、「主要な政策保有株式」をあげる企業が28.0%(複数回答)と、最も高い結果となった。

 政策保有株式に関するコードは、株主総会後6カ月以内の開示を義務付けられた11項目(全体は73項目)の一つであり、9割以上の企業が開示に向けた準備を行っていると回答している(図表6)。多くの企業で持ち合い株式の解消を含め、今後の政策保有株式の保有目的について、明確な方針を打ち出す必要性に迫られている。

 なお、対応に苦慮しているコードとして次に続くものは「情報開示の充実」(27.1%)「取締役会全体の実効性の分析・評価」(25.4%)であった。

外国人持ち株比率の高い企業ほどガバナンス改革に前向き

 コード対応を含めたガバナンス改革については、企業属性や経営の内容とも関連性が認められる。例えば、東京証券取引所の指定開示項目に関して、外国人持ち株比率が30%以上の企業群では「株主総会後1カ月以内の開示」を予定している企業群が29.7%で、外国人持ち株比率30%未満の企業群と比較して、開示に対して積極的な姿勢が見られる(図表7)。

 同様に、外国人持ち株比率が30%以上の企業群では、「取締役会の実効性に関する分析・評価を現在行っている(13.5%)」「今後は分析・評価を実施して開示する予定である(83.8%)」と、外国人持ち株比率30%未満の企業と比較して、ガバナンス改革について前向きな姿勢を示している(図表8)。

 これらの結果から、コードの適用によって「攻めのガバナンス」に向けたコーポレートガバナンス改革に積極的に取り組む企業と、消極的な対応にとどまる企業とにスタンスが分かれていく可能性があることがうかがえる。

 NRIではコーポレートガバナンス改革の本格化を見据え、今後も、コーポレートガバナンスに関する調査を継続し、企業の「攻めのガバナンス」体制構築に向けた活動などを支援していきたいと考えている。

1) 調査方法:発送・回収とも郵送方式。対象企業数:東証一部上場企業1,769社。有効回答数:236社(回収率13.3%)。
2) 監査等委員会設置会社:3人以上の取締役で構成する「監査等委員会」が、取締役の業務執行が適正かどうかをチェックする経営形態の株式会社。2015年5月1日施行の改正会社法で導入された。

ニュース2 新設住宅着工戸数、空き家数・空き家率を予測

報告:経営革新コンサルティング部 GM 榊原 渉

 NRIでは、今後の新設住宅着工戸数とリフォーム市場規模、総住宅数・空き家数・空き家率の予測を行った。

新設住宅着工戸数は、消費増税(10%)前の駆け込み需要以降、徐々に減少

 消費税率が10%にアップすることが見込まれる直前の2016年度には、駆け込み需要の発生で新設住宅着工戸数が約92万戸となるものの、2020年度には約76万戸、2025年度には約64万戸、2030年度には約53万戸と徐々に減少していくことが見込まれる。2030年度の戸数は、バブル崩壊後のピークであった1996年度の約163万戸と比較すると、ほぼ1/3の水準に相当する。ただし、景気動向などによって、着工が前倒しされたり、先送りされたりすることにより、実際の着工戸数は変動する可能性はある。

リフォーム市場規模は、成り行きでの成長は望めず、6兆円台/年で推移

 新設住宅着工戸数の減少が見込まれる一方、リフォーム市場は「住宅の長寿命化」などに伴い、拡大することが期待される。しかし、このままの市場構造が続いた場合には、大きく市場拡大することは難しく、広義のリフォーム市場規模(※3)は2030年まで、年間6兆円台で横ばいに推移すると予測される。リフォーム市場の活性化に向けては、行政主導の政策的支援(リフォームローンを組成し易い環境の整備など)や、民間事業者の創意工夫(工事品質の向上や価格の透明性確保など)、および一般生活者への啓発を積極的に進めていくことが求められる。

新設住宅着工戸数の減少を上回る世帯数の減少が、空き家数・空き家率の上昇をもたらす

 前述のようにNRIの予測では、2030年度までに新設住宅着工戸数が53万戸に減少すると見込んでいる。しかしながら、新設住宅着工戸数の減少を上回るスピードで世帯数の減少が見込まれる(※4)ため、既存住宅の除却や、住宅用途以外への有効活用が進まなければ、2033年の総住宅数は約7,100万戸へと増大し、空き家数は約2,150万戸、空き家率は30.2%にいずれも上昇すると予測される。

 これら空き家数、空き家率の予測数字は、いずれも2013年の実績値(約820万戸、13.5%)の2倍以上となり、住環境の悪化や行政コストの増大など、さまざまな問題が生じる可能性がある。

 このような空き家数・空き家率の増大を抑制するためには、出生率向上をはじめとした人口減少への対策や、活用価値が低下した住宅の除却、中古住宅流通市場の整備、複数戸の住宅を1戸の住宅にリフォームやリノベーションする減築、コンパクトシティの実現などを積極的に進めていく必要がある。さらには、住宅の新築に対して一定の制限をかけるなど、人口減少時代にふさわしい住宅政策を検討していくことも求められる。

3) 狭義のリフォーム市場規模は、「住宅着工統計上『新設住宅』に計上される増築・改築工事」および「設備等の修繕維持費」。広義は、狭義に「エアコンや家具等のリフォームに関連する耐久消費財、インテリア商品等の購入費を含めた金額」を加えたもの。
4) 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、総世帯数は2020年の5,305万世帯をピークに、2025年には5,244万世帯に減り、その後も減少が見込まれている。

ニュース3 新刊本のお知らせ

 日経文庫から7月に、NRIの研究員が執筆した本が2冊出版されました。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

導入事例

内藤琢磨Takuma Naito

コーポレートイノベーションコンサルティング部
上級コンサルタント

導入事例

榊原渉Wataru Sakakibara

グローバルインフラコンサルティング部長

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