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マルチ化するポイントプログラム

2015年7月号

ICT・メディア産業コンサルティング部 上級コンサルタント 冨田勝己

自社で複数のポイントを提供するマルチポイント化には、ターゲット顧客をより広い範囲でカバーできる反面、その運用に伴うデメリットも存在している。今後は、それらを見据えたより効果的な運用をしていく必要がある。

大企業がマルチポイント化を相次いで発表

 本年5月に、2つの企業がポイントプログラムに関する比較的珍しい導入形態の採用を相次いで発表した。一方はローソンで、NTTドコモと提携し、従来から採用していたPontaポイントに加えて、dポイントも採用することが発表された。消費者は2015年12月から、ローソンでPontaポイントの代わりに、dポイント(旧ドコモポイント)を貯めて、使うことを選択できるようになる。もう一方は東京電力で、消費者は2016年1月から、電気契約などの各サービス利用に伴って、TポイントかPontaポイントのいずれかを貯められるようになる。

 このように、単一の企業が複数のポイントプログラムを導入するようになることを野村総合研究所では「マルチポイント化」と定義しているが、今まではレンタカー業界(トヨタレンタカー、オリックスレンタカー)や紳士服業界(AOKI、青山)など、一部の業界で起きている現象だった。今回の発表が実現に至ると、そこにコンビニエンスストアと電力会社の2業界が新たに加わることになる。

マルチポイント化の背景-捕捉可能な顧客の拡大-

 ではなぜ、各社はマルチポイント化へと移行するのか。その主な目的は、カバーできる顧客の範囲拡大にある。例えばAという会社が、自社独自のポイントのみを導入しているとしよう(図表参照)。また、A社がターゲットとしている消費者に関して、より大規模な会員規模を有しているX社やY社(いずれも、それぞれでポイントプログラムを導入)が存在しているとしよう。この場合、A社がX社のポイントも利用できる(消費者はA社の店舗でもX社のポイントが貯めて、使える)ようにすれば、より広範な消費者へのアプローチが可能になる。またX社のポイントだけではカバーできる消費者の範囲が充分でない場合には、Y社のポイントも利用できるようにすることで、その不足分をある程度補うことが可能になる。

 従来、他社ポイントの活用による顧客のカバー範囲の拡充は、ほとんどの企業において「ポイント交換」という方式で行われてきた。これは、まずは自社ポイントを顧客に付与し、顧客による申請を受けて、申請額に相当する額を他社ポイントへと交換するという方式である。導入企業にとっては、(購買の度に他社ポイントを付与する場合に比べて)申請があった場合のみ対応すればよく、自社にとっての負担がそれほど大きくない。その反面、申請するという手間が発生するため、申請を行う顧客が限られるなど、顧客満足度を高める効果も比較的限定されてしまう。

 これに対して、マルチポイント化による消費者への他社ポイントの直接付与は、リアル店舗での購買であればそのポイントカードの提示、インターネットでの購買であればそのポイントカード会員番号の初回登録のみで他社ポイントを獲得できるようになるため、これを利用し、ひいては満足度を高める顧客がより多くなる可能性が高い。マルチポイント化を行った前述の企業は、この効果を重視したものと考えられる。

マルチポイント化のデメリット

 ポイント交換と比べて効果がより高いと考えられるマルチポイント化だが、その一方でデメリットも複数存在する。その代表的なものが、ポイント原資の他社流出と、顧客情報システムの多重投資、顧客分析の煩雑化だ。

 自社独自ポイント単体であった場合に比べると、その原資を負担して顧客に付与した他社ポイントが、他社で使われてしまう(自社にとっては流出するように見えてしまう)というケースが発生する。これを他社流出と呼ぶが、他社で付与されたポイントが自社で使われることもあるため、実際にはその相殺結果と、他社でポイントが使われることによる具体的な損失額を推計することで、このデメリットの見極めを行う必要がある。

 次に顧客情報システムだが、他社ポイントの付与のために店頭のレジを含めた大規模な改修を必要とする場合、複数のポイントを導入することは多大な投資を伴うことになる。これについても、その必要経費を見極めておく必要がある。

 顧客分析については、マルチポイント化すると、顧客から得られる情報は、顧客が利用するポイントによって異なる部分がある。例えば前述した例で、X社やY社のポイントを利用している顧客については、それぞれのポイント利用に関するデータが提供されることがある。それらを自社の顧客情報に統合し、分析可能な状態で維持していこうとすると、かなりの手間を必要とする場合がある。従って、そこまでの人員やコストをかけて顧客分析を自社で行うか、あるいは断念するかといった判断が必要になる。

マルチポイント化の効果を高めるアドバンス型の運営スタイル

 マルチポイント化を志向する企業は2つに大別されると考えられる。一方は、マルチポイント化によって売上拡大を志向しつつも、顧客情報の活用は一定水準にとどめる運営スタイルで、多くのケースがこちらに該当するように見受けられる。

 もう一方は、マルチポイント化によって売上拡大を実現させつつ、顧客情報の高度な活用によって販促活動等の効率を高め、より効果的な運営を志向する、いわばアドバンス型の運営スタイルである。この実現のためには情報システムや分析スキルを有した人材、それを個々の施策へと反映させていくための業務の確立など、かなりのリソースを必要とするが、顧客理解の深化はより多くの売上、ひいては利益の獲得につながる可能性がある。

 獲得できるメリットを最大限活用していくためにも、マルチポイント化を行った企業は、アドバンス型の運営スタイルを採用していくことが望ましい。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

冨田勝己Katsumi Tomita

ICT・メディア産業コンサルティング部
上級コンサルタント
専門:マーケティング全般

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