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いよいよ始まる国内インフラ事業の投資機会

2015年7月号

経営革新コンサルティング部 上席研究員 持丸伸吾

世界的にオルタナティブ投資の一つとして拡大しているインフラ投資が、我が国でもいよいよ、入札による実際の投資実行目前となってきた。機関投資家にとって国内のインフラ事業という新たな投資機会が訪れている。

世界的に活発化している民間資金によるインフラ投資

 世界的にインフラビジネスへの民間資金による投資が活発化しており、その運用資産額は年々拡大を続けている。プレキン(Preqin)によると、インフラファンドの運用資産額は大きく拡大しており、2005年には300億ドル規模だった運用資産額が、いまや3500億ドル近くにまで拡大しており、直近の数年間でも10%を超える成長が継続している(図表)。インフラファンドによる年間のインフラ投資額も2014年に過去最大規模となった。投資額を過去から振り返ると、2006年前後に急拡大した後、リーマンショックにより減少したが、2010年以降徐々に回復傾向を見せ、2014年には過去最大であった2007年とほぼ同じ規模になった。2015年はさらに拡大が見込まれる。

今年度中に民営化空港の運営権者が決定される

 これまでそうしたインフラビジネスへの投資という面では出遅れてきた我が国でも、いよいよ具体的な案件が実現しようとしている。2011年のPFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)改正により導入された公共施設等運営権もいよいよ実施段階を迎え、2015年度中には日本で初めての本格的な「民営空港」として関西・伊丹空港と仙台空港の運営者が決定され、運営が開始される予定である。関西・伊丹空港に関連し、神戸空港も運営権の売却に向けた検討を行う予定であり、仮に関西・伊丹空港と一体的な運営権の導入が実現すれば、大経済圏の空港を3空港運営するという世界的にも稀なインフラビジネス機会が実現する。さらに福岡空港や高松空港など今後も継続的に空港の運営権の売却が実施される見込みである。

 実際に政府は、今後数年間で数兆円規模の市場を新たに創出していくこととなっており(※1)、そのために次々と施策が打たれている。具体的には、2013年に政府出資のインフラファンドであるPFI推進機構(民間資金等活用事業推進機構)が設立され、さらにコンセッション事業者(公共施設等運営権者)に公務員の派遣(いわゆる出向)を可能とする制度がPFI法の一部改正という形で現在第189回国会に提出されている(※2)。

 また、正式な制度ではないが外資企業の参入誘導策も進められている。関西・伊丹空港の公共施設等運営権の売却においては、その額が2兆円超と高額なこともあり、国内の企業は代表企業となってリスクをとることに対し消極的となっており、入札の成立が危惧されていた。しかし直近の報道(※3)によると、入札を実施する新関西国際空港会社と国土交通省から外資企業を筆頭格とするコンソーシアムも認めるとの方針が出されたようである。これまで我が国のインフラビジネスにおいては、安全保障上の懸念等から外資企業の大幅な参入については必ずしも歓迎しない見方もあった。しかし、今回外資企業が中心となって事業を行うことも認める方針であるということは、それだけインフラビジネスへの民間資金の導入を進めることへの強いメッセージを発している、と考えられる。

 このように、空港分野が大きく先行しているが、我が国におけるインフラビジネスへの民間資金導入はいよいよ具体化の段階に入ったと言える。

インフラファンド市場の登場と今後の期待

 このようなインフラビジネスの供給者である政府側の動きと並行して、投資家とインフラビジネスを結び付ける場として上場インフラファンド市場も登場した。

 2015年4月30日に東京証券取引所が「再生可能エネルギー発電設備等を投資対象とするインフラファンドが上場する「インフラファンド市場」を開設」とのプレスリリースを公表した。それに対応して金融庁は投資信託法施行令を改正して、投資法人・投資信託が主たる投資対象とすることができる資産(「特定資産」)に「再生可能エネルギー発電設備」及び「公共施設等運営権(コンセッション)」を追加した。もちろん、世界的に見てもインフラ投資の主たるプレイヤーは機関投資家であり、ほとんどのインフラファンドは私募形態で取引されることを踏まえれば、上場市場ができたからといって直ちに国内でインフラビジネスを対象とした投資機会が急速に拡大するわけではない。

 また、一口にインフラビジネスといっても空港のような事業投資に近い収入特性を持つものと、再生エネルギー発電施設のような極めて安定的な収入特性をもつものとでは大きな違いがある。そうした投資対象に応じたファンドマネージャーや管理体制も必要となるが、まだまだ日本国内にはこうした経験を持つ人材や組織は少ないのが現状である。そのため、最初は事業会社が中心となる形態でインフラビジネスへの投資が進んでいき、徐々に機関投資家や個人が広く投資を行うような形で拡大していくものと考えられる。

 2011年のPFI法改正以来少しずつではあるが着実に進んできたインフラビジネスへの民間資金導入の道筋は、実現が目前となった。また上場インフラファンド市場という、個人投資家も含めて多様な投資家が参加可能になる仕組みができることで、インフラビジネスへの民間資金導入の推進力となることが期待できる。2015年は、まさに我が国におけるインフラビジネス元年といってもよい節目の年となる。今後確実に拡大が見込まれる国内でのインフラビジネスへの投資機会について、アセットクラスの一つとして注目しておく必要があるだろう。

1) 政府は、内閣府民間資金等活用事業推進会議名で2013年6月6日に「PPP/PFI の抜本改革に向けたアクションプラン」を策定・公表している。その中で10年間(2013年から2022年)で12兆円規模のPPP/PFI事業を推進することを明記しており、公共施設等運営権(いわゆるコンセッション)事業については、2〜3兆円を実現するとしている。さらに2014年6月16日に「PPP/PFI の抜本改革に向けたアクションプランに係る集中強化期間の取り組み方針」を公表し、2016年までの3年間に上記の公共施設等運営権事業(2〜3兆円)を推進し、空港6件、水道6件、下水道6件、道路1件との数値目標を公表して推進している。
2) 公共施設等運営事業は、これまで国や地方公共団体等が実施していた事業を民間事業者が実施することになるが、特に空港や水道等インフラ事業においては事業運営の専門的ノウハウは公務員が有している。そのため、コンセッション事業者への事業の引き継ぎをスムーズに実現できるよう、事業初期段階において公務員を事業者に派遣(出向)することを可能にするための法改正が提案されている。
3) 2015年5月1日付産経新聞。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

持丸 伸吾

持丸伸吾Shingo Mochimaru

グローバルインフラコンサルティング部
上席研究員
専門:インフラ事業・民営化等

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注目ワード : インフラファンド