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重要度が高まる外国籍投信ルックスルー管理の課題とその解決に向けて

2015年7月号

資産運用サービス事業三部 システムコンサルタント 蒲谷俊介

外国籍投信のルックスルー管理が信用リスク規制への対応や、受託者責任を果たすために必須となりつつある。その実現には、データ変換や銘柄属性管理等、多くの課題があるが、関係者が一体となって解決を目指すことが望まれる。解決の先には、データの様々な活用も期待できる。

外国籍投信管理の現状

 日本の運用会社にとって外国籍投信(以下、外投)は、ファンドオブファンズ(FoF)型の投信ファンドや投資一任の顧客口座で組み入れることも多い重要な投資対象資産である。FoF型投信で投資されている外投だけでも、市場規模は20兆円を超えると推計される。その一方で外投の管理状況をみると、NAV、分配金、設定解約情報についてのみ、外投の運用会社やファンドアドミ(※1)から取得するというのが一般的で、ファンドの中身の銘柄レベルの情報については、運用会社の外部委託運用担当者やレポート作成担当者が各々必要に応じて、ExcelやPDFフォーマットで受領する程度であった。しかし、信用リスク集中規制対応や銀行のバーゼル規制対応を起因とし、そのルックスルーのニーズが急速に高まっており、より高度なデータ管理が必要になっている。

 信用リスク集中規制では、発行体ごとのエクスポージャーを一定水準以下に保つことが求められる。FoFについては投資ガイドラインを設けて管理する方法も認められる(※2)が、弊社のヒアリングによると、外投運用会社やファンドアドミからの投資ガイドライン順守を報告するレポートだけでは管理不十分と考える声が増えてきている。また運用会社が運用を外部委託する場合、受託者責任としてファンドの中身の管理に対して求められる水準が高まっており、ルックスルーデータをある一定頻度で取得し、モニタリングすることが必要となってきている。

 近年は銀行によるファンド投資も活発化しており、銀行がバーゼル規制対応のため投資ファンドのデータ管理を強化する中で、運用会社に正確なルックスルーデータの提供を求め始めていることも、運用会社のルックスルーニーズが高まっている要因の1つである(※3)。

ルックスルー管理の実現に向けた多くの課題

 しかしながら、外投ルックスルー管理を実現するためには、様々な課題を解決する必要がある。

外投データ取得とフォーマット変換

 外投データの取得は、現在では多くても月次程度が一般的であり、それをより頻繁に、かつ望むフォーマットで求めることは難しい。最大の課題は、取引や残高などのデータ受渡用標準フォーマットがグローバルに存在しないことである。そのため現状では、各運用会社が外投運用会社、ファンドアドミから個別のフォーマットでデータを取得しなければならない。

銘柄属性の一元管理

 外投データは、運用会社やファンドアドミごとに管理する銘柄属性が異なるため、ルックスルーデータを単純に取得するだけではそのデータは利用できない。例えば、同一銘柄でも運用会社やアドミによって、「野村総合研究所」「NRI」「Nomura Research」などの異なる名称で管理されているケースが散見される。同一銘柄を認識できなければ、銘柄別保有比率などの必要な情報を算出することもできない。

課題解決に向けた提言

ルックスルーデータの取得についての標準化の実現

 外投ルックスルーデータの取得については、日本のプレイヤーが個々に動くのではなく、業界全体でデータ提供を求めることが必要である。ルックスルーデータを求めているのは運用会社に限らない。投資家である銀行も同様であり、またファンドアドミにとってもルックスルーデータの提供は重要な顧客サービスとなりつつある。ルックスルーデータのスムースな受け渡しは、業界全体で一致した目的に成り得るはずだ。またデータの受渡しフォーマットについても、同様に業界として標準化に取り組むべきである。標準フォーマットの利用により、各社がバラバラにフォーマット変換することに比べ、業界全体で大幅なコスト削減が期待できるだろう。

ルックスルー管理業務の構築

 運用会社は、取得したルックスルーデータについて、同一銘柄は同一銘柄として一元管理する必要があり、その業務構築は必須だろう。ISINやCUSIP等の標準コードを利用した銘柄マッチングによる管理が一般的であるが、要件によっては、銘柄名称などを利用した銘柄マッチングや、また手作業による管理も必要になるだろう。実際、過去にルックスルー管理を目指した運用会社の中には、銘柄属性管理の実現がかなわず、それがルックスルー管理実現のハードルとなってしまった事例も存在する。なお外投では、日本であまり対象とならないデリバティブに投資しているケースもあるため、銘柄属性などについて、日本で標準的な管理項目に追加をしてデータ管理することも必要になると考えられる。

 そして管理業務のシステム化に向けては、全社単位の業務標準化が必要になるだろう。現在は、仮にルックスルーデータを管理していても、外部委託運用部やディスクロージャー部など各部が独自にデータを取得し利用しているケースが一般的である(※4)。システム化を軸に各部署のルックスルー管理業務を標準化することで、業務効率化や、属人化の解消が実現できるだろう。

課題解決の先に求められる差別化

 外投ルックスルー管理を実現した暁には、そのデータを様々に活用できるだろう。

  • 商品組成の観点:外投でのみ積極的にアクセスできる資産もあり、運用会社にとって外投は戦略商品の1つである。一方、外投のデータ管理などが、ビジネス拡大のボトルネックとなっていることは多くの運用会社に共通しており、その解消を期待する声は非常に大きい。
  • リスク管理の観点:例えば、ルックスルーを行って外投に対してもファンドのストレステストを実施するなど、内部リスク管理が強化できる。外投管理の強化は、外投運用会社に対するモニタリング強化にもつながるだろう。
  • レポートの観点:ルックスルー管理の実現により、顧客への説明をより充実させることができる。月報等で外投が保有する銘柄情報をより具体的に開示したり、投資家とのコミュニケーションを強化できるだろう。

 国内の投信市場は力強く成長し外投は依然その中で大きな割合を占めている。規制対応、受託者責任を果たすためルックスルー管理は必須になりつつあるが、そのデータは様々に活用することが期待できる。今こそ業界をあげてルックスルー管理に取り組む時期に差し掛かっていると言えよう。

1) ファンドアドミニストレーターの略称。ファンドのNAV計算業務などを担当している。ファンドの資産管理を行うカストディアンが兼ねることも多い。
2) 投信法改正により、2014年12月より信用リスク集中規制が施行されている。株式、債券、デリバティブといった1資産内、また資産総計のそれぞれで1つの発行体へのエクスポージャーを一定量以下にすることが求められている。デリバティブについては、原資産やカウンターパーティーの管理が求められる。なお、FoFについても原則ルックスルーが求められているが、投資信託協会による「信用リスク集中回避のための投資制限に係るガイドライン」の「3」に記述されるように、外投の投資ガイドラインであらかじめ運用を縛って管理する方法も認められている。その場合、定期的に、外部委託先より投資ガイドライン順守を報告するレポートを受領することで、モニタリングの補完とするケースが多い。
3) バーゼル規制では、銀行が保有するファンドについてルックスルーは必須化されていないが、ファンドに関しての自己資本積み増しを回避するため、多くの銀行がファンド運用会社に対しルックスルー情報の提示を求め始めている。なお2017年1月より、銀行のファンド向けエクイティ出資についてのルックスルーの原則化が検討されているが、その場合、運用会社は銀行向けのファンドについて、等しくルックスルーデータを提供する必要がある。
4) 外部委託管理担当者は、運用のガイドラインチェックなど、運用管理のためにルックスルーデータを必要としている。またリスク管理担当者は、各種リスクシナリオテストなどの内部リスク管理のために、またディスクロージャー担当者は、月報など各種レポート作成のためにルックスルーデータを必要としている。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

蒲谷俊介

蒲谷俊介Shunsuke Kabaya

資産運用グローバル事業部
主任システムコンサルタント
専門:資産運用関連のソリューション企画

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