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米国におけるデータ管理高度化に向けた会議への参加報告

2015年6月号

金融グローバル推進部 片岡佳子

野村総合研究所(NRI)は、2015年4月9日、データ管理態勢の高度化に向けた非営利団体であるEDMカウンシル(Enterprise Data Management Council)が、メンバー向けにニューヨークで開催した春期定期報告会にスポンサーとして参加した。

 近年のデータ管理に対する意識の高まりを反映し、当日は、JPMorganやCiti、HSBCといった米国大手金融機関のCDO(チーフ・データ・オフィサー)、データ管理部門の担当者、当局のデータ管理担当者など、70名以上が参加した。報告会はパネルディスカッション形式で行われ、パネル以外の参加者も交えながら、データ管理領域における主要な関心事項や最新の取り組みなどのテーマについて活発な意見交換が行われた。

 ここでは、主催者であるEDMカウンシルの主な活動を簡単に紹介した上で、当日の報告会での議論を報告する。

主催者であるEDMカウンシルについて

 EDMカウンシルは、金融機関のデータ管理担当者や金融機関向けのデータ管理ソリューションベンダーらによって、2005年5月にニューヨークで設立された。設立以来、金融機関におけるデータ管理態勢の高度化に向けて、エンタープライズ・データ・マネジメント(※1)態勢の提唱や、データ管理における業界標準化モデルの策定などに取り組んでいる。

 2008年の金融危機の際に、多くの銀行においてリスク・エクスポージャを包括的な形で正確かつ迅速に集計できないことが露呈し、金融機関におけるデータ管理の重要性に対する認識が深まり、徐々にメンバーが拡大。現在は、Citi、Wells Fargo、JP Morgan、GoldmanSachsなど米国の主要金融機関のみならず、規制当局や欧州の金融機関、データ管理関連のサービスプロバイダーなどメンバー数は約150社に上っている。

 足元では、2013年1月にバーゼル銀行監督委員会が公表した「実効的なリスクデータ集計とリスク報告に関する諸原則」(以下「BCBS239」。詳細は、本号の「データ管理態勢の高度化に向け重要性を増すチーフ・データ・オフィサー」参照)への対応の必要性から、G-SIBに選定されている大手銀行を中心に、EDMカウンシルが提唱するデータ管理態勢のアセスメントモデル(Data Management Capability Assessment Model、以下「DCAM」)が関心を集めている。

 DCAMは、データ管理態勢の高度化に必要な対応課題や留意点を、実務的な観点に基づいて抽出し、その位置付けを整理するとともに、チェックリスト化したものである。カウンシルメンバーの過去の経験から、データ管理に向けた取り組みには組織横断的な課題や目標の共有、役割と責任の明確化などが不可欠であるという問題意識に基づいており、それらを実現しながら、高度化を達成するためのガイドラインとなっている。EDMカウンシルでは、CitiやBank of AmericaのCDOを歴任したJohn Bottega氏がシニアコンサルタントを、当局向かいのコンサルティング実績等を有するMichael Atkin氏がManaging Directorを務めている。また、HSBCのCDOであるPeter Serenita氏、JPMorganのExecutive Director(CIB部門・データ管理担当)のLudwig D’Angelo氏といった、先進的な取り組みを行ってきた金融機関の経営幹部レベル経験者がボードメンバーに含まれており、その経験や知見がDCAMを始めとするカウンシルの活動に反映されている。

本報告会における主な議論

 こうした中開催された今回のメンバー向け定期報告会では、①金融機関のデータ管理における最近の動向、②DCAMの現状、③データの概念モデル策定の取り組み、が主に議論された。

 まず、最近の動向として、バーゼル規制対応などを契機に、データ管理全般に対する取り組みが活発化しているとの声が聞かれた。例として75%のメンバー金融機関が、過去2年の間にデータ管理担当者の数を増やしたとのデータが示された。また、データ管理部署と、リスク部署、テクノロジー部署間における、役割や権限分担の明確化が進んでいるとの声が聞かれた。例えば、以前は、テクノロジー部署がデータ管理の役割を兼務する例もみられたが、足元では、テクノロジー部門の役割はデータ管理を実現するためのインフラストラクチャーの開発と管理という位置づけがはっきりしている。一方、データ管理部署では、データ処理のプロセス管理や、データ品質へのニーズの適正な把握といった役割が更に重要になり、近年では実務経験を持つオペレーション部門やビジネス部門の経験者などが、データ管理担当者として任命される傾向が強まっているようだ。

 こうした取り組みを評価する一方で、幾つかの課題も指摘された。そのひとつが、データ管理の対象が狭くなりがちなことである。例えばBCBS239対応がデータ管理上の達成目標に設定された場合、多くの金融機関がリスクデータのみを管理の対象とするが、態勢の強化という観点からは、周辺のデータの整備も同様に重要であるという指摘があった。このほか、部門横断的にデータを統合する動きはまだ限定的であるなど、データ管理に全社的に取り組む際の課題を指摘する声が聞かれた。

 次に議論されたDCAMについては、まず、2015年2月にリリースされた最新版に至る経緯が紹介された。2005年から開発が開始されたDCAMは、この10年をかけて、各金融機関の経験に基づくベスト・プラクティスが反映されるなどの見直しが重ねられてきた。今回リリースされた最新版は、BCBS239に完全に準拠したものになっている。これは最近の金融機関におけるニーズの高まりを受けたもので、対応策を示すガイドラインとして注目を集めている。足元では、幾つかの金融機関が、最新版を用いたアセスメントの実施に向けて準備を進めている。EDMカウンシルとしては、今後アセスメント結果をまとめたベンチマークを作成する予定となっている。

 最後に、金融機関におけるデータモデルの標準化を目指す、Financial Industry Business Ontology(FIBO)と呼ばれる概念モデル開発の取り組みが紹介された。これは、データのタクソノミーを定義すると共にその相互関係性をモデル化(オントロジー化)することにより、データの意味だけでなくビジネス上の位置付けや働きなどの概念を、組織内でより正確に共有しようとする試みである。この取り組みは、十分に業界に普及しているとは言い難いものの、State Streetなど一部の銀行において、データ活用の観点から、モデルの試験的な導入が開始されているようだ。

 NRIでは、昨年度より日本の非金融機関としては初めてEDMカウンシルにメンバー登録し、データ管理高度化に向けた情報収集とEDMカウンシルとの連携強化を進めている。今回のイベントは、その取り組みの一環であり、今後もこうした連携を強化しながら、本邦金融機関に対する情報発信と支援を継続する予定である。

1) 組織内の全てまたは一部のデータを標準化し、部門横断的に一元管理するデータ管理手法のこと。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

片岡佳子

片岡佳子Keiko Kataoka

金融デジタル企画一部
上級研究員
専門:金融機関のデジタル化

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