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急いでいる人のための車両選択法

2015年4月号

関戸秀樹

あなたは今、客先に向かって急いでいる最中である。そこへ行くためには複数の列車を乗り継いでいかなければならないが、あいにく列車の乗り換え時間が短いため、乗り継ぎ駅での階段からできるだけ近い車両に乗車する必要がある。しかし、その駅のどの位置に階段があるかは知らないし、それをわざわざ調べるのは面倒である。そんな時、あなたはどの車両に乗車すべきだろうか?

 この問題を数理計画問題として考えてみよう。目的関数は乗り継ぎ駅における降車位置から階段の位置までの距離の期待値E(D)を最小化すること、操作変数は降車位置である。また制約条件は、①階段位置の出現分布は一様分布に従う、②列車の長さとホームの長さは等しい、とする。

 この問題の最適解は「真ん中の車両に乗る」こととなる。この場合、期待距離E(D)=「ホーム長の1/4」である。これは、階段がホームの真ん中にある場合(最良ケース)では距離D=0となり、階段がホームの端にある場合(最悪ケース)には距離D=「ホーム長の1/2」となることを踏まえれば、直感的に理解できるだろう。ちなみに、最悪の選択は「先頭ないし最後尾の車両に乗る」ことで、この場合は期待距離E(D)=「ホーム長の1/2」となってしまう。このとき、最適解との期待距離の差はホーム長の1/4であり、仮にホーム長が200m、歩行速度を時速3kmと仮定すると、1分の差が出る。

 ここで視点を変えて、ホームの階段を作る設計者側の立場で考えてみるとどうなるか。この場合、目的関数は先ほどと同じくE(D)だが、操作変数は階段の位置となる。また、乗客の乗車位置は一様分布に従うとする。

 この問題の最適解は階段の個数によって変わってくる。1つの場合はホームの真ん中、2つの場合はそれぞれホーム長の両端から1/4の位置、3つの場合はホーム長の両端から1/6の位置および真ん中となる。階段が複数ある場合に最適解がホーム長の均等割りにならず、ホームの端に寄る傾向があるのは、ホーム中心付近で降車した客は2つの階段のうち近いほうを選べるのに対し、ホーム端近傍で降車した客はただ1つの階段しか選べないからである。

 ここで、最初の問題に対するより現実的な回答を試みよう。階段は2つという駅が多いと思われることから、「真ん中の車両から1~2車両分、端にずれた位置」に乗車するのが正解ということになりそうだ。ただし、混雑した電車では、階段から近い車両をうまく選んだとしても車両の奥に押し込まれてしまい、結局それほど早くは乗り換えられないことが多いのだが。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

導入事例

関戸秀樹Hideki Sekito

金融ITイノベーション事業本部 ビジネスIT推進部
主任

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