1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. 金融インフラ
  6. 国際競争力強化に向けた国債決済期間T+1化開始

国際競争力強化に向けた国債決済期間T+1化開始

2015年3月号

グローバルソリューション事業部 営業担当課長 木綿芳行

国債決済期間T+1化実施目標について、市場参加者、市場インフラで合意形成が間もなくなされようとしている。リーマンショックによる決済リスク削減だけでなく、国際的な市場間競争力の強化も視野に、市場参加者、市場インフラともに対応を進めていく必要がある。

グランドデザイン公表

 2014年11月26日に、国債の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ(以下、WG)から「国債取引の決済期間の短縮(T+1)化に向けたグランドデザイン」(以下、グランドデザイン)が公表された。これを受けて、WG中心であったT+1化の議論が、市場参加者全体にも広がりつつある。

 国債T+1化は、2008年9月のリーマン・ブラザーズ証券破綻を機に、日本の国債決済リスク削減に向け推進された取り組みである。リーマン証券の破綻により、7兆円のデフォルト(債務不履行)が発生、フェイル(受け渡しの遅延)の連鎖も累計6兆円規模に上ったという(※1)。金融庁はこの事態を受け、決済リスク削減策の一つとして国債の決済期間の短縮を求めた。そこで日本証券業協会により2009年9月にWGが設置されたのである。

 WGは、2011年11月に「国債の決済期間の短縮化に関するワーキング・グループ最終報告書」を策定し、同報告書で示された検討方針・対応案に従って2012年4月にアウトライト取引及びSCレポ(※2)取引のT+2化(GCレポ(※3)のT+1化)が実現された。また、「2017年以降速やかに」アウトライト取引及びSCレポ取引のT+1化(GCレポのT+0化)を実現すべく、幅広い市場参加者が対応可能な方法やインフラ整備の検討を進めてきた。そうした中、市場参加者のT+1化全体像の理解を促進するとともに、T+1化への対応について、参加者がその負担感や個別対応方針等を早めに把握・検討できるよう、WGでグランドデザインのとりまとめを行い、公表した。

T+1化対応全体像

 T+1化に向けて、グランドデザインでは、大きく3つの柱を掲げている。

①日本国債のグローバル化を踏まえた新現先取引の導入

 T+1化の意義・目的の一つは国際的な市場間競争力の維持・強化であり、それを踏まえ、レポ取引の取引形態として現在主流となっている現金担保付債券貸借取引に代わり、海外及びクロスボーダーのレポ契約で採用されている、条件付売買の構成を採る新現先取引の普及を推進する。

②アウトライト取引及びSCレポ取引のT+1化

 各市場参加者が約定日当日中に処理(決済を除く)を完了できるよう「市場共通のタイム・スケジュール」を策定、それを踏まえ約定から決済までの「データ授受の標準化・電子化」を促進する。また取引件数が少ない先も含め市場参加者の更なるSTP化(※4)を図るため「市場共通インフラ」を整備し利用を促進する。

③GCレポ取引のT+0化

 GCレポ取引のポスト・トレード処理時間短縮策として、英米同様の「銘柄後決め方式」によるGCレポ(T+0)取引を導入する。銘柄後決め方式とは、約定時点では資金の受渡金額とレポ対象国債の種類(バスケット)のみを決めておき、その後決済直前に、他の国債取引に関する決済等の結果を踏まえて、在庫国債銘柄の割当てを行い決済するものである。銘柄後決め方式における参加者の事務負担を軽減するため、既存の市場インフラを活用した「銘柄後決めGCレポ清算・銘柄割当システム」の整備を行う。

市場参加者のT+1化対応

 上記3つの柱を業務面で実現するため、市場参加者においては、大きく4つのシステム対応が求められる。

①リアルタイム処理の実現

 T+2である現在の業務はバッチ処理システムでも対応できるが、1営業日短縮されるT+1化(GCレポのT+0)では、ポスト・トレードから決済に至るまでリアルタイム処理化が必要となる。金融機関・業態によって状況はさまざまに異なるが、いわゆる勘定系、基幹系システムにはバッチ処理がいまも多く残されており、リアルタイム処理化に向けた課題は大きい。

②システム自動化の推進

 約定、照合、清算、決済業務という一連の業務オペレーションにおいて、例外処理を可能な限り極小化する必要がある。T+2化では最低限のSTP化でオペレーションを実現できたが、T+1化(GCレポのT+0)では、業態や取引量等によって対応は異なるものの、フロント照合やバック部門における約定内容連絡・照合の一層のSTP化、ネッティング処理の自動化、等にむけて社内システムの見直しが求められる。

③モニタリング機能の充実

 自動化を進める中で、トラブルの発見や対処を迅速に行うことが重要となる。具体的には、照合・決済・ポジション管理等の各業務プロセスにおいて、ステータス等のモニタリング機能を強化する必要がある。また、どの業務プロセスで例外処理が発生しているか一元管理する機能も必要となる。

④着実な新制度への対応

 銘柄後決め方式によるGCレポ取引(T+0)、新現先取引等の新しい仕組み・機能への対応や、新制度への移行機能開発等が必要となる。

 上述したように、国債のT+1化においては、グローバルスタンダードである新現先導入など、国際的な市場競争力の強化を意義・目的とした取り組みが含まれている。WGでは、2015年春を目途に、T+1実施目標時期について市場関係者の合意形成を目指すとしている。移行に伴う慣行や業務の変化は小さくないが、市場参加者も広い視野で証券決済の高度化を図っていく必要があるのではないだろうか。

1) 日本銀行決済機構局による。
2) SC(Special Collateral)レポ取引とは、銘柄を特定する債券貸借取引をいい、資金取引の要素は薄い。
3) GC(General Collateral)レポ取引は、取引対象の債券が特定の銘柄である必要がなく、途中で対象債券を差替えることができる資金貸借的な性格をもつ取引。
4) STP(Straight Through Processing)とは、証券取引の約定から決済に至る一連の作業を電子的に、一度入力されたデータについて人手による再入力などを経ずに行うこと。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

木綿芳行

木綿芳行Yoshiyuki Kiwata

証券ホールセール事業一部
部長
専門:証券決済サービス