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プロ向けファンドに関する規制の見直し

2015年3月号

未来創発センター 主席研究員 大崎貞和

1名以上の適格機関投資家と49名以内のそれ以外の者を相手方として投資ファンドの運用や自己私募を行うプロ向けファンド業務は、金融商品取引業者としての登録が不要とされる。しかし、近年濫用的な事例が問題視され、規制の見直しが行われることになった。

プロ向けファンドの背景と課題

 このほど金融庁の諮問機関である金融審議会のワーキング・グループが、投資運用に関する適格機関投資家等特例業務(いわゆる「プロ向けファンド」業務)の規制見直しに向けた提言を取りまとめた。今後、通常国会で金融商品取引法(以下「金商法」という)が改正され、2016年にも新制度が施行される見通しである。

 金商法の下では、他人から資金を集めて有価証券等への投資を行うファンドの運用は投資運用業、ファンドの販売は第二種金融商品取引業として規制され、原則として金融庁の登録を受けることが求められる。但し、適格機関投資家及び49名以内のそれ以外の者のみを出資者としてファンドを運用し、自ら販売する場合には、登録は不要とされ、届出のみで足りる(金商法63条)。これがプロ向けファンド制度である。

 プロ向けファンド業務を行うとして届け出た者(以下「届出者」という)は、登録金融商品取引業者ではないので、金融庁による監督を日常的に受けることはない。また、虚偽告知の禁止と損失補填の禁止を除いては、金商法の定める行為規制の対象とはならない。

 金商法制定の一つの狙いは、それまでの縦割り型の法制を改め、幅広い投資商品の運用や販売に横断的・包括的な規制を課すことであった。しかし、一律に登録規制を課すことによる多様なファンドへの萎縮効果が懸念されたことや、もっぱら適格機関投資家向けに業務を行うのであれば、一般投資家の保護を念頭に置いた規制・監督は不要と考えられたことで、プロ向けファンドという例外的な制度が設けられたのである。

 ところが、近年、この制度を利用しながら、適格機関投資家を1名だけ、いわばダミーのように出資者とした上で、高齢者など一般投資家に対して詐欺的な投資勧誘を行う例が増加し、社会問題化している。

金融庁の対応

 そこで金融庁は、2014年5月、証券取引等監視委員会及び消費者委員会による建議・提言を受け、プロ向けファンドに出資できる適格機関投資家以外の投資家を上場会社や資本金5千万円超の株式会社、年金基金、投資性金融資産1億円以上を保有する富裕層個人投資家、ファンド運営業者の役職員などに限定する政令・内閣府令の改正案を発表し、意見募集を始めた。

 この改正案に対しては、投資家の被害救済にあたる弁護士や消費者団体等から本来プロ投資家だけに限定されるべき出資者の範囲が広すぎるとの批判が寄せられる一方、主としてベンチャーキャピタル関係者からは、出資者の範囲が狭くなりすぎ、資金調達に支障を来しかねないという真っ向から対立する意見が寄せられた。

 そこで金融庁は、改めて幅広い関係者・有識者から意見を聴いて規制見直しの内容を練り直すこととし、2014年10月、金融審議会に「投資運用等に関するワーキング・グループ」を設置したのである。

ワーキング・グループの提言内容

 こうした経緯を経て取りまとめられたワーキング・グループ提言の概要は、次のようなものである。

 第一に、届出者については、拒否要件や欠格事由など一定の人的要件を設けるとともに、届出書の記載事項及び添付書類の拡充を図る。

 第二に、プロ向けファンドの出資者となる適格機関投資家について、運用資産残高5億円以上といった資産要件を設ける。

 第三に、届出者に対して、虚偽告知と損失補填の禁止に加えて、忠実義務、善管注意義務、分別管理義務、適合性原則、契約締結前・締結時交付書面の交付義務、運用報告書の交付義務といった行為規制を課す。

 第四に、届出者が問題を起こした場合、当局が業務の改善や停止・廃止をさせることができるようにするとともに、届出義務違反等に係る罰則を強化する。証券取引等監視委員会等のエンフォースメントの体制についても人員の強化等を図る。

 第五に、プロ向けファンドへの出資者の範囲について、2014年5月の改正案に示された者のほか、純資産5千万円超の株式会社、届出者の親会社等、運用委託先など届出者と密接に関連を有する者や国・地方自治体を新たに含める。また、ベンチャー・ファンドについては、以上の者に加えて、上場会社等の役員・元役員、経営革新等支援機関として認定されている公認会計士、弁護士等など、一定レベル以上の投資判断能力を有する者による出資も可能とする。

 以上の提言は、プロ向けファンド制度を悪用する詐欺的勧誘の被害を防止すると同時に、正当なベンチャー・ファンド等によるリスクマネー供給を妨げないという観点から取りまとめられたものである。制度改正が早期に実現し、所期の効果を発揮するよう期待したい。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

大崎貞和

大崎貞和Sadakazu Osaki

未来創発センター
フェロー
専門:証券市場論

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